三章
夢小説設定
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「………?」
ひやりとした感触に千寿郎は目を開けた。夕暮れに赤く染まる銀の髪が目に入る。千寿郎の布団の横に椎名が座っていた。
「…あね、う…え?」
「起こしちゃった?ごめんね千寿郎」
多少下がったとはいえまだ熱が高くぼんやりしている千寿郎の頬に手を当てる。ひんやりとした指先に千寿郎がほぅ…と息を吐いた。
「薬は出ているの?」
「何か食べてから…飲むように、と」
「あぁ、そう言えばお粥があったわね。食べられそう?」
隠が作っていってくれたのを思い出し椎名が尋ねる。千寿郎が頷くと椎名はすぐにお粥を取って戻ってきた。梅干しと漬物が載っていて食欲の無い千寿郎でも何とか食べられそうだ。千寿郎は椎名の手を借り何とか起き上った。
「すみません…ご迷惑を…」
「病人はつまらない事気にしないのよ」
はぁはぁと苦しげに息をする千寿郎に椎名は匙でお粥を掬うとそれを千寿郎の口元へ運んだ。
「え…」
「食べなさい」
「い、いえ…自分で…」
「そんなふらふらで何を言ってるの。さぁ」
言葉は淡々としているが心配そうな顔の椎名に千寿郎は匙を口に入れた。ほんのり塩味のお粥が優しく胃の腑にしみる。
「美味しいです」
「そう、作った隠が喜ぶわ」
不思議なもので食べ物を口にすると千寿郎は体に少し力が戻った気分になった。しのぶが調薬してくれた苦い薬を飲むと横になる。
「義姉上はどうしてこちらに…?」
「杏寿郎に聞いたのよ。千寿郎が良くなるまでいるわ」
「…ありがとうございます。あの…」
体が弱っているときはどうしようもなく人恋しくなる。千寿郎は布団から手を伸ばすと遠慮がちに椎名にお願いした。
「手を繋いでて良いですか?」
「勿論よ」
椎名は優しく笑うと千寿郎の手を取った。ほっとした顔の千寿郎がやがて眠りにつく。
「お休み千寿郎」
その言葉に眠った千寿郎の口元が僅かに緩んだ。
カタン…と音がして椎名が障子戸の方を振り返った。夜の闇を背に杏寿郎が口元に指を立てながら入ってくる。椎名は少し腰を浮かせると千寿郎の枕元を譲った。
「お帰り杏寿郎」
「あぁ、今帰った。それで千寿郎はどうだろうか?」
千寿郎を起こさないよう顔を寄せ合い小声で話す。
「熱はもう少しというところね。食事も薬も取れてるから直に落ち着くと思うわ」
「そうか。世話をかけたな椎名」
ほっと表情を緩めた杏寿郎に椎名は目を細めた。本当にこの兄弟は微笑ましい。
「ところで」
「ん?」
椎名は杏寿郎が手にしている物に視線を落とした。
「なんで桃なんて持ってるの?」
「この部屋の前に置いてあった。隠が置いて行ったのかもしれん」
「いや、それは無いでしょ」
隠が持ってきたのならば炊事場にあるか切り分けて持ってくる。廊下に置き去りなど不審物案件である。
「…ふふ」
一日中廊下をウロウロしていた気配の事を思い出し椎名は笑った。杏寿郎が首を傾げる。
「どうした?」
「あなた達の父親って本当に不器用を絵に描いたような人よね」
「………」
椎名の言葉に杏寿郎は手の内の桃を見つめた。じわじわと温かな感情が湧きあがってきて頬が緩む。
「明日千寿郎に食べさせてやろう」
「そうね、炊事場に置いてくるわ。杏寿郎も休んで」
立ち上がろうとする椎名の手を杏寿郎が掴んだ。
「千寿郎には俺がついておく。椎名が休むと良い」
「だまらっしゃい任務帰りが。お風呂沸かすのに魔道具使わせてもらうわよ」
「しかし…」
杏寿郎は千寿郎をちらりと見た。良くなってきているとは言えやはり心配なのだろう。椎名は人差し指で杏寿郎の鼻を突いた。
「もういっそ千寿郎の横に布団敷いて寝たらいいわよ。お風呂と軽く食べるもの用意してくるからそっちは宜しく」
「あ、あぁ」
