短編
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(今日は収穫無しか)
山の中に続く暗い街道で煉獄は足を止めた。鬼の気配どころか獣の気配もない暗闇は静まり返っている。
「どうするか…」
来た道を戻っても、このまま行っても鬼に出会える気がしない。
(こう言うときは駄目だな)
煉獄は小さくため息をついた。次の瞬間、頭上の木の上を黒い影が飛び過ぎて行った。月明かりに爪と牙が反射し、煉獄が走り出す。
「よもやよもやだ!」
当てにならない自分の勘に煉獄はそう吐き捨てた。鬼が木から木へと跳んでいく。
「速いな!」
煉獄が足に力を込めたその時、頭上を飛び越えていくもう一つの影が現れた。自分を超え悠々と走っていく背中に滅の文字。
「まぁてぇぇぇぇっ!」
現れた隊士は日輪刀を抜くと、地面を力一杯踏み込んだ。
ーー鳥の呼吸 伍ノ型 黒鳶(くろとび)ーー
「!!」
(呼吸を使うのか!)
足元を抉る勢いで切り出すと一足飛びに鬼との間合いを詰める。日輪刀が鬼の首にかかった。
(獲ったか!)
「あっ」
隊士は直前で体制を崩すと技の勢いを殺しきれず地面を勢いよく転がった。慌てて立ち上がるが目前に鬼の爪が迫る。
「!!」
ーー炎の呼吸 壱ノ型 不知火ーー
「………っ」
暗闇に炎が舞い鬼の首が高く飛ぶ。鬼が塵となるのを見届けた煉獄は血振りをすると刀を納めた。
「大丈夫か…っ!?」
煉獄が振り返ると隊士が自分に向かって刀を振おうとしていた。ぎょっとする煉獄に隊士が叫ぶ。
「屈めぇ!!」
「っ!!」
ーー鳥の呼吸 弍ノ型 舞白鷺ーー
煉獄の下げた頭スレスレを隊士の刀が翻る。その刃はもう一体の鬼の首を正確に切り落としていた。
(もう一体いたの、か!?)
「うおっ!」
「わぁっ!!」
またしても勢いを殺せず煉獄に突っ込む隊士ごと地面に転がる。隊士の頭を庇うように受け身を取った煉獄はそこでようやく隊士の顔を見た。
(女?いや…男、か?)
猫のように細い目に顎の線までの黒髪。ひょろりと鍛え損ねた体躯は男女どちらにでも取れるものだった。
「ご、こめんなさぁい!僕まだこの呼吸使いこなせてなくてぇ」
「いや!見事な呼吸だった!!2体目の鬼では助けられたな!!」
「こちらこそぉ。今避けますねぇ」
よいしょと立ち上がった隊士の手を借り煉獄も立ち上がる。隊士は自分より頭1つ小さかった。
「俺は煉獄杏寿郎だ!君の名を聞いても良いだろうか!?」
「紗雪椎名って言いますぅ。巻き込んじゃってごめんなさい」
ペコリと頭を下げる紗雪が幼く見え、煉獄はふっと笑うとその頭を撫でた。
「俺とて鬼殺隊士だ。鬼の討伐に巻き込まれたはないだろう?」
「おぉ、それもそうですねぇ」
ポムチと手を叩いて納得する紗雪が目を輝かせた。
「それにしても煉獄さんの炎の呼吸は凄かったですねぇ。あんなに綺麗な炎初めて見ましたぁ」
「ありがとう!君の呼吸も荒削りだが素晴らしい!!独学なのか?」
煉獄が尋ねると紗雪がみるみる萎んだ。あまりの変化に煉獄が戸惑う。
「す、すまん!何かおかしなことを言っただろうか!?」
「いいえー。ただ、そうなんですよねぇ。独学なんですよぉ」
「う、うむ」
のんびりした喋りに煉獄の力も思わず抜けていく。
「風の一門の育手にお世話になってたんですけどぉ。高齢だったので亡くなられてしまって…教わったのは基礎だけなんですよねぇ」
「基礎だけで自分の呼吸を作り出したなら凄いことだ」
「ありがとうございますぅ。でもやっぱりどうもこぅ…うまく使えてない。煉獄さん風に言うと荒削りって言うんですかぁ?さっきみたいに転んだり空回ったり」
「なるほど」
いつの間にか二人はその場に座り込んで話していた。煉獄が自分の鍛錬をいくつか上げて勧める。
「紗雪は足も速いし刀にもその速さが十分に乗っている。体幹を鍛えそれを生かしてはどうだろうか」
「なるほどぉ」
紗雪は両の拳を握ると意気込んだ。
「ありがとうございますぅ!もう少し色々試してみますねぇ」
「うむ!その意気だ!!」
「北北西ー!北北西ヘ迎エー!!」
鎹鴉の声に二人はバッと立ち上がると空を見上げた。月を背にした姿に紗雪が笑う。
「僕の鎹鴉ですねぇ。行かなくっちゃ」
「俺も行こうか?」
煉獄の思いもよらない提案に紗雪は目をパチリと開くと首を振った。
「僕の任務ですからぁ。じゃあ煉獄さぁん、またねぇ」
それだけ言うと高く高く跳びあがる。月を背負った後ろ姿が見えなくなるまで見送ると、煉獄は来た道を戻り始めた。
(綺麗な炎か…初めて言われたな)
炎の呼吸の書物だけを師にやってきた事が報われた気がして煉獄は微笑んだ。
「む!夜が明けるな!!」
明るんできた空に負けない明るい気分で家路に着く煉獄であった。
山の中に続く暗い街道で煉獄は足を止めた。鬼の気配どころか獣の気配もない暗闇は静まり返っている。
「どうするか…」
来た道を戻っても、このまま行っても鬼に出会える気がしない。
(こう言うときは駄目だな)
煉獄は小さくため息をついた。次の瞬間、頭上の木の上を黒い影が飛び過ぎて行った。月明かりに爪と牙が反射し、煉獄が走り出す。
「よもやよもやだ!」
当てにならない自分の勘に煉獄はそう吐き捨てた。鬼が木から木へと跳んでいく。
「速いな!」
煉獄が足に力を込めたその時、頭上を飛び越えていくもう一つの影が現れた。自分を超え悠々と走っていく背中に滅の文字。
「まぁてぇぇぇぇっ!」
現れた隊士は日輪刀を抜くと、地面を力一杯踏み込んだ。
ーー鳥の呼吸 伍ノ型 黒鳶(くろとび)ーー
「!!」
(呼吸を使うのか!)
