本編
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「今日は藤の家に世話になることとしよう!」
「分かりました」
紗雪は煉獄の巡回任務に同道していた。夜の間中、鬼の気配を追って走り回るなかなかハードな任務だ。煉獄は小物と判断した鬼に関しては全て紗雪に斬らせていた。なので紗雪はちょっとバテ気味だ。
(師範の体力がエゲツない)
「すまないが今日の夕刻まで休ませて貰えるだろうか!」
「これは鬼狩り様。どうぞお入り下さい」
藤の家紋がついた大きな屋敷の主人が丁寧に迎えてくれる。奥の間の隣り合った部屋に煉獄と紗雪を通すと浴衣を差し出した。
「隊服は夕方までに支度を整えさせていただきます」
「ありがとうございます」
紗雪は着替えながら感心しきりで襖の向こうの煉獄に話しかけた。
「藤の家の方はいつでも鬼殺隊を受け入れて下さって有り難いですね」
「藤の家の協力が無ければ我々は立ち行かないだろうな!」
「この仕組みを思い付いた人も思い切りが良かったんですね」
普通は無償でいつどんな状態で来るかわからない者を受け入れるなんて不可能だ。藤の家の鬼殺隊への深い感謝が伺える。湯を借り汚れを落とすと紗雪は隣の部屋の煉獄に声をかけた。
「師範、入っても良いですか?」
「構わないぞ!」
隣り合っている部屋とは言うが仕切っているのは襖だけだ。物凄いゆるさだなと紗雪はいつも思う。
「失礼します」
紗雪は煉獄の横に座ると膝に医薬品の入った袋を乗せた。煉獄が苦笑する。
「腕出して下さい」
「もう血は止まっている!たいした傷じゃ無い!!」
「自分の目で見て納得したいです」
「…君も大概強情だな」
煉獄は観念すると左の袖を捲った。大きな切り裂き傷が二の腕にあって痛々しい。紗雪が眉を寄せるが煉獄は平然としていた。
「もう血は止まっているだろう」
「えぇ、えぇ、傷口はぱっくり開いてますけどね」
騙されてはいけない。この人は呼吸で出血を止めてしまえる万国びっくり人間なのだ。紗雪は傷を消毒すると薬を塗り、テーピングした上で包帯を巻く。
「そこまで酷い傷では無いんだぞ」
「私が師範には万全でいて欲しいんです」
この傷だって紗雪を庇って出来た傷だ。未熟な自分が恨めしい。眉を下げてしまった紗雪に煉獄が手を伸ばした。
「紗雪…」
「失礼致します」
廊下からかけられた声に煉獄は手を引っ込めた。襖が開き藤の家の娘なのだろう綺麗な着物を着た娘がお茶を盆に運んできた。
「お茶をどうぞ」
娘は顔を上げ煉獄を見るとパァッと顔色を明るくした。
「まぁっ、お怪我をされたのですか?私が手当ていたしますわ!」
「いえ、今済んだ所ですのでお気遣いなく」
わかりやすい娘の反応に紗雪は苦笑すると煉獄の袖を元に戻した。娘の自分を見る目が鋭い。
(鬼殺隊士は婚活相手には不向きだと思うんだけど……ん?)
そうでも無いのかと紗雪は思った。煉獄に関して言えば長く続く武家の家系だし、産屋敷家から給与だって潤沢に支払われているだろう。見た目もいいし、多少癖はあるが礼儀も正しい。
(おやおや?)
