本編
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「後藤さん!」
「うおっ!?お前…なんちゅー格好」
「話は後!早く撤退して!!」
「撤退ってお前」
紗雪は霧の中で後藤と再会していた。以前同じ部署に所属していた男は少し老けたように見えた。
「歳取りましたね」
「紫が全員いなくなったらそりゃ老けるわ!」
どうやら随分苦労をかけたようである。紗雪は後藤の来た方向、少し西向きに偏りながら移動を始めた。
「常時無線を解放しておいてください。どこかで回復するはずです。霧が晴れたら10時の方向へ。岩陰に緊急用のボートがあります。まだあればですけど」
「わかった…しかしお前、今まで何してたんだ?それにその格好」
「話せば長すぎて…っ!」
紗雪は立ち止まると日輪刀を抜いた。ギョッとする後藤を背に庇う。霧の一部が凝って鬼が現れた。
「!!」
後藤が銃を構える。紗雪はそれを掴んで下げた。後藤が非難の声を上げる。
「おい!」
「こいつは私の持ってる刀でしか倒せないんです。援護されると返ってやりずらいので動かないで下さい」
「まじかよ…」
後藤は唖然として呟くと銃を下ろした。鬼が耳障りな笑い声を上げる。
「きっひゃっひゃ!向こうから来た奴が鬼狩りになるとはなぁ!!お前アレだな?前に別の鬼狩りに助けられた俺の喰い残しだな?」
「喰い残しをもう一度喰う気か?意地汚い奴だ」
「ぬかせぇ!!」
鬼の姿が霧に消えたと思った瞬間、紗雪は後藤の横にいる鬼の腕を斬り落としていた。霧に消える鬼の首を目掛け刀を振るうが手応えがない。
(実体を斬らなければ駄目か。だが気配は掴んだ。再生速度も速く無い)
「後藤さんこっちへ」
向こうの時代へ後藤をとにかく戻さなければ。紗雪は後藤の腕を掴むと周囲を警戒しながら歩き出した。
「何だあいつ!?消えたぞ!」
「そういう奴です。アイツはどういう訳か自分の仲間を増やす。紫は私以外は皆んなそうなりました」
霧から伸びてくる腕や足を斬り落としながら進む。頭上に現れた鬼に紗雪は後藤の襟首を掴むと大きく飛び退った。
「!」
「?」
鬼が一瞬足元を気にして一歩下がった。紗雪が反射的にその位置の地面を斬りつける。地面の切り込みを境に鬼は追って来るのをやめた。
(そうか…ここが……)
向こうとこちらの境界。紗雪は刀を下ろすと掴んでいた後藤の襟首を離した。後藤が慌てて銃を構える。
「どうした紗雪!」
後藤の問い掛けは紗雪の耳に入っていなかった。このまま撤退すれば紗雪は向こうに戻れる。どういう理屈なのか境界を跨げない鬼を斬ることは出来ないが、煉獄が必ず斬ってくれる。
(あぁ、でも…だけど)
紗雪はギュッと自分の胸元を掴んだ。煉獄に灯された炎が戻りたいと叫ぶ。
ーー煉獄の元に戻りたいーー
(そりゃあ突き詰めて考えたりしない訳だ。現代を向こう呼ばわりだもの)
いつからか紗雪が帰りたい場所は一つだった。煉獄のいる所が自分の居場所なのだ。
「後藤さん」
紗雪は持っていた自分を含む全員分のドッグタグを後藤に差し出した。怪訝そうな後藤に頭を下げる。
「紫は全員死亡しました。申し訳ありませんがそう報告をお願いします」
「…おいちょっと待て!お前何する気なんだ!?」
紗雪の腕を掴もうとする後藤の手にドッグタグを押し付ける。
「どうしてもやりたい事が出来たんです。今までお世話になりました」
言い終わるや否や身を翻すと鬼の方へ走り出す。後藤は叫ぼうとしたが、ゴーグルが突然反応を始め言葉を飲み込んだ。
「行ってください!後藤さん!!」
「こぉい!鬼狩り!!喰ってやる!」
地面の切り込みを超えた紗雪の姿が急に薄くなる。後藤が慌てて目を凝らせば、向こうは濃い霧が立ち込めていた。鬼の爪をかわし紗雪が深く踏み込む。
ーー炎の呼吸 弍ノ型 昇り炎天ーー
下から上へ炎が鋭く鬼を薙ぎ払う。穴が中心に向かって閉じていくように見えなくなっていく向こう側で鬼の首が高く宙に舞った。紗雪がゆっくり振り返る。
「馬鹿野郎!紗雪!!二階級特進したらお前が上司になるだろうが!!」
叫ぶ後藤の声が聞こえたのか、紗雪が笑い…そして霧の向こうは跡形もなく消えた。
『おいどうした!返事しろ!!』
ゴーグルに仲間の声が入り後藤は一度大きく深呼吸した。持っていた6人分のドッグタグをポケットに捩じ込む。
『全員10時の方向へ向かえ!撤退するぞ』
