短編
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父が亡くなった。椎名が産屋敷家に来てから10年目のことだ。その間に椎名が知る炎柱と水柱も居なくなり、椎名のことを知るのは産屋敷家の人間とほんの一握りの隠だけになってしまった。
椎名は葬儀には顔を見せなかった。隠の中には薄情だと言う者もいたが、私は知っている。椎名は父の墓の前で泣いていた。永いた時を生きる彼女にとって私達の生はあまりに短いのだろう。
父の葬儀を終えると私はすぐに妻を娶った。椎名は驚いていたが、この国では普通の事だ。当主となりまず私がした事は鬼殺隊の組織としての強化だった。
幼い頃椎名から聞いていたギルドなる組織の話を参考に、専門性により人をわけその役割を細かく分担する。
刀鍛冶に関しては昔からのものを活かし、秘匿性を高くした。里が襲撃されないよう空の里をいくつも用意し、場所を点々とするようした。それ以外にも鬼殺以外の役割を果たす隠の人員を増強し隊士は鬼殺にのみ集中出来るよう計らう。これに関してはまだこれから人員を確保しなければ。とにかく鬼殺任務の先で死ぬ隊士が多い。
椎名は前の水柱と炎柱が死んだ後、特に隊士との交流は持っていなかった。私も特に勧めるような事もしていない。それに関して椎名からは何も言われなかった。独りでいることに慣れているようにも思える。
「はぁ」
思わずため息が漏れた。なさればならない事があまりに多い。キャッキャと庭から幼い笑い声がして私は顔を上げた。
2歳になる我が子、峰弥哉(ふみや)が椎名と遊んでいる。その様子にふと気がほぐれた。
「じゃー」
「冷たい冷たい」
峰弥哉が水を椎名の腕にかける。椎名は笑うばかりで怒る気配がない。濡れた服を簡単に絞るとパンと叩いた。
(…ん?)
そう言えば椎名の服は傷まないな、と思い至った。洗っても他のどの服より早く乾き、柔らかく伸縮性がある。
「………椎名」
私は立ち上がると椎名に声をかけた。私の直感通りならこれは隊士を守る大きな力になる。
私の考えを話すと椎名は二つ返事で了承してくれた。隠の中から機織りの経験がある者や職人に伝手のある者を集めると、和裁担当の部門を作る。椎名の服を布に戻した物を与えると私はこう指示を出した。
「外つ国から来た協力者から譲り受けた布地だ。破れにくく、柔らかく、驚くほど速く乾く。この布地を和裁部門のもので再現して欲しい」
「再現でございますか?提供してもらう事は」
「これは隊士のみならず隠、刀鍛冶、鬼殺隊に関わる全ての者に隊服として与える物だ。膨大な数になる。自分達で作れるようにならねばならぬし、見本になる布地はこれしか無い」
「これしか…」
部門の長に任命した者が固唾を飲む。椎名は言えば他の布地も分けてくれただろう。しかし「この国の事はこの国の人間が解決すべき」だ。
こうして隊服を作るための試行錯誤が始まった。椎名から譲り受けた布地を一寸程の大きさに切り分け、試作と比べていく。作っては破れ、作っては千切れ、試作しているうちに椎名の布には燃えにくい性質がある事もわかった。
より難関になって隊服作りは長い月日を費やしていったのだった。
椎名は葬儀には顔を見せなかった。隠の中には薄情だと言う者もいたが、私は知っている。椎名は父の墓の前で泣いていた。永いた時を生きる彼女にとって私達の生はあまりに短いのだろう。
父の葬儀を終えると私はすぐに妻を娶った。椎名は驚いていたが、この国では普通の事だ。当主となりまず私がした事は鬼殺隊の組織としての強化だった。
幼い頃椎名から聞いていたギルドなる組織の話を参考に、専門性により人をわけその役割を細かく分担する。
刀鍛冶に関しては昔からのものを活かし、秘匿性を高くした。里が襲撃されないよう空の里をいくつも用意し、場所を点々とするようした。それ以外にも鬼殺以外の役割を果たす隠の人員を増強し隊士は鬼殺にのみ集中出来るよう計らう。これに関してはまだこれから人員を確保しなければ。とにかく鬼殺任務の先で死ぬ隊士が多い。
椎名は前の水柱と炎柱が死んだ後、特に隊士との交流は持っていなかった。私も特に勧めるような事もしていない。それに関して椎名からは何も言われなかった。独りでいることに慣れているようにも思える。
「はぁ」
思わずため息が漏れた。なさればならない事があまりに多い。キャッキャと庭から幼い笑い声がして私は顔を上げた。
2歳になる我が子、峰弥哉(ふみや)が椎名と遊んでいる。その様子にふと気がほぐれた。
「じゃー」
「冷たい冷たい」
峰弥哉が水を椎名の腕にかける。椎名は笑うばかりで怒る気配がない。濡れた服を簡単に絞るとパンと叩いた。
(…ん?)
そう言えば椎名の服は傷まないな、と思い至った。洗っても他のどの服より早く乾き、柔らかく伸縮性がある。
「………椎名」
私は立ち上がると椎名に声をかけた。私の直感通りならこれは隊士を守る大きな力になる。
私の考えを話すと椎名は二つ返事で了承してくれた。隠の中から機織りの経験がある者や職人に伝手のある者を集めると、和裁担当の部門を作る。椎名の服を布に戻した物を与えると私はこう指示を出した。
「外つ国から来た協力者から譲り受けた布地だ。破れにくく、柔らかく、驚くほど速く乾く。この布地を和裁部門のもので再現して欲しい」
「再現でございますか?提供してもらう事は」
「これは隊士のみならず隠、刀鍛冶、鬼殺隊に関わる全ての者に隊服として与える物だ。膨大な数になる。自分達で作れるようにならねばならぬし、見本になる布地はこれしか無い」
「これしか…」
部門の長に任命した者が固唾を飲む。椎名は言えば他の布地も分けてくれただろう。しかし「この国の事はこの国の人間が解決すべき」だ。
こうして隊服を作るための試行錯誤が始まった。椎名から譲り受けた布地を一寸程の大きさに切り分け、試作と比べていく。作っては破れ、作っては千切れ、試作しているうちに椎名の布には燃えにくい性質がある事もわかった。
より難関になって隊服作りは長い月日を費やしていったのだった。