三章
夢小説設定
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「椎名も一緒に休もう」
風呂と食事を済ませた杏寿郎が千寿郎の隣に敷いた布団から上掛けを持ち上げて椎名を呼んだ。しかし椎名は千寿郎の枕元に腰かけると首を振った。
「繰り返すけど任務帰りは黙って寝なさい。体を休めないと千寿郎の風邪をもらっちゃうわよ」
「しかし…」
「それに千寿郎が目を覚ました時、驚かせたいの?」
「………」
確かに。杏寿郎は納得すると上掛けを戻した。眠る体制になった杏寿郎に椎名がニヤリと笑う。
「子守唄でも歌ってあげようか?」
「それは又今度是非に頼む」
『是非に』の部分に非常に力が入った返事が返ってくる。墓穴を掘ったかなと思いながら椎名は体を伸ばすと杏寿郎の髪に触れた。
「お休み杏寿郎」
「あぁ」
ぐいと椎名を引き寄せると口付ける。杏寿郎は満足気に笑うと目を閉じた。
「お休み椎名」
「………」
なんだか負けたような気分になりながら椎名は千寿郎の枕元に戻った。やがて静かな寝息を聞こえてきて表情を緩める。
(兄弟揃って同じ顔で寝てる)
これはなかなか贅沢な時間だと思いつつ椎名は二人を静かに見つめるのだった。
「……ぅん…」
千寿郎は朝日のまぶしさにゆっくりと目を開けた。昨日までの辛さが嘘のように体が軽い。
(…義姉上にずいぶん甘えた事を言ってしまった)
手を繋いでくれなどと幼子のようだ。千寿郎が両手で顔を覆っていると後ろから声がかけられた。
「千寿郎起きたのか?調子はどうだ?」
「えっ!?兄上?」
振り返った千寿郎は目を丸くした。隣に並んだ布団から上半身だけを起こし杏寿郎がこちらを覗き込んでいる。
「なんで…」
「お前の容体を案じていたらいっそ一緒に寝ろと椎名が言ってくれたのでな。勝手をしてすまなかったな」
「そ、そんな事は…」
千寿郎は首を振ると自分の兄を繁々と眺めた。兄と同じ部屋で眠るなどいつぶりだろう。嬉しくなって千寿郎はえへへと笑った。
「ご心配いただきありがとうございます兄上」
「うむ!回復してきたようで何よりだ!!」
「目が覚めたのね」
お膳を手に椎名が戻ってきた。千寿郎が自分で起き上ったのにほっとした顔をする。
「朝ご飯は食べられそう?」
「おはようございます義姉上。はい、食欲が出てきました」
杏寿郎が丹前を千寿郎の肩にかけ椎名が布団の横にお膳を置く。卵粥に味噌汁、香の物そして…。
「桃だ」
千寿郎はパッと表情を明るくした。それに杏寿郎が微笑む。椎名が匙を手に取った。
「義姉上!」
千寿郎が慌てて待ったをかける。杏寿郎と椎名はきょとんとした顔を見せた。
「どうしたの?千寿郎」
「流石に…自分で食べます」
千寿郎は大いに照れながら匙を受け取った。回復した今思い返せばただただ恥ずかしい。
「遠慮しなくていいのに」
「そうだぞ千寿郎!なんならこの兄が食べさせてやろう!」
「だ、大丈夫です!!」
千寿郎は慌てて粥を掬うとがぶっと口に入れた。
「あつっ!」
「あぁ、ほら!」
「大丈夫か!?千寿郎!!」
二人それぞれに水や手拭を差し出され千寿郎は嬉しくなって笑った。その笑顔に杏寿郎と椎名の顔にも笑みが浮かぶ。
「桃は一緒に食べましょう」
「千寿郎が全部食べていいんだぞ?」
「兄上と義姉上と一緒に食べたいんです」
3人で食べた桃を千寿郎は世界で一番美味しいと思った。
