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「不死川さぁん、冨岡さぁん、お加減いかがですかぁ?」
鬼舞辻無惨討伐の後、深傷を負っていた柱三人は蝶屋敷で療養していた。と言っても紗雪は他二人に比べれば手指を失っておらず、その意味では軽傷とも言えた。
左足の腱が切れ、腹には穴が開き、耳の一部が欠けたことをそう言うならば、だが。
「おぅ、まぁこんなもんだろぉ」
「そうだな」
同室で仲良く療養中の不死川と冨岡は穏やかな表情で紗雪を迎えてくれた。ヒョコヒョコと左足を庇って歩く紗雪を不死川が注意する。
「おい松葉杖使え。その歩き方は癖が残るからなぁ」
「えぇぇ?あれどうも慣れないんですよねぇ」
「不死川の言う通りだ紗雪。お前の体の為だ」
「…はぁい」
冨岡にまで言われてしまい紗雪は不承不承頷いた。近くの椅子を引き寄せると腰掛ける。
「炭治郎達の様子はどうだった?」
「のんびりしてましたよぉ。部屋から桜が見えるから、禰󠄀豆子ちゃんと眺めてましたぁ」
紗雪は足首を組むとトントンと床を踵で叩いた。何かを言いたそうな紗雪を不死川が促す。
「何か言いたい事があるなら言え。どうせつまんねぇ事だろうけど、聞いてやる」
「そうだな。時間は十分ある」
紗雪は何度か口を開けたり閉じたりして、漸く話し始めた。
「…痣も赫刀もどっちも駄目だったなぁと思ってぇ。僕、とんだ役立たずだっ…」
「不死川、お前デコピン得意か?」
冨岡が紗雪の言葉を遮って不死川に聞いた。不死川が左手を構える。
「おぉ、任せとけぇ」
「ちょ、ちょっ!聞いてくれんのかと思ったらそれぇ?」
紗雪は慌てて額を隠した。冨岡が笑う。
「紗雪、お前の正確無比な太刀筋で俺は何度も無惨の毒の鞭から逃れる事ができた」
「あぁ、あの速さで再生する無惨の鞭を落とし続ける事ができたのはお前のその速さがあってこそだぁ」
「栗花落が炭治郎に薬を打ち込めたのもお前が栗花落に向かう鞭を全て叩き落としたからだ。栗花落は両目を失わずに済んだ」
「…すいませぇん、変な事言いましたぁ」
自分だけが五体満足であることへの罪悪感から逃れたかっただけなのに気付いて紗雪は頭を下げた。
(情けない)
不死川がその頭をグリグリ抑える。
「今はお互い体を回復することに専念しようや。お前だってその足まだまだかかるんだろぉ?」
「あー、もう跳べないかもって言われました」
「重傷だろそれは」
眉を寄せる冨岡に紗雪は首を振った。
「もう良いかなぁって。無惨は倒れて鬼はいなくなったんだから」
「…そうだな」
「あぁ、本当になぁ」
三人揃って窓の外を眺める。桜の花びらが病室の中にまで舞い込んできていた。
三ヶ月の療養の後、最後の柱合会議で鬼殺隊の解散を受け入れると並んで蝶屋敷へと帰路に着く。紗雪の足は普通に歩く分には完治していた。
「これからどうするよぉ」
「水の一門の隊士の今後を考えてやらねばならん。お館様もお力添えくださるそうだ」
「水の呼吸は隊士が多いから大変ですねぇ」
「風の奴らも考えてやらねぇとなぁ。ま、数は水の所ほどじゃないけどなぁ」
「そう言えば炭治郎はもう少ししたら家に戻るみたいですよぉ。禰󠄀豆子ちゃんと、善逸君と伊之助君とぉ」
紗雪の顔を冨岡がチラリと見た。
「皆さんお帰りなさいませ。鳥柱様、今日が最後の検診になります。今お時間宜しいですか?」
「はぁい。どうやら僕が一抜けみたいですねぇ」
「また顔出せよぉ」
アオイに呼ばれた紗雪は不死川と冨岡に手を振ると立ち去った。その後ろ姿をじっと見つめる冨岡に不死川が眉を寄せる。
「どうしたぁ?」
