本編
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「………」
「………」
翻訳が始まって4時間がたち、胡蝶が紗雪の様子を見に行くために廊下を歩いていると部屋の前にカナヲが立っていた。お茶の入った盆を手に中に入るでもなく立ち尽くしている。胡蝶は優しく微笑むとカナヲに声をかけた。
「一声かけて入ればいいんですよ。お茶が冷めてしまうでしょう?」
「っ!師範…」
カナヲは大汗をかくと何とか胡蝶をそう呼んだ。カナヲの横から部屋を覗くと紗雪が一心不乱に翻訳作業をしている。その集中ぶりに胡蝶は納得がいった。
「大丈夫、邪魔をされたと思うような方ではありませんよ。紗雪さん、失礼しますね」
胡蝶は紗雪に声をかけると部屋に入った。胡蝶に促されカナヲも恐る恐る入ってくる。紗雪は突如現れた美少女に目を丸くした。
「胡蝶さんの妹さんですか?可愛らしい方ですね」
「えぇ、そのようなものです。この子は栗花落カナヲ。私の継子です」
(こんな小さな子が…)
子とはついてももっと大人が対象だろうと思っていた紗雪は驚いてカナヲを見た。なにやら大汗をかいているが、大丈夫だろうか?紗雪が心配しているとカナヲはおずおずお盆を差し出した。
「……っ、お」
(お?)
「お茶…」
「わざわざ持ってきてくださったんですか。ありがとうございます」
言葉を絞り出すカナヲに紗雪はにっこり笑うと湯呑みを受け取った。そのお茶が冷めきっている事に気付いて苦笑する。
「集中し過ぎましたね。随分お待たせしてしまって申し訳無いです」
「………」
踵を返すと走り去ってしまったカナヲを見送ると胡蝶は謝った。
「すいません、カナヲは自分の気持ちや考えを口にするのがとても苦手な子なんです」
「とんでもありません。こちらこそずっとお茶を持ったまま待たせていたなんて申し訳無いです。カナヲちゃんに謝っていたと伝えていただけますか」
紗雪は湯呑みを口に運ぶと一息ついた。良いお茶を使ってくれたのだろう、冷めても美味しい。胡蝶が首を傾げた。
「紗雪さんがご自分で仰らないのですか?」
「勿論そうさせて頂けるならそれが一番有難いです。でもあまり接し方が近過ぎるとカナヲちゃんが驚いてしまいますから」
話しかけるだけであんなに緊張していたのだから距離の取り方を間違えるとカナヲの負担になってしまう。胡蝶の笑顔が柔らかく変わった。
「それで、進捗は如何でしょう?」
「一冊目の半分行かないぐらい…ですね」
どう日本語に書き起こすのが正解なのか悩みながらの作業なので手間取ってしまう。しかし胡蝶は手を打って喜んだ。
「まぁ、そんなに!やはり紗雪さんに頼んで正解でしたね。もうお帰りになる時間なのが残念です」
「そんな時間ですか」
紗雪が外を見ると夕暮れが迫りつつあった。胡蝶が廊下を振り返る。
「ちょうどお迎えも来たようですよ」
「紗雪!迎えに来たぞ!!」
「師範!」
ひょいと紗雪が顔を覗かせると煉獄が片手を上げる。
「すいません、今片付けますね」
「あぁ、結構ですよ。此方でやっておきますから暗くなる前に帰った方が良いでしょう」
「うむ!日暮れは速いからな!!」
胡蝶の言葉に甘え紗雪は煉獄と蝶屋敷を出た。帽子を被る為に髪紐を解こうとすると、煉獄がその手を止める。
「師範?」
「この後任務が入った!急いで帰らなければならんから抱えて行くぞ!!」
「かかっ!?」
言うが速いか煉獄は紗雪を横抱きにすると走り出した。煉獄の最高速に振り落とされまいと、紗雪は片手で帽子を守ると、もう片方で煉獄の首にしがみついた。
「…っ!」
額を煉獄の首に押し当て衝撃を受けないようにする紗雪の髪紐が煉獄の視界を舞った。
「もう少しだ!頑張れ紗雪!!」
(頑張ってるのは師範ですけどね!?)
