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「今帰ったぜぇ」
実弥は玄関で靴を脱ぎながら声をかけた。パタパタと下の兄弟達が駆け寄ってくるのに頭を撫でる。
奥の部屋のドアが開き、顔を赤くした少女が出てきた。
「おかえりなさぁい。お兄ちゃん」
「お前、熱あんだろぉ。起きてくんじゃねぇよ」
実弥は椎名の額に手を当てると眉を顰めた。
「玄弥、粥の用意頼むわぁ。スポドリ買ってくるからよぉ」
「わかった。ほら姉ちゃん、布団入んなよ」
下の兄弟を散らしながら実弥は今帰って来た玄関をもう一度潜る。バイクに跨ると実弥は思った。
(しっかし今でも不思議だぜぇ。紗雪が俺の妹に生まれてくるなんてよぉ)
実弥は明日の大学の講義を如何すべきかを考えつつコンビニに向かった。
「ほれ、こまめに飲めよぉ」
「…ありがとぉ」
なんとかお粥を飲み込んでいる椎名の額に冷却シートを貼ってやると、実弥はベッドの端に腰掛けた。机の上に積まれた参考書を手に取る。
「根の詰めすぎだぁ。体壊してりゃ意味ねぇだろぉ」
「うう〜、だけどお兄ちゃんの行ってる大学が良いんだもん」
「まぁ、教師目指すならあそこは家から通えるしなぁ」
実弥は今、高校の教師になるべく大学に通っていた。椎名も同じように教師になりたいと受験勉強中だ。
(お前は俺と違って前の記憶がねぇんだから、無茶の仕方が間違ってんだよぉ)
実弥には物心ついた時から前世での記憶があった。むしろそれを当然として受け入れて生きて来たので、妹として椎名が生まれ、何も覚えていない事に驚いたぐらいだ。
(20年以上のアドバンテージがあんだからなぁ)
こればかりは人生経験の差だ。しかし記憶のない椎名に言えることではない。
「姉ちゃん、薬持って来たよ」
玄弥が心配そうな顔で薬と水を持って入って来た。こちらも小学校に入る頃には記憶を取り戻し、今世では姉がいる事に戸惑ったくちだ。
「ありあと…」
もはや口調さえ怪しくなって来た椎名に実弥と玄弥は眉を寄せた。
「薬飲んで寝ろぉ。とにかく今はそれが一番だぁ」
「ほら、姉ちゃん」
「…寝なきゃダメかなぁ」
玄弥の手を借りながら薬を飲んだ椎名がぽつりと呟いた。実弥の額に青筋が浮かぶ。
「あぁ!?」
「あー!待って待って兄貴!!姉ちゃん如何したんだよ?」
こういう時、玄弥は実弥より気が長くて頼りになる。椎名の顔を見ると、熱のせいかぼんやりとした顔をしていた。
「こういう時って…変な夢をみるから…」
「夢?どんな?」
「角のある人を斬る夢…風が吹いて、水が流れて、炎が…」
実弥と玄弥は僅かに目を見開いた。椎名の目はその夢を追っているかのように焦点が合っていない。
「凄く明るい炎が…渦巻いて、飲み込まれて、高く高く飛んでいくような…」
ぐしゃっと実弥は椎名の頭をかき混ぜた。そのまま枕に頭を押し付ける。
「寝ろ。変な映画でも見たんだろぉ」
「…そう、かなぁ…そうかもぉ」
言い終わると同時に椎名は寝入ってしまった。部屋を出るとすぐに玄弥が実弥に問いかける。
「兄貴、紗雪さん記憶が戻りそうになってるんじゃ…何で夢なんて」
「ばぁか、お前自分が記憶戻った時のこと覚えてねぇのかよぉ。3日も寝込んで大変だったろうが」
「そりゃ…まぁ」
総じて記憶を取り戻す年齢は早ければ早い方が体への負担が小さい。子供の脳の方が柔軟だからだろうと実弥は思っている。これは他の記憶持ちに聞いても同じ傾向だから間違いないはずだ。
「椎名は今、受験控えてんだぁ。負担はかけたくねぇ。それで無くとも風邪引き込んでんのに、記憶なんぞ戻ったらマジで死ぬぞぉ」
「確かにそうだけど…」
言い淀む玄弥が何を気にしているのかよく分かる実弥はため息をついた。
「煉獄の奴には黙っとけよぉ」
中学の時に再開した仲間はしっかりと記憶を取り戻しており、いつか椎名が記憶を取り戻すのを心待ちにしているのだ。
だがそれはそれ、これはこれ、である。実弥はもうかれこれ18年兄弟をしている椎名が可愛いのだ。兄として守ってやらなければ。
「あの…俺明日バイトのシフト煉獄さんと同じなんだけど…」
大型書店でバイトしている玄弥は顔色を悪くした。実弥も思わずため息をつく。