「…不死川、話がある。宇髄も呼ぼう」
冨岡は病室に戻ると筆を手に取った。
鬼舞辻無惨討伐の後、深傷を負っていた柱三人は蝶屋敷で療養していた。と言っても紗雪は他二人に比べれば手指を失っておらず、その意味では軽傷とも言えた。
左足の腱が切れ、腹には穴が開き、耳の一部が欠けたことをそう言うならば、だが。
「おぅ、まぁこんなもんだろぉ」
「そうだな」
同室で仲良く療養中の不死川と冨岡は穏やかな表情で紗雪を迎えてくれた。ヒョコヒョコと左足を庇って歩く紗雪を不死川が注意する。
「おい松葉杖使え。その歩き方は癖が残るからなぁ」
「えぇぇ?あれどうも慣れないんですよねぇ」
「不死川の言う通りだ紗雪。お前の体の為だ」
「…はぁい」
冨岡にまで言われてしまい紗雪は不承不承頷いた。近くの椅子を引き寄せると腰掛ける。
「炭治郎達の様子はどうだった?」
「のんびりしてましたよぉ。部屋から桜が見えるから、禰󠄀豆子ちゃんと眺めてましたぁ」
紗雪は足首を組むとトントンと床を踵で叩いた。何かを言いたそうな紗雪を不死川が促す。
「何か言いたい事があるなら言え。どうせつまんねぇ事だろうけど、聞いてやる」
「そうだな。時間は十分ある」
紗雪は何度か口を開けたり閉じたりして、漸く話し始めた。
「…痣も赫刀もどっちも駄目だったなぁと思ってぇ。僕、とんだ役立たずだっ…」
「不死川、お前デコピン得意か?」
冨岡が紗雪の言葉を遮って不死川に聞いた。不死川が左手を構える。
「おぉ、任せとけぇ」
「ちょ、ちょっ!聞いてくれんのかと思ったらそれぇ?」
紗雪は慌てて額を隠した。冨岡が笑う。
「紗雪、お前の正確無比な太刀筋で俺は何度も無惨の毒の鞭から逃れる事ができた」
「あぁ、あの速さで再生する無惨の鞭を落とし続ける事ができたのはお前のその速さがあってこそだぁ」
「栗花落が炭治郎に薬を打ち込めたのもお前が栗花落に向かう鞭を全て叩き落としたからだ。栗花落は両目を失わずに済んだ」
「…すいませぇん、変な事言いましたぁ」
自分だけが五体満足であることへの罪悪感から逃れたかっただけなのに気付いて紗雪は頭を下げた。
(情けない)
不死川がその頭をグリグリ抑える。
「今はお互い体を回復することに専念しようや。お前だってその足まだまだかかるんだろぉ?」
「あー、もう跳べないかもって言われました」
「重傷だろそれは」
眉を寄せる冨岡に紗雪は首を振った。
「もう良いかなぁって。無惨は倒れて鬼はいなくなったんだから」
「…そうだな」
「あぁ、本当になぁ」
三人揃って窓の外を眺める。桜の花びらが病室の中にまで舞い込んできていた。
三ヶ月の療養の後、最後の柱合会議で鬼殺隊の解散を受け入れると並んで蝶屋敷へと帰路に着く。紗雪の足は普通に歩く分には完治していた。
「これからどうするよぉ」
「水の一門の隊士の今後を考えてやらねばならん。お館様もお力添えくださるそうだ」
「水の呼吸は隊士が多いから大変ですねぇ」
「風の奴らも考えてやらねぇとなぁ。ま、数は水の所ほどじゃないけどなぁ」
「そう言えば炭治郎はもう少ししたら家に戻るみたいですよぉ。禰󠄀豆子ちゃんと、善逸君と伊之助君とぉ」
紗雪の顔を冨岡がチラリと見た。
「皆さんお帰りなさいませ。鳥柱様、今日が最後の検診になります。今お時間宜しいですか?」
「はぁい。どうやら僕が一抜けみたいですねぇ」
「また顔出せよぉ」
アオイに呼ばれた紗雪は不死川と冨岡に手を振ると立ち去った。その後ろ姿をじっと見つめる冨岡に不死川が眉を寄せる。
「どうしたぁ?」
「…不死川、話がある。宇髄も呼ぼう」
冨岡は病室に戻ると筆を手に取った。