短編
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「最後にここだけ案内しておくね」
食堂や図書室、男子寮の場所の案内の後に紗雪が連れて来たのはガラス張りの天井から明るく日の入る部屋だった。壁一面に白い石が嵌め込まれ名前が書かれている。中央には自然の岩の形を生かした碑が建てられていた。
「これは?」
「殉職者の慰霊碑。遺体は帰ってこない事の方が多いから」
紗雪の見上げる先、決して低く無い壁の半分は隊員の名前がぎっしりと彫られている。そのあまりの数に煉獄と宇髄は口を閉ざした。
「特殊部隊は…」
紗雪は大きな碑に軽く寄りかかると腕を組み二人を見た。その表は平坦で感情を読みにくい。
「殉職するのが四割、退職するのが二割、精神を病んで病院送りになるのが三割」
九割が脱落すると聞いて目を見開く。宇髄が緊張した顔で尋ねた。
「残りの一割は?」
「昇進したり、教育係に回ったり、現場から離れられなくなったり?」
死と隣り合わせの環境でなければ生きている実感が得られないなんて物騒な事を言う者だって少なく無い。
「お前もここに名前を残すのか?」
「!」
宇髄の問いかけに煉獄は目を見開いた。紗雪の過去とは言えそういった可能性があった事に背筋が冷える。一方の紗雪は目を瞬いた後、壁に彫られた名前を見上げた。新しい方の名前には自分も知っている名前がある。あの名前達の後に自分の名前が…。
「そうかもね」
「っ!」
(なんて音出しやがる!)
寂しいような安堵するような複雑な音。宇髄が声を上げるより早く煉獄が紗雪の手を掴んだ。
「命を諦めるな!」
「………」
「君が君を軽んじることは俺が許さない!!」
「………ふふ」
鬼気迫る煉獄の様子に紗雪は小さく笑うとその手を解いた。ポンと煉獄の肩を叩くと慰霊碑の部屋を出て行く。
「新入隊員は一ヶ月間の入隊猶予が与えられているからよく考えると良いよ」
そのまま振り返らずに行ってしまった紗雪を見送ると宇髄がクシャクシャと髪をかき混ぜた。
「この件が片付いたらアイツ派手に説教だな」
鬼殺隊は鬼の討伐に命を賭けることを厭わないが死にたがりでは困る。宇髄は自分でぐしゃぐしゃにした髪を撫でつけると煉獄を振り返った。
「どうする?」
「紗雪の意識を取り戻さなければ鬼の居場所を確認するのは難しいだろう!とにかくそれが優先だ!!」
もしかすると紗雪の意識は今も鬼の血気術と戦っているかもしれない。ならば早く駆けつけてやりたい。
「んじゃ、お前は紗雪担当な。俺は建物の中を調べて回る。派手に役割分担と行こうぜ」
「うむ!承知した!!」
煉獄は宇髄と別れると紗雪を探しに談話室へ向かった。ヒョロリと背の高い男に声をかける。
「紗雪を見なかっただろうか!」
「紗雪?こっちには戻って来てないけど?」
「おいおいノット。紗雪が談話室に居ないなら行く場所は一つだろ?」
向かいの椅子で雑誌を読んでいた小柄だががっしりとした体格の男が口を開いた。ノットがのんびりと頷く。
「ヴォルクスの言う通りだね。図書室に行ってみなよ」
「声掛け一回じゃ気付いてもらえねぇかもだぞ」
「わかった!行ってみる!!」
(そう言えば紗雪は本が好きだと言っていたな!)