紗雪は胸がもやっとした気がして首を傾げた。
「すまないが我々はもう休む!人払いだけ頼めるか!」
「…畏まりました」
娘は不満そうではあったが頭を下げると立ち去っていった。襖の閉まる一瞬に見えた娘の目に紗雪が黙り込む。
「さぁ、君も休むといい!夕方には出発するぞ!!」
「…師範」
「なんだ!」
「一緒に寝てもいいですか?」
「なんでだ!?」
紗雪の申し出に煉獄は目を剥くと紗雪を凝視した。紗雪がさっき娘の去って行った襖を指さす。
「あのお嬢さん、やらかしますよきっと」
「今やらかしてるのは君だぞ紗雪!」
「別に師範がああ言うお嬢さんが好みだと言うなら良いですよ。責任とって結婚してくれと言われても断る必要無いですしね」
「そんなわけ無いだろう…」
煉獄は片手で頭を抱えた。紗雪が慰めるようにその肩を叩く。
「一緒に寝ると言っても横に布団敷いて休むだけですよ。いつも同じ屋根の下で寝てるじゃ無いですか。それの延長です」
「………」
絶対違うだろ…と言う言葉を煉獄は飲み込んだ。生きてきた時代が100年違うだけでここまで感覚が違うのかと眩暈がする。
「師範の貞操を守るためです。と言うか私眠いです。決断して下さい」
「…貞操って言うな……わかった」
何も無ければ杞憂で済むのだ。煉獄が声を振り絞って返事すると、紗雪はさっさと自分の布団を煉獄の布団の隣に引っ張ってきた。
布団に潜り込むと目を閉じる。
「お休みなさい」
「…あぁ、お休み」
煉獄はため息をつくと自分の布団に入った。ついたままの灯りに紗雪が尋ねる。
「灯り、消さないんですか?」
「真っ暗だと神経が冴えてな」
「なるほど、職業病です、ね…」
「………」
よほど疲れていたのか紗雪は喋り終わるや否や寝入ってしまった。その顔を暫く眺めていた煉獄だったが、ふっと笑うと目を閉じた。
「………」
2時間後、襖が僅かに開いた気配に煉獄は目を覚ました。それと同時に腕の中に温もりが…。
(君はそんなに寝相が悪かったか?)
紗雪が煉獄の懐に潜り込んでいた。襖の開いたのに気付いた様子もなく熟睡だ。
(紗雪の勘が当たったか)
煉獄は目を閉じると狸寝入りを決め込んだ。一歩、二歩と部屋に入ってきた侵入者がはっと息を飲んで慌てて立ち去る。人の気配が完全に離れていったのを確認すると、煉獄は再び眠りについた。
紗雪を腕に囲い込んだまま。
「分かりました」
紗雪は煉獄の巡回任務に同道していた。夜の間中、鬼の気配を追って走り回るなかなかハードな任務だ。煉獄は小物と判断した鬼に関しては全て紗雪に斬らせていた。なので紗雪はちょっとバテ気味だ。
(師範の体力がエゲツない)
「すまないが今日の夕刻まで休ませて貰えるだろうか!」
「これは鬼狩り様。どうぞお入り下さい」
藤の家紋がついた大きな屋敷の主人が丁寧に迎えてくれる。奥の間の隣り合った部屋に煉獄と紗雪を通すと浴衣を差し出した。
「隊服は夕方までに支度を整えさせていただきます」
「ありがとうございます」
紗雪は着替えながら感心しきりで襖の向こうの煉獄に話しかけた。
「藤の家の方はいつでも鬼殺隊を受け入れて下さって有り難いですね」
「藤の家の協力が無ければ我々は立ち行かないだろうな!」
「この仕組みを思い付いた人も思い切りが良かったんですね」
普通は無償でいつどんな状態で来るかわからない者を受け入れるなんて不可能だ。藤の家の鬼殺隊への深い感謝が伺える。湯を借り汚れを落とすと紗雪は隣の部屋の煉獄に声をかけた。
「師範、入っても良いですか?」
「構わないぞ!」
隣り合っている部屋とは言うが仕切っているのは襖だけだ。物凄いゆるさだなと紗雪はいつも思う。
「失礼します」
紗雪は煉獄の横に座ると膝に医薬品の入った袋を乗せた。煉獄が苦笑する。
「腕出して下さい」
「もう血は止まっている!たいした傷じゃ無い!!」
「自分の目で見て納得したいです」
「…君も大概強情だな」
煉獄は観念すると左の袖を捲った。大きな切り裂き傷が二の腕にあって痛々しい。紗雪が眉を寄せるが煉獄は平然としていた。
「もう血は止まっているだろう」
「えぇ、えぇ、傷口はぱっくり開いてますけどね」
騙されてはいけない。この人は呼吸で出血を止めてしまえる万国びっくり人間なのだ。紗雪は傷を消毒すると薬を塗り、テーピングした上で包帯を巻く。
「そこまで酷い傷では無いんだぞ」
「私が師範には万全でいて欲しいんです」
この傷だって紗雪を庇って出来た傷だ。未熟な自分が恨めしい。眉を下げてしまった紗雪に煉獄が手を伸ばした。
「紗雪…」
「失礼致します」
廊下からかけられた声に煉獄は手を引っ込めた。襖が開き藤の家の娘なのだろう綺麗な着物を着た娘がお茶を盆に運んできた。
「お茶をどうぞ」
娘は顔を上げ煉獄を見るとパァッと顔色を明るくした。
「まぁっ、お怪我をされたのですか?私が手当ていたしますわ!」
「いえ、今済んだ所ですのでお気遣いなく」
わかりやすい娘の反応に紗雪は苦笑すると煉獄の袖を元に戻した。娘の自分を見る目が鋭い。
(鬼殺隊士は婚活相手には不向きだと思うんだけど……ん?)
