一章

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 私のいた国には冒険者制度というものがあった。近隣の国にもあったところを見ると、あの辺りでは普通の事だったのだろうと思う。
 冒険者とは簡単に言えば依頼を受けて金を稼ぐ自由業の事だ。旅する商人の護衛や害獣退治、手に入りにくい素材を取りに行ったりもする。
 腕に覚えのある者、普通の仕事からあぶれた者などがなる事が多く荒っぽい仕事だ。
 私達は白銀の森の一族と呼ばれ森の奥深くに住んでいた。寿命が驚くほど長く、人には無い力を持ち、身体能力も高い。血こそ必要ではあったが穏やかな性格の者が多く、森を守る代わりに様々な動物達から一滴二滴と僅かな血を受け取り共生して生きてきた。
 大抵の者は森の中で生きることを選んだ。様々な知識を取り入れ、それを研磨し精錬させることを好んだが、中には外の世界に興味を持ち森を出ていく者もいた。私もその一人だった。
 父と母は私と離れることを寂しがってはいたが、快く送り出してくれた。
 ――いつでも戻っておいで――
 そして私は長い間、本当に長い間冒険者として各地を巡った。
 巡って、巡って――そしてある日、運が尽きた。
 戦いの中で崖から落ちてそのまま海を彷徨った。
 何度か船乗りたちに助けられたりしながら、しかし国に戻ることも出来ず流れ着いたのがこの国だった。
 見たことの無い人、文化、言葉。
 途方に暮れた私が身の振り方に悩んでいた時、産屋敷の人間に拾われた。

「つまり椎名さんはならず者という事ですね」
「………」
 胡蝶に思いも寄らない一言で纏められ椎名は絶句した。
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