時間を忘れるとまで言っていたのだから余程好きなのだろう。談話室を出る所ですれ違った角刈りの男が煉獄に声をかけた。
「紗雪んとこ行くのか?じゃあそろそろ晩飯の時間終わるから食いっぱぐれるなって言っといてくれよ」
斉藤さんからの優しさだぞ☆とウィンクする男にヴォルクスからからかいの声がかかる。わぁわぁと賑やかな談話室を後にすると煉獄は図書室へ向かった。足を踏み入れるとシン…とした空間に本特有の匂いがする。見える範囲に人はおらず煉獄は奥へと足をすすめた。
(いた)
一番奥にソファが置かれており沢山のクッションが積まれている。紗雪は靴を脱いでその中に座り込んでおり、寛いだ様子で手元の本に視線を落としていた。ページをめくる音だけが聞こえる空間はあまりに静かで穏やかで煉獄は暫く声をかけるのを躊躇った。
(戦いが無ければ君はこんな風に穏やかに過ごしていたのだろうか)
あり得ない未来を想像して首を振る。考えても意味の無い事だ。鬼との戦いは常にそばにあり無惨を倒すまで終わらない。煉獄は近くの本棚をコンコンと軽く叩いた。音に気付いた紗雪がキョトンと煉獄を振り返るとザッと顔色を青く変えた。
「ごめん!何か約束してたかな!?ちょっとのつもりだったんだけど!」
慌てて立ち上がるのに煉獄は笑い声を上げた。紗雪の頭にポンと手を置く。
「君が本に夢中になって夕餉を食べ損なわないよう呼びに来ただけだ!」
「そか…もうそんな時か、ん」
「紗雪?」
不意に黙り込むと紗雪は煉獄の手を取り歩き出した。驚きながらもされるがままの煉獄を自室まで連れて行く。ベッドに机、私物を入れる押し入れとテレビしかない室内を煉獄が眺めていると片隅に置かれた縦長のロッカーの前で紗雪が手招きをした。
「どうしたんだ紗雪」
「これ、《お二人のですよね》」
鍵を差し込むと戸を開く。現れた日輪刀に煉獄は目を見張った。
「《伝えるのが遅れて申し訳ありません。自由に動けなくて…鍵をお渡ししておきます。いつでもどこからでも開けることが出来ますから》」
小さな鍵を受け取ると煉獄は紗雪をマジマジと見た。突然自分の知る紗雪が戻って来たのだ。しかしそれはほんの一瞬の事で煉獄が何か言うより早く紗雪はドアへと向かうと笑った。
「さ、夕食が無くならないうちに急ごっか」
「そうだな!」
並んで廊下を歩きながら煉獄は内心安堵していた。紗雪の意識は隠れてはいるもののしっかりと存在している。それが確認できただけでも収穫だ。
「ちなみに甘い辛い酸っぱい苦いは平気?」
「好き嫌いならばした事がないぞ!」
「料理が多国籍だからたまにビックリする味のもあるから気を付けてね」
「うむ!任せておけ!!」
世間話をしながら食堂に向かうと何故かそこでは乱闘騒ぎが起こっていた。入り口で呆気に取られているとすぐそばに居た宇髄が軽く手を上げる。
「よっ」
「なんの騒ぎだ?」
「わかんねぇ。大声がしたなと思ったらあっという間に飛び火した」
「あー、まぁいつもそんなものだよ。でもこれじゃあ食事どころじゃないね」
むしろここに居ると後片付けという名のとばっちりが来るかもしれない。紗雪は煉獄と宇髄に合図をすると食堂を後にした。管理課の職員に予備厨房の鍵を借りる。
「タイミング良かったわね。今日食料の搬入があったばかりだから予備厨房の方にも運び込んだのよ」
「ホント?ありがとう」
機嫌良く受け取った鍵を回しながら厨房へ向かう。黙って後ろをついて来た宇髄が口を開いた。
「良いのか?備蓄食料だったりしねぇの?」
「備蓄品は誰でも入れる所には置いておかないよ。みーんな食べられちゃうからね」
「食堂で十分な食事は出ているように見えたがな!」
「まぁ、現場の人間の大半は欠食児童だと思ってもらえれば」
何せ体が資本なので皆んなとにかく食べる。見ているだけで紗雪などは胸焼けしそうだ。ドアの鍵を開け中に入るとステンレス製の厨房とテーブルがいくつか置かれていた。大型冷蔵庫の中身を覗いて紗雪が口笛を吹く。
