短編
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「…わた、し」
正直に震えた声に椎名は唇を噛んだ。右手を胸の前でギュッと握る。
「私、は…」
「君は」
すっと後ろから伸びて来た左手が椎名の左手首を掴んだ。いつからか思い出せなくなっていた愛しい声が鼓膜を震わせる。真後ろに人の気配がするが動けない。
「俺を置いてどこへ行くつもりだ」
スルリと右手が頬を滑り顎を掴むと顔が横を向き、声の主の姿を確認する間もなく唇が重なった。目に映る金と赤の髪色に涙が溢れる。そっと離れると金環の瞳が柔らかく緩んだ。
「ホント、に…?」
「確かめてみると良い」
椎名の手を掴むと自分の頬へと運ぶ。温かい体温がすぐに信じられなくて椎名は両手で頬を包んだ。口が勝手に笑みの形になっていく。信じられない気持ちでいっぱいだった。子孫と思しき高校生を見て時代は正しく回ってるんだと諦めたのに…。
「杏寿郎さん」
「椎名」
しっかりと名前を呼ばれぼろっと涙腺が決壊した。拭っても止まらないそれに杏寿郎が唇を寄せる。涙を拭う指先にもキスを落としもう一度唇に触れようとして…。
「公共の場なんで辞めてもらって良いですかねぇ!?」
「っ!」
「それもそうだな!」
ハッとした椎名を杏寿郎が軽々と抱き上げた。そのままスタスタ歩き出すのに呆気に取られる。
「じゃなくて!えっ!?ちょ、止まりましょう杏寿郎さん!いろいろ疑問が…」
「断る!君の弁明を二人きりでゆっくりしっかり聞きたいのでな!」
「弁明って…」
なんの…と言いかけ椎名は口を噤んだ。心当たりはとってもあるが、なんでどうしてどうやって杏寿郎がそれを知ったのか想像つかない。
「ちょっと後藤さ…」
「この期に及んで他の男の名を呼ぶとは良い度胸だ!」
もう豆粒ほどにしか見えない後藤が大変良い笑顔で手を振る。
「退職関係書類は郵送してやるからなー」
「職業選択の自由ーっ!」
停めてあった車に放り込まれた椎名はそのまま杏寿郎に連れて行かれてしまい、後日杏寿郎宅に本当に届いた書類一式に魂を飛ばした。
「全員隠れてたぞ!」
杏寿郎が一人で暮らす部屋のベッドにて弁明も謝罪もそれ以外も全部終わった後、杏寿郎からそう告げられて椎名は遠い目をした。聞けば前世の記憶持ちは早い段階から産屋敷家に集まっていたらしく椎名に関しても随分前から産屋敷家経由で問い合わせをしていたようで、今回の任務の人選に納得していなかった後藤を巻き込んでの仕込みだったらしい。
(道理で今回は随分口出ししてくると思ったんだよあの人)
「全然気付きませんでした…」
軍人としてはちょっぴりショックでそう言えば、双眼鏡の距離だからな!と杏寿郎が笑った。
「…どうやったんですか?」
「ん?」
ちょっと拗ねた顔を向けてくる椎名の額に杏寿郎は唇を落とした。首を傾げて見せると椎名が不服そうにする。
「後藤さんです。あの人が民間人に手を貸すなんて」
「…もしかして気付いていないのか」
その台詞に椎名が首を傾げると杏寿郎は目の上と下を手で隠してみせた。しばらく思考を巡らせていた椎名だったがモヤモヤーンと出て来た後藤の顔から目以外を黒く塗り潰してみてハッとした。隠の後藤と同じ目だ。
「ごと…えっ、後藤さん!?まさか本人!?」
「高校生だな!本人は!」
「おや、こ…」
上司の後藤は公私混同はしない主義だがつなぎを取るには最強の繋がりである。キャパオーバーで枕に顔を埋めた椎名はもう無理…と呟いた。杏寿郎の手が背中を撫でてくれるのが心地良くて身を任せているとチュ、チュとリップ音をたてて吸い付かれる。擽ったくて身じろぐとべろりと舐められ椎名は驚いて顔を上げた。
「なぁっ!?」
「流石軍人殿は体力が違う。もう少し俺に付き合ってくれ」
椎名が他の面々に再会できるのは3日後のことである。
