四章
夢小説設定
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「不躾な呼び出しに応じてくれて感謝する」
「…面と向かって言葉を交わすのは初めてかしらね」
椎名は音屋敷で愼寿郎と向かい合っていた。天元に手紙で呼び出され来てみれば袴姿の愼寿郎が待ち構えていて現在に至る。
きたるべき決戦に備え始まる柱稽古の為に勘を取り戻したい愼寿郎からのたっての願いだった。
「柱稽古の前に怪我とか勘弁だぜ?」
「あぁ」
「分かってるわよ」
天元が投げ寄越した木刀を持つと正対して構える愼寿郎に対し椎名は右手に木刀を握ると自然な形で立った。
「構えないのか?」
「親子ねぇ」
杏寿郎と手合わせした時にもされた質問に椎名は小さく笑うとその懐に一気に飛び込んだ。木刀を握る手元を狙うが軽くいなされる。打ち込まれる一撃一撃の重さに椎名は眉を寄せた。
「ねぇ、ちょっと!絶対年齢詐称してると思うんだけど?」
「人を指差すな」
「間違いなく四十を超えたおっさんだから安心しろよ」
天元に言い切られ釈然としないまま両手で木刀を構え直す。椎名は再び深く懐に入り込むと、素早く横に飛んだ。
「!?」
ーー水の呼吸 壱ノ型 水面斬りーー
ーー炎の呼吸 参ノ型 気炎万象ーー
椎名の水の呼吸を愼寿郎の炎の呼吸が打ち消す。椎名は小さく唇を噛んだ。
(簡単に防がれるとか腹立つ)
何百年も現役の剣士をやっているこちらの立場も考えて欲しいところだ。鍔迫り合いで力比べをする気のない椎名は素早く後ろに下がった。
愼寿郎がそれを許さず追撃する。
ーー炎の呼吸 壱ノ型 不知火ーー
「っ!」
人差し指を横に滑らせると人間大の石板が幾つも愼寿郎の前に現れる。豆腐を切るかのような滑らかさで愼寿郎はそれらを全て斬り伏せた。
(木刀よね!?)
椎名の驚愕を他所に突っ込んで来る愼寿郎の刀を椎名は正面から受けた。ビリビリと手の痺れるような衝撃に歯を食いしばる。
(あぁもう、本当に嫌いよ)
柱を退いてから数年は経っているのに衰えた風を見せない技と力。それは杏寿郎が憧れ目標としていたそれだ。それを何故今、杏寿郎ではなく椎名が見ているのか。
(大っ嫌いよ)
何故杏寿郎があそこまで強く父を尊敬していたのか、その理由に気付いて椎名の目に涙が浮かんだ。愼寿郎がギョッとして身をこわばらせた隙をついて打ち込むがヒラリと後ろに飛んでかわされる。
「な、何で泣くんだ!泣く必要はないだろう!!」
「うるさいわね!こっちは色々と傷心中なのよ!!」
やけくそ気味に怒鳴ると手合わせする気が失せてしまい椎名は木刀を手放した。
「あー、やだやだ!ずっとやさぐれてた癖に!修行も何もしてなかった癖に!全集中の常中は止めた事無いとか!!言動不一致!!へそ曲がり!捻くれ者!!」
「派手にくさすなぁお前」
「………」
頰を引き攣らせ、しかし反論できず愼寿郎は口を閉ざした。女の癇癪に口を挟むべからずだ。
「道標になる気がないならいっそもっと駄目になれば良かったのよ!そんな強い癖に!もっと出来る子の癖に!」
「…褒められてるのか?貶されてるのか?」
「安心しろよ旦那。力一杯貶されてるから」
宇髄の台詞に愼寿郎はしばらく沈黙すると深々と頭を下げた。あまりの驚きに椎名は言葉が喉に詰まった。
「…っ!」
「すまなかった。君の言う通りだ。俺が不甲斐ないばかりに杏寿郎と君の未来を奪ってしまった。本当にすまない」
ピタリと黙ってしまった椎名に宇髄は視線をやった。途端にギョッとして狼狽える。椎名は歯を食いしばったままボロボロと涙を流していた。
「お、おい…」
「何謝ってるのよ!こんなのただの八つ当たりじゃ無い!!理不尽なこと言われてるんだからもっと怒りなさいよ!!」
「お前はどんな返事を期待しとるんだ!?」
「うるさい!ツンデレ!!」