「料理の指定はしないでね。ついでに味にも期待しないでねー」
「手伝うぜ」
「俺もだ!」
「んにゃ、三人分なら時間かからないから座ってて良いよ」
レトルトご飯を温めているうちにサラダを作り、レトルトスープに具材を足す。玉ねぎをみじん切り、鶏肉は小さめの一口大にして炒めて温まったご飯も混ぜるとケチャップで味付けし皿にこんもりと盛った。特に宇髄と煉獄の分は特大だ。卵を一人5個分とたっぷり割るとバターと共によく温めたフライパンに流し入れた。慣れた様子で楕円状にまとめるとコロリとご飯の上に転がす。中央にナイフを入れるとふわりと半熟状の卵が広がった。
「すげぇ!派手だな!!」
「いやただのオムライスですけど」
「既に美味い!!」
「せめて食べてからにして」
笑いながらそんなやり取りを交わすとトレイに三品を並べそれぞれの前に置く。三人は行儀よく手を合わせた。
「「「いただきます」」」
出来立てのオムライスをスプーンで一掬いすると口に運ぶ。卵とバター、ケチャップライスの取り合わせが堪らない。煉獄と宇髄が同時に叫んだ。
「うめぇ!」
「美味い!」
「そう?良かった…ところで《男子更衣室の奥から三列目、左に六つ目のロッカーを確認して下さい。それと非常口と書かれたドアからいつでも外に出られます》」
突然の紗雪の言葉にスプーンを持つ手が止まる。いつでも外に出られるという言葉に宇髄が眉をしかめた。
「おま…」
「あー!良いもの食べてる!!」
宇髄の言葉は乱入して来たメイファによって遮られた。紗雪の背中に憑りつくとゆさゆさ体を揺する。
「アタシも食べたい!って言うか紗雪のビーフシチュー食べたい!!たーべーたーいー!」
「メイファ、ご飯食べられないから。そして作るのくっそ面倒くさいからヤダ」
「ずるーい!紗雪のひよこばっかり!!」
ひよこという単語にご飯を吹き出しかけたのは紗雪だった。きょとんとする煉獄をちらりと見るとメイファを引き剥がす。
「この二人にひよことか止めて」
どう控えめに見たって自分より強い。それがわからない紗雪ではない。
「ひよことは何だろうか!」
まさか自分の髪色を見て言われているのかと煉獄は隣の宇髄の足を踏みつけながら尋ねた。笑いをこらえて肩を震わせていた宇髄がいてぇ!と声を上げる。
「新入隊員をそう呼ぶのよ。あ、まだ正式入隊してないから卵?」
「派手に共食いだな!」
「卵は物食べない」
紗雪はため息をつくとスプーンをテーブルに置いた。
バチン!
何かの弾ける音と共に突如部屋が暗闇に閉ざされた。
食堂や図書室、男子寮の場所の案内の後に紗雪が連れて来たのはガラス張りの天井から明るく日の入る部屋だった。壁一面に白い石が嵌め込まれ名前が書かれている。中央には自然の岩の形を生かした碑が建てられていた。
「これは?」
「殉職者の慰霊碑。遺体は帰ってこない事の方が多いから」
紗雪の見上げる先、決して低く無い壁の半分は隊員の名前がぎっしりと彫られている。そのあまりの数に煉獄と宇髄は口を閉ざした。
「特殊部隊は…」
紗雪は大きな碑に軽く寄りかかると腕を組み二人を見た。その表は平坦で感情を読みにくい。
「殉職するのが四割、退職するのが二割、精神を病んで病院送りになるのが三割」
九割が脱落すると聞いて目を見開く。宇髄が緊張した顔で尋ねた。
「残りの一割は?」
「昇進したり、教育係に回ったり、現場から離れられなくなったり?」
死と隣り合わせの環境でなければ生きている実感が得られないなんて物騒な事を言う者だって少なく無い。
「お前もここに名前を残すのか?」
「!」
宇髄の問いかけに煉獄は目を見開いた。紗雪の過去とは言えそういった可能性があった事に背筋が冷える。一方の紗雪は目を瞬いた後、壁に彫られた名前を見上げた。新しい方の名前には自分も知っている名前がある。あの名前達の後に自分の名前が…。
「そうかもね」
「っ!」
(なんて音出しやがる!)