喋ったら舌を噛みそうなので黙る。結局、行きの十分の一の時間で帰宅した紗雪はしばらく力が入らず玄関から動けなかった。
「………」
翻訳が始まって4時間がたち、胡蝶が紗雪の様子を見に行くために廊下を歩いていると部屋の前にカナヲが立っていた。お茶の入った盆を手に中に入るでもなく立ち尽くしている。胡蝶は優しく微笑むとカナヲに声をかけた。
「一声かけて入ればいいんですよ。お茶が冷めてしまうでしょう?」
「っ!師範…」
カナヲは大汗をかくと何とか胡蝶をそう呼んだ。カナヲの横から部屋を覗くと紗雪が一心不乱に翻訳作業をしている。その集中ぶりに胡蝶は納得がいった。
「大丈夫、邪魔をされたと思うような方ではありませんよ。紗雪さん、失礼しますね」
胡蝶は紗雪に声をかけると部屋に入った。胡蝶に促されカナヲも恐る恐る入ってくる。紗雪は突如現れた美少女に目を丸くした。
「胡蝶さんの妹さんですか?可愛らしい方ですね」
「えぇ、そのようなものです。この子は栗花落カナヲ。私の継子です」
(こんな小さな子が…)
子とはついてももっと大人が対象だろうと思っていた紗雪は驚いてカナヲを見た。なにやら大汗をかいているが、大丈夫だろうか?紗雪が心配しているとカナヲはおずおずお盆を差し出した。
「……っ、お」
(お?)
「お茶…」
「わざわざ持ってきてくださったんですか。ありがとうございます」
言葉を絞り出すカナヲに紗雪はにっこり笑うと湯呑みを受け取った。そのお茶が冷めきっている事に気付いて苦笑する。
「集中し過ぎましたね。随分お待たせしてしまって申し訳無いです」
「………」
踵を返すと走り去ってしまったカナヲを見送ると胡蝶は謝った。
「すいません、カナヲは自分の気持ちや考えを口にするのがとても苦手な子なんです」
「とんでもありません。こちらこそずっとお茶を持ったまま待たせていたなんて申し訳無いです。カナヲちゃんに謝っていたと伝えていただけますか」
紗雪は湯呑みを口に運ぶと一息ついた。良いお茶を使ってくれたのだろう、冷めても美味しい。胡蝶が首を傾げた。
「紗雪さんがご自分で仰らないのですか?」
「勿論そうさせて頂けるならそれが一番有難いです。でもあまり接し方が近過ぎるとカナヲちゃんが驚いてしまいますから」
話しかけるだけであんなに緊張していたのだから距離の取り方を間違えるとカナヲの負担になってしまう。胡蝶の笑顔が柔らかく変わった。
「それで、進捗は如何でしょう?」
「一冊目の半分行かないぐらい…ですね」
どう日本語に書き起こすのが正解なのか悩みながらの作業なので手間取ってしまう。しかし胡蝶は手を打って喜んだ。
「まぁ、そんなに!やはり紗雪さんに頼んで正解でしたね。もうお帰りになる時間なのが残念です」
「そんな時間ですか」
紗雪が外を見ると夕暮れが迫りつつあった。胡蝶が廊下を振り返る。
「ちょうどお迎えも来たようですよ」
「紗雪!迎えに来たぞ!!」
「師範!」
ひょいと紗雪が顔を覗かせると煉獄が片手を上げる。
「すいません、今片付けますね」
「あぁ、結構ですよ。此方でやっておきますから暗くなる前に帰った方が良いでしょう」
「うむ!日暮れは速いからな!!」
胡蝶の言葉に甘え紗雪は煉獄と蝶屋敷を出た。帽子を被る為に髪紐を解こうとすると、煉獄がその手を止める。
「師範?」
「この後任務が入った!急いで帰らなければならんから抱えて行くぞ!!」
「かかっ!?」
言うが速いか煉獄は紗雪を横抱きにすると走り出した。煉獄の最高速に振り落とされまいと、紗雪は片手で帽子を守ると、もう片方で煉獄の首にしがみついた。
「…っ!」
額を煉獄の首に押し当て衝撃を受けないようにする紗雪の髪紐が煉獄の視界を舞った。
「もう少しだ!頑張れ紗雪!!」
(頑張ってるのは師範ですけどね!?)
喋ったら舌を噛みそうなので黙る。結局、行きの十分の一の時間で帰宅した紗雪はしばらく力が入らず玄関から動けなかった。