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「世話になります〜」
「どうぞ、ごゆっくりお休みください」
任務明け、紗雪は藤の家を訪ねていた。大きな温泉宿だった所を藤の家が隊士のためにと解放してくれている所なので、設備が整っていてありがたい。
藤の家の者に人払いを頼むと紗雪は服を脱ぎ、晒しを外した。
(はー、毎度の事ながら晒しってキツイよなぁ。立ち回りの時邪魔だし仕方ないんだけどねぇ)
傷を探し、打身だけで済んだのを確認すると湯に浸かる。
「湯に血が混ざっちゃ次の人に悪いからねぇ」
そう独り言を言うと暫くぶりの温泉を堪能する。
「は〜、生き返ったぁ」
温泉に浸かりほかほかになった紗雪は晒しに手を伸ばし…しかしそれを隊服と共に畳んだ。
(浴衣に丹前を着てればいっか)
その為にわざわざ大きめの丹前を借りたのだ。紗雪は鼻歌を歌いながら部屋へと戻る廊下を進んだ。ふとその足が一つの部屋で止まる。
「おぉ〜」
覗いた部屋は座布団を納めておく小さな納戸だった。所狭しと積まれた座布団の向こう側に僅かな隙間がある。
(こういう場所ってわくわくしちゃうんだよねぇ)
紗雪は周囲を見回すとひょいとその部屋に足を踏み入れた。座布団と壁の間にすっぽりとしゃがみ込む。
(あー、なんか落ち着くぅ〜。柱だからって皆んなが広い部屋や屋敷が好きって訳じゃないんだよなぁ)
柱になった時に与えられた鳥屋敷を思い出し紗雪はため息をついた。あんな何部屋もある屋敷はいらない。絶対にいらない。
「?」
カタン…と音がして誰かの入ってくる気配に紗雪は首を巡らせた。藤の家の者ならばこんな所にいるのを見つかるのはちょっと恥ずかしい。
「紗雪か」
「煉獄さん?」
しかし入ってきたのは煉獄だった。浴衣姿で風呂上がりのようだ。ちょっと慌てた様子の煉獄に紗雪が首を傾げた。
「任務お疲れ様です煉獄さん。どうしたんですかぁ?」
「いや…今、藤の家の娘達から逃げている所だ」
煉獄は言い難そうに答えると紗雪の横に座った。もう一度首を傾げる紗雪にため息をつく。
「俺の所に嫁いで来たいそうだ。その気はないと言ったんだがな」
「わーぁ、年頃の娘さんなのに凄いですねぇ」
要は既成事実を作ろうと言う事なのだろう。紗雪が感心した声をあげると煉獄が不服そうにした。
「ねぇ、いた?」
「どこに行かれたのかしら?」
「「…っ!」」
廊下から聞こえてきた声に煉獄と紗雪は気配を殺した。
「この納戸に隠れてるんじゃない?」
「紗雪すまん、もう少し奥に…」
煉獄は身を隠そうと紗雪に奥へ行くよう促した。その手が丹前の上から紗雪の胸を押す。
「ひゃっ」
「!!」
予想していなかった柔らかい感触に煉獄は驚いて手を引いた。ビックリして目をまん丸に見開いている紗雪と見つめ合う。
「君は…」
煉獄が何か言いかけたが戸の開く音がして、紗雪はひょいと煉獄を跨ぐとその肩を奥へと押し込んだ。
「誰か…いる?」
「いますよぉ〜」
娘の声に紗雪がのんびり返事を返した。驚いて固まる娘達の前に姿を見せる。
「どうかしましたかぁ?」
「あ、あの…いえ、紗雪様はどうしてこんな所に?」
娘達は紗雪をそう言う対象としては見ていないようで、言い淀んだ。紗雪がのほほんと答える。
「狭くて暗いところって落ち着くんですよねぇ。つい長居しちゃいました」
「そ、そうですか…あの、ここにどなたかいらっしゃいませんでしたか?」
どうやらかなり躍起になって探しているようである。紗雪がケラケラと笑い声を上げた。
「自分で言うのもなんだけど、こんな所に入ってくる変わり者そうは居ないんじゃないかなぁ?」
「…そうですよね。失礼致しました」
娘達は大人しく引き下がると何処かへと行ってしまった。紗雪がため息をついて煉獄を振り返る。暫くの後、煉獄はゆっくり立ち上がった。