まさか鼻を突かれるとは思ってなかった杏寿郎はぽかんとした顔のまま自室へと戻った。
ひやりとした感触に千寿郎は目を開けた。夕暮れに赤く染まる銀の髪が目に入る。千寿郎の布団の横に椎名が座っていた。
「…あね、う…え?」
「起こしちゃった?ごめんね千寿郎」
多少下がったとはいえまだ熱が高くぼんやりしている千寿郎の頬に手を当てる。ひんやりとした指先に千寿郎がほぅ…と息を吐いた。
「薬は出ているの?」
「何か食べてから…飲むように、と」
「あぁ、そう言えばお粥があったわね。食べられそう?」
隠が作っていってくれたのを思い出し椎名が尋ねる。千寿郎が頷くと椎名はすぐにお粥を取って戻ってきた。梅干しと漬物が載っていて食欲の無い千寿郎でも何とか食べられそうだ。千寿郎は椎名の手を借り何とか起き上った。
「すみません…ご迷惑を…」
「病人はつまらない事気にしないのよ」
はぁはぁと苦しげに息をする千寿郎に椎名は匙でお粥を掬うとそれを千寿郎の口元へ運んだ。
「え…」
「食べなさい」
「い、いえ…自分で…」
「そんなふらふらで何を言ってるの。さぁ」
言葉は淡々としているが心配そうな顔の椎名に千寿郎は匙を口に入れた。ほんのり塩味のお粥が優しく胃の腑にしみる。
「美味しいです」
「そう、作った隠が喜ぶわ」
不思議なもので食べ物を口にすると千寿郎は体に少し力が戻った気分になった。しのぶが調薬してくれた苦い薬を飲むと横になる。
「義姉上はどうしてこちらに…?」
「杏寿郎に聞いたのよ。千寿郎が良くなるまでいるわ」
「…ありがとうございます。あの…」
体が弱っているときはどうしようもなく人恋しくなる。千寿郎は布団から手を伸ばすと遠慮がちに椎名にお願いした。
「手を繋いでて良いですか?」
「勿論よ」
椎名は優しく笑うと千寿郎の手を取った。ほっとした顔の千寿郎がやがて眠りにつく。
「お休み千寿郎」
その言葉に眠った千寿郎の口元が僅かに緩んだ。
カタン…と音がして椎名が障子戸の方を振り返った。夜の闇を背に杏寿郎が口元に指を立てながら入ってくる。椎名は少し腰を浮かせると千寿郎の枕元を譲った。
「お帰り杏寿郎」
「あぁ、今帰った。それで千寿郎はどうだろうか?」
千寿郎を起こさないよう顔を寄せ合い小声で話す。
「熱はもう少しというところね。食事も薬も取れてるから直に落ち着くと思うわ」
「そうか。世話をかけたな椎名」
ほっと表情を緩めた杏寿郎に椎名は目を細めた。本当にこの兄弟は微笑ましい。
「ところで」
「ん?」
椎名は杏寿郎が手にしている物に視線を落とした。
「なんで桃なんて持ってるの?」
「この部屋の前に置いてあった。隠が置いて行ったのかもしれん」
「いや、それは無いでしょ」
隠が持ってきたのならば炊事場にあるか切り分けて持ってくる。廊下に置き去りなど不審物案件である。
「…ふふ」
一日中廊下をウロウロしていた気配の事を思い出し椎名は笑った。杏寿郎が首を傾げる。
「どうした?」
「あなた達の父親って本当に不器用を絵に描いたような人よね」
「………」
椎名の言葉に杏寿郎は手の内の桃を見つめた。じわじわと温かな感情が湧きあがってきて頬が緩む。
「明日千寿郎に食べさせてやろう」
「そうね、炊事場に置いてくるわ。杏寿郎も休んで」
立ち上がろうとする椎名の手を杏寿郎が掴んだ。
「千寿郎には俺がついておく。椎名が休むと良い」
「だまらっしゃい任務帰りが。お風呂沸かすのに魔道具使わせてもらうわよ」
「しかし…」
杏寿郎は千寿郎をちらりと見た。良くなってきているとは言えやはり心配なのだろう。椎名は人差し指で杏寿郎の鼻を突いた。
「もういっそ千寿郎の横に布団敷いて寝たらいいわよ。お風呂と軽く食べるもの用意してくるからそっちは宜しく」
「あ、あぁ」
まさか鼻を突かれるとは思ってなかった杏寿郎はぽかんとした顔のまま自室へと戻った。