後藤は最後に紗雪の消えた方向を見ると、あとは振り返らずに走り去った。
「うおっ!?お前…なんちゅー格好」
「話は後!早く撤退して!!」
「撤退ってお前」
紗雪は霧の中で後藤と再会していた。以前同じ部署に所属していた男は少し老けたように見えた。
「歳取りましたね」
「紫が全員いなくなったらそりゃ老けるわ!」
どうやら随分苦労をかけたようである。紗雪は後藤の来た方向、少し西向きに偏りながら移動を始めた。
「常時無線を解放しておいてください。どこかで回復するはずです。霧が晴れたら10時の方向へ。岩陰に緊急用のボートがあります。まだあればですけど」
「わかった…しかしお前、今まで何してたんだ?それにその格好」
「話せば長すぎて…っ!」
紗雪は立ち止まると日輪刀を抜いた。ギョッとする後藤を背に庇う。霧の一部が凝って鬼が現れた。
「!!」
後藤が銃を構える。紗雪はそれを掴んで下げた。後藤が非難の声を上げる。
「おい!」
「こいつは私の持ってる刀でしか倒せないんです。援護されると返ってやりずらいので動かないで下さい」
「まじかよ…」
後藤は唖然として呟くと銃を下ろした。鬼が耳障りな笑い声を上げる。
「きっひゃっひゃ!向こうから来た奴が鬼狩りになるとはなぁ!!お前アレだな?前に別の鬼狩りに助けられた俺の喰い残しだな?」
「喰い残しをもう一度喰う気か?意地汚い奴だ」
「ぬかせぇ!!」
鬼の姿が霧に消えたと思った瞬間、紗雪は後藤の横にいる鬼の腕を斬り落としていた。霧に消える鬼の首を目掛け刀を振るうが手応えがない。
(実体を斬らなければ駄目か。だが気配は掴んだ。再生速度も速く無い)
「後藤さんこっちへ」
向こうの時代へ後藤をとにかく戻さなければ。紗雪は後藤の腕を掴むと周囲を警戒しながら歩き出した。
「何だあいつ!?消えたぞ!」
「そういう奴です。アイツはどういう訳か自分の仲間を増やす。紫は私以外は皆んなそうなりました」
霧から伸びてくる腕や足を斬り落としながら進む。頭上に現れた鬼に紗雪は後藤の襟首を掴むと大きく飛び退った。
「!」
「?」
鬼が一瞬足元を気にして一歩下がった。紗雪が反射的にその位置の地面を斬りつける。地面の切り込みを境に鬼は追って来るのをやめた。
(そうか…ここが……)
向こうとこちらの境界。紗雪は刀を下ろすと掴んでいた後藤の襟首を離した。後藤が慌てて銃を構える。
「どうした紗雪!」
後藤の問い掛けは紗雪の耳に入っていなかった。このまま撤退すれば紗雪は向こうに戻れる。どういう理屈なのか境界を跨げない鬼を斬ることは出来ないが、煉獄が必ず斬ってくれる。
(あぁ、でも…だけど)
紗雪はギュッと自分の胸元を掴んだ。煉獄に灯された炎が戻りたいと叫ぶ。
ーー煉獄の元に戻りたいーー
(そりゃあ突き詰めて考えたりしない訳だ。現代を向こう呼ばわりだもの)
いつからか紗雪が帰りたい場所は一つだった。煉獄のいる所が自分の居場所なのだ。
「後藤さん」
紗雪は持っていた自分を含む全員分のドッグタグを後藤に差し出した。怪訝そうな後藤に頭を下げる。
「紫は全員死亡しました。申し訳ありませんがそう報告をお願いします」
「…おいちょっと待て!お前何する気なんだ!?」
紗雪の腕を掴もうとする後藤の手にドッグタグを押し付ける。
「どうしてもやりたい事が出来たんです。今までお世話になりました」
言い終わるや否や身を翻すと鬼の方へ走り出す。後藤は叫ぼうとしたが、ゴーグルが突然反応を始め言葉を飲み込んだ。
「行ってください!後藤さん!!」
「こぉい!鬼狩り!!喰ってやる!」
地面の切り込みを超えた紗雪の姿が急に薄くなる。後藤が慌てて目を凝らせば、向こうは濃い霧が立ち込めていた。鬼の爪をかわし紗雪が深く踏み込む。
ーー炎の呼吸 弍ノ型 昇り炎天ーー
下から上へ炎が鋭く鬼を薙ぎ払う。穴が中心に向かって閉じていくように見えなくなっていく向こう側で鬼の首が高く宙に舞った。紗雪がゆっくり振り返る。
「馬鹿野郎!紗雪!!二階級特進したらお前が上司になるだろうが!!」
叫ぶ後藤の声が聞こえたのか、紗雪が笑い…そして霧の向こうは跡形もなく消えた。
『おいどうした!返事しろ!!』
ゴーグルに仲間の声が入り後藤は一度大きく深呼吸した。持っていた6人分のドッグタグをポケットに捩じ込む。
『全員10時の方向へ向かえ!撤退するぞ』
後藤は最後に紗雪の消えた方向を見ると、あとは振り返らずに走り去った。