寂しいような安堵するような複雑な音。宇髄が声を上げるより早く煉獄が紗雪の手を掴んだ。
「命を諦めるな!」
「………」
「君が君を軽んじることは俺が許さない!!」
「………ふふ」
鬼気迫る煉獄の様子に紗雪は小さく笑うとその手を解いた。ポンと煉獄の肩を叩くと慰霊碑の部屋を出て行く。
「新入隊員は一ヶ月間の入隊猶予が与えられているからよく考えると良いよ」
そのまま振り返らずに行ってしまった紗雪を見送ると宇髄がクシャクシャと髪をかき混ぜた。
「この件が片付いたらアイツ派手に説教だな」
鬼殺隊は鬼の討伐に命を賭けることを厭わないが死にたがりでは困る。宇髄は自分でぐしゃぐしゃにした髪を撫でつけると煉獄を振り返った。
「どうする?」
「紗雪の意識を取り戻さなければ鬼の居場所を確認するのは難しいだろう!とにかくそれが優先だ!!」
もしかすると紗雪の意識は今も鬼の血気術と戦っているかもしれない。ならば早く駆けつけてやりたい。
「んじゃ、お前は紗雪担当な。俺は建物の中を調べて回る。派手に役割分担と行こうぜ」
「うむ!承知した!!」
煉獄は宇髄と別れると紗雪を探しに談話室へ向かった。ヒョロリと背の高い男に声をかける。
「紗雪を見なかっただろうか!」
「紗雪?こっちには戻って来てないけど?」
「おいおいノット。紗雪が談話室に居ないなら行く場所は一つだろ?」
向かいの椅子で雑誌を読んでいた小柄だががっしりとした体格の男が口を開いた。ノットがのんびりと頷く。
「ヴォルクスの言う通りだね。図書室に行ってみなよ」
「声掛け一回じゃ気付いてもらえねぇかもだぞ」
「わかった!行ってみる!!」
(そう言えば紗雪は本が好きだと言っていたな!)
時間を忘れるとまで言っていたのだから余程好きなのだろう。談話室を出る所ですれ違った角刈りの男が煉獄に声をかけた。
「紗雪んとこ行くのか?じゃあそろそろ晩飯の時間終わるから食いっぱぐれるなって言っといてくれよ」
斉藤さんからの優しさだぞ☆とウィンクする男にヴォルクスからからかいの声がかかる。わぁわぁと賑やかな談話室を後にすると煉獄は図書室へ向かった。足を踏み入れるとシン…とした空間に本特有の匂いがする。見える範囲に人はおらず煉獄は奥へと足をすすめた。
(いた)
一番奥にソファが置かれており沢山のクッションが積まれている。紗雪は靴を脱いでその中に座り込んでおり、寛いだ様子で手元の本に視線を落としていた。ページをめくる音だけが聞こえる空間はあまりに静かで穏やかで煉獄は暫く声をかけるのを躊躇った。
(戦いが無ければ君はこんな風に穏やかに過ごしていたのだろうか)
あり得ない未来を想像して首を振る。考えても意味の無い事だ。鬼との戦いは常にそばにあり無惨を倒すまで終わらない。煉獄は近くの本棚をコンコンと軽く叩いた。音に気付いた紗雪がキョトンと煉獄を振り返るとザッと顔色を青く変えた。
「ごめん!何か約束してたかな!?ちょっとのつもりだったんだけど!」
慌てて立ち上がるのに煉獄は笑い声を上げた。紗雪の頭にポンと手を置く。
「君が本に夢中になって夕餉を食べ損なわないよう呼びに来ただけだ!」
「そか…もうそんな時か、ん」
「紗雪?」
不意に黙り込むと紗雪は煉獄の手を取り歩き出した。驚きながらもされるがままの煉獄を自室まで連れて行く。ベッドに机、私物を入れる押し入れとテレビしかない室内を煉獄が眺めていると片隅に置かれた縦長のロッカーの前で紗雪が手招きをした。
「どうしたんだ紗雪」
「これ、《お二人のですよね》」
鍵を差し込むと戸を開く。現れた日輪刀に煉獄は目を見張った。
「《伝えるのが遅れて申し訳ありません。自由に動けなくて…鍵をお渡ししておきます。いつでもどこからでも開けることが出来ますから》」
小さな鍵を受け取ると煉獄は紗雪をマジマジと見た。突然自分の知る紗雪が戻って来たのだ。しかしそれはほんの一瞬の事で煉獄が何か言うより早く紗雪はドアへと向かうと笑った。
「さ、夕食が無くならないうちに急ごっか」
「そうだな!」
並んで廊下を歩きながら煉獄は内心安堵していた。紗雪の意識は隠れてはいるもののしっかりと存在している。それが確認できただけでも収穫だ。