そうでも無いのかと紗雪は思った。煉獄に関して言えば長く続く武家の家系だし、産屋敷家から給与だって潤沢に支払われているだろう。見た目もいいし、多少癖はあるが礼儀も正しい。
(おやおや?)
紗雪は胸がもやっとした気がして首を傾げた。
「すまないが我々はもう休む!人払いだけ頼めるか!」
「…畏まりました」
娘は不満そうではあったが頭を下げると立ち去っていった。襖の閉まる一瞬に見えた娘の目に紗雪が黙り込む。
「さぁ、君も休むといい!夕方には出発するぞ!!」
「…師範」
「なんだ!」
「一緒に寝てもいいですか?」
「なんでだ!?」
紗雪の申し出に煉獄は目を剥くと紗雪を凝視した。紗雪がさっき娘の去って行った襖を指さす。
「あのお嬢さん、やらかしますよきっと」
「今やらかしてるのは君だぞ紗雪!」
「別に師範がああ言うお嬢さんが好みだと言うなら良いですよ。責任とって結婚してくれと言われても断る必要無いですしね」
「そんなわけ無いだろう…」
煉獄は片手で頭を抱えた。紗雪が慰めるようにその肩を叩く。
「一緒に寝ると言っても横に布団敷いて休むだけですよ。いつも同じ屋根の下で寝てるじゃ無いですか。それの延長です」
「………」
絶対違うだろ…と言う言葉を煉獄は飲み込んだ。生きてきた時代が100年違うだけでここまで感覚が違うのかと眩暈がする。
「師範の貞操を守るためです。と言うか私眠いです。決断して下さい」
「…貞操って言うな……わかった」
何も無ければ杞憂で済むのだ。煉獄が声を振り絞って返事すると、紗雪はさっさと自分の布団を煉獄の布団の隣に引っ張ってきた。
布団に潜り込むと目を閉じる。
「お休みなさい」
「…あぁ、お休み」
煉獄はため息をつくと自分の布団に入った。ついたままの灯りに紗雪が尋ねる。
「灯り、消さないんですか?」
「真っ暗だと神経が冴えてな」
「なるほど、職業病です、ね…」
「………」
よほど疲れていたのか紗雪は喋り終わるや否や寝入ってしまった。その顔を暫く眺めていた煉獄だったが、ふっと笑うと目を閉じた。
「………」
2時間後、襖が僅かに開いた気配に煉獄は目を覚ました。それと同時に腕の中に温もりが…。
(君はそんなに寝相が悪かったか?)
紗雪が煉獄の懐に潜り込んでいた。襖の開いたのに気付いた様子もなく熟睡だ。
(紗雪の勘が当たったか)
煉獄は目を閉じると狸寝入りを決め込んだ。一歩、二歩と部屋に入ってきた侵入者がはっと息を飲んで慌てて立ち去る。人の気配が完全に離れていったのを確認すると、煉獄は再び眠りについた。
紗雪を腕に囲い込んだまま。