本編
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「椎名にまで来てもらってすまなかったね」
産屋敷の言葉に紗雪は黙って頭を下げた。煉獄と共に産屋敷の屋敷に呼ばれてのことだ。庭先で揃って膝をつく煉獄と紗雪を産屋敷が手招く。
「こちらへ」
「失礼いたします!」
煉獄に続いて座敷に上がると、紗雪は煉獄の少し後ろに座った。産屋敷が穏やかに微笑む。
「こちらの暮らしには慣れたかい?違う事も多いだろう?」
「ありがとうございます。皆さん良くしてくださいますので」
紗雪の返事に一つ頷くと産屋敷は本題を切り出した。
「杏寿郎、椎名。君達が初めて会った場所を覚えているかな。あそこに正体不明の霧が発生し、行方不明者が出ている」
「鬼のいる可能性があると言う事ですか!」
「十中八九」
「………」
紗雪は何か言おうとして、しかし口をつぐんだ。正直可能性として考えたことが無いわけじゃない。だが紗雪は不思議とその事を突き詰めて考えたことがなかった。
現代に帰れるかもしれない。
(そうだ。ここで一から出直しなんて、どうして思ったんだろう)
「二人で向かって欲しい」
「…承知致しました!」
「はい」
煉獄がちらりとこちらを見た気がしたが、紗雪は頭を下げるとその視線から逃げた。産屋敷家を辞すると二人並んで歩く。
「…紗雪」
「はい」
ずっと黙っていた煉獄が紗雪を呼んだ。顔を上げると煉獄の横顔が見える。煉獄はまっすぐ前を見たまま言った。
「任務に必要なものがあるなら一度家に寄るぞ」
「…いえ、何もありません」
これまで一度も言われたことのない台詞に紗雪は歯を食いしばった。煉獄は自分が向こうに帰る事を前提に考えている。
(暗に帰れと言われているのかな…)
喪失感が凄い。胸に穴が空いたようだ。紗雪は煉獄から一歩遅れるとその背中を見た。
(そもそも帰りたいのかな私)
もう家族とは何年も会っていない。連絡もないし、こちらからもしていない。友人と呼べるのは同じ部隊の人間ばかりで、いつ居なくなっても後悔のない付き合いしかして来なかった。
(あぁ、なんだか急に糸の切れた凧になった気分だ)
帰ったところで居場所はない。でも煉獄が帰れと言うならここにも居られない。
(駄目だ駄目だ!任務に集中しろ!!)
紗雪は首を横に振ると嫌な考えを振り払った。大体自分の時の鬼と同じとは限らないのだ。帰れるかもなんて考えても意味がない。
「どうした紗雪!」
「いえ!大丈夫です」
たたっと小走りで隣に並ぶ紗雪を確認すると煉獄は再び前を向いた。
(やはり動揺しているようだ)
帰れるかもしれないのだから当然だろうと煉獄は思った。先程はつい家に戻って千寿郎の顔でも見れば気持ちが揺らぐかと卑怯な事を言ってしまったが、何も無いと言われてしまった。
(ならば憂いなく帰してやらなければ)
煉獄家が紗雪の帰る場所になればと思っていた煉獄だったが、やはりそう上手くはいかないなと内心気落ちするのだった。
産屋敷の言葉に紗雪は黙って頭を下げた。煉獄と共に産屋敷の屋敷に呼ばれてのことだ。庭先で揃って膝をつく煉獄と紗雪を産屋敷が手招く。
「こちらへ」
「失礼いたします!」
煉獄に続いて座敷に上がると、紗雪は煉獄の少し後ろに座った。産屋敷が穏やかに微笑む。
「こちらの暮らしには慣れたかい?違う事も多いだろう?」
「ありがとうございます。皆さん良くしてくださいますので」
紗雪の返事に一つ頷くと産屋敷は本題を切り出した。
「杏寿郎、椎名。君達が初めて会った場所を覚えているかな。あそこに正体不明の霧が発生し、行方不明者が出ている」
「鬼のいる可能性があると言う事ですか!」
「十中八九」
「………」
紗雪は何か言おうとして、しかし口をつぐんだ。正直可能性として考えたことが無いわけじゃない。だが紗雪は不思議とその事を突き詰めて考えたことがなかった。
現代に帰れるかもしれない。
(そうだ。ここで一から出直しなんて、どうして思ったんだろう)
「二人で向かって欲しい」
「…承知致しました!」
「はい」
煉獄がちらりとこちらを見た気がしたが、紗雪は頭を下げるとその視線から逃げた。産屋敷家を辞すると二人並んで歩く。
「…紗雪」
「はい」
ずっと黙っていた煉獄が紗雪を呼んだ。顔を上げると煉獄の横顔が見える。煉獄はまっすぐ前を見たまま言った。
「任務に必要なものがあるなら一度家に寄るぞ」
「…いえ、何もありません」
これまで一度も言われたことのない台詞に紗雪は歯を食いしばった。煉獄は自分が向こうに帰る事を前提に考えている。
(暗に帰れと言われているのかな…)
喪失感が凄い。胸に穴が空いたようだ。紗雪は煉獄から一歩遅れるとその背中を見た。
(そもそも帰りたいのかな私)
もう家族とは何年も会っていない。連絡もないし、こちらからもしていない。友人と呼べるのは同じ部隊の人間ばかりで、いつ居なくなっても後悔のない付き合いしかして来なかった。
(あぁ、なんだか急に糸の切れた凧になった気分だ)
帰ったところで居場所はない。でも煉獄が帰れと言うならここにも居られない。
(駄目だ駄目だ!任務に集中しろ!!)
紗雪は首を横に振ると嫌な考えを振り払った。大体自分の時の鬼と同じとは限らないのだ。帰れるかもなんて考えても意味がない。
「どうした紗雪!」
「いえ!大丈夫です」
たたっと小走りで隣に並ぶ紗雪を確認すると煉獄は再び前を向いた。
(やはり動揺しているようだ)
帰れるかもしれないのだから当然だろうと煉獄は思った。先程はつい家に戻って千寿郎の顔でも見れば気持ちが揺らぐかと卑怯な事を言ってしまったが、何も無いと言われてしまった。
(ならば憂いなく帰してやらなければ)
煉獄家が紗雪の帰る場所になればと思っていた煉獄だったが、やはりそう上手くはいかないなと内心気落ちするのだった。