「紗雪、君は女人なのか?」
「いきなりそれですかぁ?煉獄さぁん。触れない優しさがあってもいいと思うんですけどぉ」
紗雪はもう一度ため息をつくと、煉獄の隣に戻って腰掛けた。煉獄が並んで座る。
「そうですよぉ。僕は正真正銘の女です」
「なにか事情でも?」
「そんなものありませんよぉ」
紗雪はパタパタと手を振った。
「鬼を相手に立ち回るには動きにくかったので晒しを巻いてました。それにこの上背にこんな顔なので大体は相手が勝手に誤解するんですよねぇ」
「俺は紗雪、君を好いている」
「………へ?」
唐突な煉獄の告白に紗雪はポカンとした。煉獄が紗雪にきちんと向き直り正座をする。
「君はいつも笑ってばかりで鬼殺への責任感を正直初めは疑いもした。だが君は傷付いても決して立ち止まらず前を向き続け、その明るさを失わない」
「…ど、どぉも」
そんな風に褒められたことがない紗雪は戸惑っていた。なんと返事をしたらいいかわからない。紗雪の困惑を察して煉獄が冗談めかして笑った。
「一時は俺は男色家だったのかと悩んだりもしたんだぞ」
「そ、それはぁ…知らぬ事とはいえ人様にとんだ悩みを…」
「俺が勝手に思っていた事だ。紗雪が気にすることではない」
「はぁ…えっとぉ〜、煉獄さぁん」
「なんだ?」
紗雪は指で頬をかくとヘラッとした笑みを浮かべた。
「本当に申し訳ないんですけどぉ、保留って事で良いですかぁ?」
「構わない。袖にされるとばかり思っていた」
煉獄がホッとした笑みを浮かべる。今更ながら煉獄の告白に込められた覚悟を感じ紗雪は姿勢をただした。
「煉獄さんの家は代々の炎柱でぇ、甘露寺さんが継子でぇ、伊黒さんがお友達でぇ…僕が知ってるのってこの程度なんですよねぇ」
「そうか、俺も君に関して知っているのは鳥柱で、誰とでもすぐ親しくなれる性格の持ち主と言うことだけだ。これからもっと知れたらと思っている」
「えへへぇ、じゃあまずはお友達から、と言うやつですねぇ」
へにょっと笑う紗雪に優しい笑みを浮かべる煉獄だった。
「どうぞ、ごゆっくりお休みください」
任務明け、紗雪は藤の家を訪ねていた。大きな温泉宿だった所を藤の家が隊士のためにと解放してくれている所なので、設備が整っていてありがたい。
藤の家の者に人払いを頼むと紗雪は服を脱ぎ、晒しを外した。
(はー、毎度の事ながら晒しってキツイよなぁ。立ち回りの時邪魔だし仕方ないんだけどねぇ)
傷を探し、打身だけで済んだのを確認すると湯に浸かる。
「湯に血が混ざっちゃ次の人に悪いからねぇ」
そう独り言を言うと暫くぶりの温泉を堪能する。
「は〜、生き返ったぁ」
温泉に浸かりほかほかになった紗雪は晒しに手を伸ばし…しかしそれを隊服と共に畳んだ。
(浴衣に丹前を着てればいっか)
その為にわざわざ大きめの丹前を借りたのだ。紗雪は鼻歌を歌いながら部屋へと戻る廊下を進んだ。ふとその足が一つの部屋で止まる。
「おぉ〜」
覗いた部屋は座布団を納めておく小さな納戸だった。所狭しと積まれた座布団の向こう側に僅かな隙間がある。
(こういう場所ってわくわくしちゃうんだよねぇ)
紗雪は周囲を見回すとひょいとその部屋に足を踏み入れた。座布団と壁の間にすっぽりとしゃがみ込む。
(あー、なんか落ち着くぅ〜。柱だからって皆んなが広い部屋や屋敷が好きって訳じゃないんだよなぁ)
柱になった時に与えられた鳥屋敷を思い出し紗雪はため息をついた。あんな何部屋もある屋敷はいらない。絶対にいらない。
「?」
カタン…と音がして誰かの入ってくる気配に紗雪は首を巡らせた。藤の家の者ならばこんな所にいるのを見つかるのはちょっと恥ずかしい。
「紗雪か」
「煉獄さん?」
しかし入ってきたのは煉獄だった。浴衣姿で風呂上がりのようだ。ちょっと慌てた様子の煉獄に紗雪が首を傾げた。
「任務お疲れ様です煉獄さん。どうしたんですかぁ?」
「いや…今、藤の家の娘達から逃げている所だ」