「ちなみに甘い辛い酸っぱい苦いは平気?」
「好き嫌いならばした事がないぞ!」
「料理が多国籍だからたまにビックリする味のもあるから気を付けてね」
「うむ!任せておけ!!」
世間話をしながら食堂に向かうと何故かそこでは乱闘騒ぎが起こっていた。入り口で呆気に取られているとすぐそばに居た宇髄が軽く手を上げる。
「よっ」
「なんの騒ぎだ?」
「わかんねぇ。大声がしたなと思ったらあっという間に飛び火した」
「あー、まぁいつもそんなものだよ。でもこれじゃあ食事どころじゃないね」
むしろここに居ると後片付けという名のとばっちりが来るかもしれない。紗雪は煉獄と宇髄に合図をすると食堂を後にした。管理課の職員に予備厨房の鍵を借りる。
「タイミング良かったわね。今日食料の搬入があったばかりだから予備厨房の方にも運び込んだのよ」
「ホント?ありがとう」
機嫌良く受け取った鍵を回しながら厨房へ向かう。黙って後ろをついて来た宇髄が口を開いた。
「良いのか?備蓄食料だったりしねぇの?」
「備蓄品は誰でも入れる所には置いておかないよ。みーんな食べられちゃうからね」
「食堂で十分な食事は出ているように見えたがな!」
「まぁ、現場の人間の大半は欠食児童だと思ってもらえれば」
何せ体が資本なので皆んなとにかく食べる。見ているだけで紗雪などは胸焼けしそうだ。ドアの鍵を開け中に入るとステンレス製の厨房とテーブルがいくつか置かれていた。大型冷蔵庫の中身を覗いて紗雪が口笛を吹く。
「料理の指定はしないでね。ついでに味にも期待しないでねー」
「手伝うぜ」
「俺もだ!」
「んにゃ、三人分なら時間かからないから座ってて良いよ」
レトルトご飯を温めているうちにサラダを作り、レトルトスープに具材を足す。玉ねぎをみじん切り、鶏肉は小さめの一口大にして炒めて温まったご飯も混ぜるとケチャップで味付けし皿にこんもりと盛った。特に宇髄と煉獄の分は特大だ。卵を一人5個分とたっぷり割るとバターと共によく温めたフライパンに流し入れた。慣れた様子で楕円状にまとめるとコロリとご飯の上に転がす。中央にナイフを入れるとふわりと半熟状の卵が広がった。
「すげぇ!派手だな!!」
「いやただのオムライスですけど」
「既に美味い!!」
「せめて食べてからにして」
笑いながらそんなやり取りを交わすとトレイに三品を並べそれぞれの前に置く。三人は行儀よく手を合わせた。
「「「いただきます」」」
出来立てのオムライスをスプーンで一掬いすると口に運ぶ。卵とバター、ケチャップライスの取り合わせが堪らない。煉獄と宇髄が同時に叫んだ。
「うめぇ!」
「美味い!」
「そう?良かった…ところで《男子更衣室の奥から三列目、左に六つ目のロッカーを確認して下さい。それと非常口と書かれたドアからいつでも外に出られます》」
突然の紗雪の言葉にスプーンを持つ手が止まる。いつでも外に出られるという言葉に宇髄が眉をしかめた。
「おま…」
「あー!良いもの食べてる!!」
宇髄の言葉は乱入して来たメイファによって遮られた。紗雪の背中に憑りつくとゆさゆさ体を揺する。
「アタシも食べたい!って言うか紗雪のビーフシチュー食べたい!!たーべーたーいー!」
「メイファ、ご飯食べられないから。そして作るのくっそ面倒くさいからヤダ」
「ずるーい!紗雪のひよこばっかり!!」
ひよこという単語にご飯を吹き出しかけたのは紗雪だった。きょとんとする煉獄をちらりと見るとメイファを引き剥がす。
「この二人にひよことか止めて」
どう控えめに見たって自分より強い。それがわからない紗雪ではない。
「ひよことは何だろうか!」
まさか自分の髪色を見て言われているのかと煉獄は隣の宇髄の足を踏みつけながら尋ねた。笑いをこらえて肩を震わせていた宇髄がいてぇ!と声を上げる。
「新入隊員をそう呼ぶのよ。あ、まだ正式入隊してないから卵?」
「派手に共食いだな!」
「卵は物食べない」
紗雪はため息をつくとスプーンをテーブルに置いた。
バチン!
何かの弾ける音と共に突如部屋が暗闇に閉ざされた。