正直に震えた声に椎名は唇を噛んだ。右手を胸の前でギュッと握る。
「私、は…」
「君は」
すっと後ろから伸びて来た左手が椎名の左手首を掴んだ。いつからか思い出せなくなっていた愛しい声が鼓膜を震わせる。真後ろに人の気配がするが動けない。
「俺を置いてどこへ行くつもりだ」
スルリと右手が頬を滑り顎を掴むと顔が横を向き、声の主の姿を確認する間もなく唇が重なった。目に映る金と赤の髪色に涙が溢れる。そっと離れると金環の瞳が柔らかく緩んだ。
「ホント、に…?」
「確かめてみると良い」
椎名の手を掴むと自分の頬へと運ぶ。温かい体温がすぐに信じられなくて椎名は両手で頬を包んだ。口が勝手に笑みの形になっていく。信じられない気持ちでいっぱいだった。子孫と思しき高校生を見て時代は正しく回ってるんだと諦めたのに…。
「杏寿郎さん」
「椎名」
しっかりと名前を呼ばれぼろっと涙腺が決壊した。拭っても止まらないそれに杏寿郎が唇を寄せる。涙を拭う指先にもキスを落としもう一度唇に触れようとして…。
「公共の場なんで辞めてもらって良いですかねぇ!?」
「っ!」
「それもそうだな!」
ハッとした椎名を杏寿郎が軽々と抱き上げた。そのままスタスタ歩き出すのに呆気に取られる。
「じゃなくて!えっ!?ちょ、止まりましょう杏寿郎さん!いろいろ疑問が…」
「断る!君の弁明を二人きりでゆっくりしっかり聞きたいのでな!」
「弁明って…」
なんの…と言いかけ椎名は口を噤んだ。心当たりはとってもあるが、なんでどうしてどうやって杏寿郎がそれを知ったのか想像つかない。
「ちょっと後藤さ…」
「この期に及んで他の男の名を呼ぶとは良い度胸だ!」
もう豆粒ほどにしか見えない後藤が大変良い笑顔で手を振る。
「退職関係書類は郵送してやるからなー」
「職業選択の自由ーっ!」
停めてあった車に放り込まれた椎名はそのまま杏寿郎に連れて行かれてしまい、後日杏寿郎宅に本当に届いた書類一式に魂を飛ばした。
「全員隠れてたぞ!」
杏寿郎が一人で暮らす部屋のベッドにて弁明も謝罪もそれ以外も全部終わった後、杏寿郎からそう告げられて椎名は遠い目をした。聞けば前世の記憶持ちは早い段階から産屋敷家に集まっていたらしく椎名に関しても随分前から産屋敷家経由で問い合わせをしていたようで、今回の任務の人選に納得していなかった後藤を巻き込んでの仕込みだったらしい。
(道理で今回は随分口出ししてくると思ったんだよあの人)
「全然気付きませんでした…」
軍人としてはちょっぴりショックでそう言えば、双眼鏡の距離だからな!と杏寿郎が笑った。
「…どうやったんですか?」
「ん?」
ちょっと拗ねた顔を向けてくる椎名の額に杏寿郎は唇を落とした。首を傾げて見せると椎名が不服そうにする。
「後藤さんです。あの人が民間人に手を貸すなんて」
「…もしかして気付いていないのか」
その台詞に椎名が首を傾げると杏寿郎は目の上と下を手で隠してみせた。しばらく思考を巡らせていた椎名だったがモヤモヤーンと出て来た後藤の顔から目以外を黒く塗り潰してみてハッとした。隠の後藤と同じ目だ。
「ごと…えっ、後藤さん!?まさか本人!?」
「高校生だな!本人は!」
「おや、こ…」
上司の後藤は公私混同はしない主義だがつなぎを取るには最強の繋がりである。キャパオーバーで枕に顔を埋めた椎名はもう無理…と呟いた。杏寿郎の手が背中を撫でてくれるのが心地良くて身を任せているとチュ、チュとリップ音をたてて吸い付かれる。擽ったくて身じろぐとべろりと舐められ椎名は驚いて顔を上げた。
「なぁっ!?」
「流石軍人殿は体力が違う。もう少し俺に付き合ってくれ」
椎名が他の面々に再会できるのは3日後のことである。
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