後日、桃の出所を兄から聞いた千寿郎は父の好物を沢山沢山作るのだった。
風呂と食事を済ませた杏寿郎が千寿郎の隣に敷いた布団から上掛けを持ち上げて椎名を呼んだ。しかし椎名は千寿郎の枕元に腰かけると首を振った。
「繰り返すけど任務帰りは黙って寝なさい。体を休めないと千寿郎の風邪をもらっちゃうわよ」
「しかし…」
「それに千寿郎が目を覚ました時、驚かせたいの?」
「………」
確かに。杏寿郎は納得すると上掛けを戻した。眠る体制になった杏寿郎に椎名がニヤリと笑う。
「子守唄でも歌ってあげようか?」
「それは又今度是非に頼む」
『是非に』の部分に非常に力が入った返事が返ってくる。墓穴を掘ったかなと思いながら椎名は体を伸ばすと杏寿郎の髪に触れた。
「お休み杏寿郎」
「あぁ」
ぐいと椎名を引き寄せると口付ける。杏寿郎は満足気に笑うと目を閉じた。
「お休み椎名」
「………」
なんだか負けたような気分になりながら椎名は千寿郎の枕元に戻った。やがて静かな寝息を聞こえてきて表情を緩める。
(兄弟揃って同じ顔で寝てる)
これはなかなか贅沢な時間だと思いつつ椎名は二人を静かに見つめるのだった。
「……ぅん…」
千寿郎は朝日のまぶしさにゆっくりと目を開けた。昨日までの辛さが嘘のように体が軽い。
(…義姉上にずいぶん甘えた事を言ってしまった)
手を繋いでくれなどと幼子のようだ。千寿郎が両手で顔を覆っていると後ろから声がかけられた。
「千寿郎起きたのか?調子はどうだ?」
「えっ!?兄上?」
振り返った千寿郎は目を丸くした。隣に並んだ布団から上半身だけを起こし杏寿郎がこちらを覗き込んでいる。
「なんで…」
「お前の容体を案じていたらいっそ一緒に寝ろと椎名が言ってくれたのでな。勝手をしてすまなかったな」
「そ、そんな事は…」
千寿郎は首を振ると自分の兄を繁々と眺めた。兄と同じ部屋で眠るなどいつぶりだろう。嬉しくなって千寿郎はえへへと笑った。
「ご心配いただきありがとうございます兄上」
「うむ!回復してきたようで何よりだ!!」
「目が覚めたのね」
お膳を手に椎名が戻ってきた。千寿郎が自分で起き上ったのにほっとした顔をする。
「朝ご飯は食べられそう?」
「おはようございます義姉上。はい、食欲が出てきました」
杏寿郎が丹前を千寿郎の肩にかけ椎名が布団の横にお膳を置く。卵粥に味噌汁、香の物そして…。
「桃だ」
千寿郎はパッと表情を明るくした。それに杏寿郎が微笑む。椎名が匙を手に取った。
「義姉上!」
千寿郎が慌てて待ったをかける。杏寿郎と椎名はきょとんとした顔を見せた。
「どうしたの?千寿郎」
「流石に…自分で食べます」
千寿郎は大いに照れながら匙を受け取った。回復した今思い返せばただただ恥ずかしい。
「遠慮しなくていいのに」
「そうだぞ千寿郎!なんならこの兄が食べさせてやろう!」
「だ、大丈夫です!!」
千寿郎は慌てて粥を掬うとがぶっと口に入れた。
「あつっ!」
「あぁ、ほら!」
「大丈夫か!?千寿郎!!」
二人それぞれに水や手拭を差し出され千寿郎は嬉しくなって笑った。その笑顔に杏寿郎と椎名の顔にも笑みが浮かぶ。
「桃は一緒に食べましょう」
「千寿郎が全部食べていいんだぞ?」
「兄上と義姉上と一緒に食べたいんです」
3人で食べた桃を千寿郎は世界で一番美味しいと思った。
後日、桃の出所を兄から聞いた千寿郎は父の好物を沢山沢山作るのだった。