煉獄は言い難そうに答えると紗雪の横に座った。もう一度首を傾げる紗雪にため息をつく。
「俺の所に嫁いで来たいそうだ。その気はないと言ったんだがな」
「わーぁ、年頃の娘さんなのに凄いですねぇ」
要は既成事実を作ろうと言う事なのだろう。紗雪が感心した声をあげると煉獄が不服そうにした。
「ねぇ、いた?」
「どこに行かれたのかしら?」
「「…っ!」」
廊下から聞こえてきた声に煉獄と紗雪は気配を殺した。
「この納戸に隠れてるんじゃない?」
「紗雪すまん、もう少し奥に…」
煉獄は身を隠そうと紗雪に奥へ行くよう促した。その手が丹前の上から紗雪の胸を押す。
「ひゃっ」
「!!」
予想していなかった柔らかい感触に煉獄は驚いて手を引いた。ビックリして目をまん丸に見開いている紗雪と見つめ合う。
「君は…」
煉獄が何か言いかけたが戸の開く音がして、紗雪はひょいと煉獄を跨ぐとその肩を奥へと押し込んだ。
「誰か…いる?」
「いますよぉ〜」
娘の声に紗雪がのんびり返事を返した。驚いて固まる娘達の前に姿を見せる。
「どうかしましたかぁ?」
「あ、あの…いえ、紗雪様はどうしてこんな所に?」
娘達は紗雪をそう言う対象としては見ていないようで、言い淀んだ。紗雪がのほほんと答える。
「狭くて暗いところって落ち着くんですよねぇ。つい長居しちゃいました」
「そ、そうですか…あの、ここにどなたかいらっしゃいませんでしたか?」
どうやらかなり躍起になって探しているようである。紗雪がケラケラと笑い声を上げた。
「自分で言うのもなんだけど、こんな所に入ってくる変わり者そうは居ないんじゃないかなぁ?」
「…そうですよね。失礼致しました」
娘達は大人しく引き下がると何処かへと行ってしまった。紗雪がため息をついて煉獄を振り返る。暫くの後、煉獄はゆっくり立ち上がった。
「紗雪、君は女人なのか?」
「いきなりそれですかぁ?煉獄さぁん。触れない優しさがあってもいいと思うんですけどぉ」
紗雪はもう一度ため息をつくと、煉獄の隣に戻って腰掛けた。煉獄が並んで座る。
「そうですよぉ。僕は正真正銘の女です」
「なにか事情でも?」
「そんなものありませんよぉ」
紗雪はパタパタと手を振った。
「鬼を相手に立ち回るには動きにくかったので晒しを巻いてました。それにこの上背にこんな顔なので大体は相手が勝手に誤解するんですよねぇ」
「俺は紗雪、君を好いている」
「………へ?」
唐突な煉獄の告白に紗雪はポカンとした。煉獄が紗雪にきちんと向き直り正座をする。
「君はいつも笑ってばかりで鬼殺への責任感を正直初めは疑いもした。だが君は傷付いても決して立ち止まらず前を向き続け、その明るさを失わない」
「…ど、どぉも」
そんな風に褒められたことがない紗雪は戸惑っていた。なんと返事をしたらいいかわからない。紗雪の困惑を察して煉獄が冗談めかして笑った。
「一時は俺は男色家だったのかと悩んだりもしたんだぞ」
「そ、それはぁ…知らぬ事とはいえ人様にとんだ悩みを…」
「俺が勝手に思っていた事だ。紗雪が気にすることではない」
「はぁ…えっとぉ〜、煉獄さぁん」
「なんだ?」
紗雪は指で頬をかくとヘラッとした笑みを浮かべた。
「本当に申し訳ないんですけどぉ、保留って事で良いですかぁ?」
「構わない。袖にされるとばかり思っていた」
煉獄がホッとした笑みを浮かべる。今更ながら煉獄の告白に込められた覚悟を感じ紗雪は姿勢をただした。
「煉獄さんの家は代々の炎柱でぇ、甘露寺さんが継子でぇ、伊黒さんがお友達でぇ…僕が知ってるのってこの程度なんですよねぇ」
「そうか、俺も君に関して知っているのは鳥柱で、誰とでもすぐ親しくなれる性格の持ち主と言うことだけだ。これからもっと知れたらと思っている」
「えへへぇ、じゃあまずはお友達から、と言うやつですねぇ」
へにょっと笑う紗雪に優しい笑みを浮かべる煉獄だった。