「…頑張れぇ」
そうとしか言いようのない実弥だった。
実弥は玄関で靴を脱ぎながら声をかけた。パタパタと下の兄弟達が駆け寄ってくるのに頭を撫でる。
奥の部屋のドアが開き、顔を赤くした少女が出てきた。
「おかえりなさぁい。お兄ちゃん」
「お前、熱あんだろぉ。起きてくんじゃねぇよ」
実弥は椎名の額に手を当てると眉を顰めた。
「玄弥、粥の用意頼むわぁ。スポドリ買ってくるからよぉ」
「わかった。ほら姉ちゃん、布団入んなよ」
下の兄弟を散らしながら実弥は今帰って来た玄関をもう一度潜る。バイクに跨ると実弥は思った。
(しっかし今でも不思議だぜぇ。紗雪が俺の妹に生まれてくるなんてよぉ)
実弥は明日の大学の講義を如何すべきかを考えつつコンビニに向かった。
「ほれ、こまめに飲めよぉ」
「…ありがとぉ」
なんとかお粥を飲み込んでいる椎名の額に冷却シートを貼ってやると、実弥はベッドの端に腰掛けた。机の上に積まれた参考書を手に取る。
「根の詰めすぎだぁ。体壊してりゃ意味ねぇだろぉ」
「うう〜、だけどお兄ちゃんの行ってる大学が良いんだもん」
「まぁ、教師目指すならあそこは家から通えるしなぁ」
実弥は今、高校の教師になるべく大学に通っていた。椎名も同じように教師になりたいと受験勉強中だ。
(お前は俺と違って前の記憶がねぇんだから、無茶の仕方が間違ってんだよぉ)
実弥には物心ついた時から前世での記憶があった。むしろそれを当然として受け入れて生きて来たので、妹として椎名が生まれ、何も覚えていない事に驚いたぐらいだ。
(20年以上のアドバンテージがあんだからなぁ)
こればかりは人生経験の差だ。しかし記憶のない椎名に言えることではない。
「姉ちゃん、薬持って来たよ」
玄弥が心配そうな顔で薬と水を持って入って来た。こちらも小学校に入る頃には記憶を取り戻し、今世では姉がいる事に戸惑ったくちだ。
「ありあと…」
もはや口調さえ怪しくなって来た椎名に実弥と玄弥は眉を寄せた。
「薬飲んで寝ろぉ。とにかく今はそれが一番だぁ」
「ほら、姉ちゃん」
「…寝なきゃダメかなぁ」
玄弥の手を借りながら薬を飲んだ椎名がぽつりと呟いた。実弥の額に青筋が浮かぶ。
「あぁ!?」
「あー!待って待って兄貴!!姉ちゃん如何したんだよ?」
こういう時、玄弥は実弥より気が長くて頼りになる。椎名の顔を見ると、熱のせいかぼんやりとした顔をしていた。
「こういう時って…変な夢をみるから…」
「夢?どんな?」
「角のある人を斬る夢…風が吹いて、水が流れて、炎が…」
実弥と玄弥は僅かに目を見開いた。椎名の目はその夢を追っているかのように焦点が合っていない。
「凄く明るい炎が…渦巻いて、飲み込まれて、高く高く飛んでいくような…」
ぐしゃっと実弥は椎名の頭をかき混ぜた。そのまま枕に頭を押し付ける。
「寝ろ。変な映画でも見たんだろぉ」
「…そう、かなぁ…そうかもぉ」
言い終わると同時に椎名は寝入ってしまった。部屋を出るとすぐに玄弥が実弥に問いかける。
「兄貴、紗雪さん記憶が戻りそうになってるんじゃ…何で夢なんて」
「ばぁか、お前自分が記憶戻った時のこと覚えてねぇのかよぉ。3日も寝込んで大変だったろうが」
「そりゃ…まぁ」
総じて記憶を取り戻す年齢は早ければ早い方が体への負担が小さい。子供の脳の方が柔軟だからだろうと実弥は思っている。これは他の記憶持ちに聞いても同じ傾向だから間違いないはずだ。
「椎名は今、受験控えてんだぁ。負担はかけたくねぇ。それで無くとも風邪引き込んでんのに、記憶なんぞ戻ったらマジで死ぬぞぉ」
「確かにそうだけど…」
言い淀む玄弥が何を気にしているのかよく分かる実弥はため息をついた。
「煉獄の奴には黙っとけよぉ」
中学の時に再開した仲間はしっかりと記憶を取り戻しており、いつか椎名が記憶を取り戻すのを心待ちにしているのだ。
だがそれはそれ、これはこれ、である。実弥はもうかれこれ18年兄弟をしている椎名が可愛いのだ。兄として守ってやらなければ。
「あの…俺明日バイトのシフト煉獄さんと同じなんだけど…」
大型書店でバイトしている玄弥は顔色を悪くした。実弥も思わずため息をつく。
「…頑張れぇ」
そうとしか言いようのない実弥だった。