足元を抉る勢いで切り出すと一足飛びに鬼との間合いを詰める。日輪刀が鬼の首にかかった。
(獲ったか!)
「あっ」
隊士は直前で体制を崩すと技の勢いを殺しきれず地面を勢いよく転がった。慌てて立ち上がるが目前に鬼の爪が迫る。
「!!」
ーー炎の呼吸 壱ノ型 不知火ーー
「………っ」
暗闇に炎が舞い鬼の首が高く飛ぶ。鬼が塵となるのを見届けた煉獄は血振りをすると刀を納めた。
「大丈夫か…っ!?」
煉獄が振り返ると隊士が自分に向かって刀を振おうとしていた。ぎょっとする煉獄に隊士が叫ぶ。
「屈めぇ!!」
「っ!!」
ーー鳥の呼吸 弍ノ型 舞白鷺ーー
煉獄の下げた頭スレスレを隊士の刀が翻る。その刃はもう一体の鬼の首を正確に切り落としていた。
(もう一体いたの、か!?)
「うおっ!」
「わぁっ!!」
またしても勢いを殺せず煉獄に突っ込む隊士ごと地面に転がる。隊士の頭を庇うように受け身を取った煉獄はそこでようやく隊士の顔を見た。
(女?いや…男、か?)
猫のように細い目に顎の線までの黒髪。ひょろりと鍛え損ねた体躯は男女どちらにでも取れるものだった。
「ご、こめんなさぁい!僕まだこの呼吸使いこなせてなくてぇ」
「いや!見事な呼吸だった!!2体目の鬼では助けられたな!!」
「こちらこそぉ。今避けますねぇ」
よいしょと立ち上がった隊士の手を借り煉獄も立ち上がる。隊士は自分より頭1つ小さかった。
「俺は煉獄杏寿郎だ!君の名を聞いても良いだろうか!?」
「紗雪椎名って言いますぅ。巻き込んじゃってごめんなさい」
ペコリと頭を下げる紗雪が幼く見え、煉獄はふっと笑うとその頭を撫でた。
「俺とて鬼殺隊士だ。鬼の討伐に巻き込まれたはないだろう?」
「おぉ、それもそうですねぇ」
ポムチと手を叩いて納得する紗雪が目を輝かせた。
「それにしても煉獄さんの炎の呼吸は凄かったですねぇ。あんなに綺麗な炎初めて見ましたぁ」
「ありがとう!君の呼吸も荒削りだが素晴らしい!!独学なのか?」
煉獄が尋ねると紗雪がみるみる萎んだ。あまりの変化に煉獄が戸惑う。
「す、すまん!何かおかしなことを言っただろうか!?」
「いいえー。ただ、そうなんですよねぇ。独学なんですよぉ」
「う、うむ」
のんびりした喋りに煉獄の力も思わず抜けていく。
「風の一門の育手にお世話になってたんですけどぉ。高齢だったので亡くなられてしまって…教わったのは基礎だけなんですよねぇ」
「基礎だけで自分の呼吸を作り出したなら凄いことだ」
「ありがとうございますぅ。でもやっぱりどうもこぅ…うまく使えてない。煉獄さん風に言うと荒削りって言うんですかぁ?さっきみたいに転んだり空回ったり」
「なるほど」
いつの間にか二人はその場に座り込んで話していた。煉獄が自分の鍛錬をいくつか上げて勧める。
「紗雪は足も速いし刀にもその速さが十分に乗っている。体幹を鍛えそれを生かしてはどうだろうか」
「なるほどぉ」
紗雪は両の拳を握ると意気込んだ。
「ありがとうございますぅ!もう少し色々試してみますねぇ」
「うむ!その意気だ!!」
「北北西ー!北北西ヘ迎エー!!」
鎹鴉の声に二人はバッと立ち上がると空を見上げた。月を背にした姿に紗雪が笑う。
「僕の鎹鴉ですねぇ。行かなくっちゃ」
「俺も行こうか?」
煉獄の思いもよらない提案に紗雪は目をパチリと開くと首を振った。
「僕の任務ですからぁ。じゃあ煉獄さぁん、またねぇ」
それだけ言うと高く高く跳びあがる。月を背負った後ろ姿が見えなくなるまで見送ると、煉獄は来た道を戻り始めた。
(綺麗な炎か…初めて言われたな)
炎の呼吸の書物だけを師にやってきた事が報われた気がして煉獄は微笑んだ。
「む!夜が明けるな!!」
明るんできた空に負けない明るい気分で家路に着く煉獄であった。
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