沢山泣いて不本意ながら愼寿郎に慰められて、漸く椎名の涙は乾いたのだった。
「…面と向かって言葉を交わすのは初めてかしらね」
椎名は音屋敷で愼寿郎と向かい合っていた。天元に手紙で呼び出され来てみれば袴姿の愼寿郎が待ち構えていて現在に至る。
きたるべき決戦に備え始まる柱稽古の為に勘を取り戻したい愼寿郎からのたっての願いだった。
「柱稽古の前に怪我とか勘弁だぜ?」
「あぁ」
「分かってるわよ」
天元が投げ寄越した木刀を持つと正対して構える愼寿郎に対し椎名は右手に木刀を握ると自然な形で立った。
「構えないのか?」
「親子ねぇ」
杏寿郎と手合わせした時にもされた質問に椎名は小さく笑うとその懐に一気に飛び込んだ。木刀を握る手元を狙うが軽くいなされる。打ち込まれる一撃一撃の重さに椎名は眉を寄せた。
「ねぇ、ちょっと!絶対年齢詐称してると思うんだけど?」
「人を指差すな」
「間違いなく四十を超えたおっさんだから安心しろよ」
天元に言い切られ釈然としないまま両手で木刀を構え直す。椎名は再び深く懐に入り込むと、素早く横に飛んだ。
「!?」
ーー水の呼吸 壱ノ型 水面斬りーー
ーー炎の呼吸 参ノ型 気炎万象ーー
椎名の水の呼吸を愼寿郎の炎の呼吸が打ち消す。椎名は小さく唇を噛んだ。
(簡単に防がれるとか腹立つ)
何百年も現役の剣士をやっているこちらの立場も考えて欲しいところだ。鍔迫り合いで力比べをする気のない椎名は素早く後ろに下がった。
愼寿郎がそれを許さず追撃する。
ーー炎の呼吸 壱ノ型 不知火ーー
「っ!」
人差し指を横に滑らせると人間大の石板が幾つも愼寿郎の前に現れる。豆腐を切るかのような滑らかさで愼寿郎はそれらを全て斬り伏せた。
(木刀よね!?)
椎名の驚愕を他所に突っ込んで来る愼寿郎の刀を椎名は正面から受けた。ビリビリと手の痺れるような衝撃に歯を食いしばる。
(あぁもう、本当に嫌いよ)
柱を退いてから数年は経っているのに衰えた風を見せない技と力。それは杏寿郎が憧れ目標としていたそれだ。それを何故今、杏寿郎ではなく椎名が見ているのか。
(大っ嫌いよ)
何故杏寿郎があそこまで強く父を尊敬していたのか、その理由に気付いて椎名の目に涙が浮かんだ。愼寿郎がギョッとして身をこわばらせた隙をついて打ち込むがヒラリと後ろに飛んでかわされる。
「な、何で泣くんだ!泣く必要はないだろう!!」
「うるさいわね!こっちは色々と傷心中なのよ!!」
やけくそ気味に怒鳴ると手合わせする気が失せてしまい椎名は木刀を手放した。
「あー、やだやだ!ずっとやさぐれてた癖に!修行も何もしてなかった癖に!全集中の常中は止めた事無いとか!!言動不一致!!へそ曲がり!捻くれ者!!」
「派手にくさすなぁお前」
「………」
頰を引き攣らせ、しかし反論できず愼寿郎は口を閉ざした。女の癇癪に口を挟むべからずだ。
「道標になる気がないならいっそもっと駄目になれば良かったのよ!そんな強い癖に!もっと出来る子の癖に!」
「…褒められてるのか?貶されてるのか?」
「安心しろよ旦那。力一杯貶されてるから」
宇髄の台詞に愼寿郎はしばらく沈黙すると深々と頭を下げた。あまりの驚きに椎名は言葉が喉に詰まった。
「…っ!」
「すまなかった。君の言う通りだ。俺が不甲斐ないばかりに杏寿郎と君の未来を奪ってしまった。本当にすまない」
ピタリと黙ってしまった椎名に宇髄は視線をやった。途端にギョッとして狼狽える。椎名は歯を食いしばったままボロボロと涙を流していた。
「お、おい…」
「何謝ってるのよ!こんなのただの八つ当たりじゃ無い!!理不尽なこと言われてるんだからもっと怒りなさいよ!!」
「お前はどんな返事を期待しとるんだ!?」
「うるさい!ツンデレ!!」
沢山泣いて不本意ながら愼寿郎に慰められて、漸く椎名の涙は乾いたのだった。