三章
夢小説設定
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「悪いわね、蔵を貸してもらって」
「構わない!今はもう使っていないものばかりだ!!」
「埃っぽかったので風通しをして少し掃除をしておきました」
杏寿郎と千寿郎、椎名は煉獄家の倉の中にいた。昼間だが日を通さない蔵の中は戸を閉めてしまえばしっとりと暗い。
照明の魔道具で灯りを取ると三人でそれっと敷物を広げた。
「それで椎名!一体何が始まるのだ?」
「兄上もご存知無いのですか!?」
「うむ!楽しみは取っておいた方が良いからな!」
揃って腰掛ける兄弟の楽しそうな様子に笑みが漏れる。椎名は少し離れた場所で人差し指を横に流すと細い杖の先に丸い球体のついたものを取り出した。
とん、と杖先で床を叩くと自立する。
地面に刺したわけでも無いのに倒れないそれに千寿郎が目を輝かせた。
「うわぁ!不思議です!!」
「摩訶不思議だな!しかし暗いところである必要はあったのか?」
「まだこれからよ」
気の早い杏寿郎に笑うと椎名は球体を二度叩いた。球体の中に夜空が広がったかと思うと、瞬く間に蔵の中全てが星空になる。
突然空に放り出されたような錯覚を起こし、千寿郎は兄にしがみついた。
「わぁっ!」
「これは…凄まじいな!千寿郎、大丈夫だ!顔を上げてみろ!」
「…凄い。綺麗ですね兄上!」
恐る恐る顔を上げた千寿郎は広がる景色に目を奪われた。大小様々な星が輝き時折流れ星も落ちて行く。千寿郎は杏寿郎にしがみついたままなのも忘れて魅入った。
「どう?なかなかの物でしょう?」
問題なく動いていることを確認すると敷物に戻ってきた椎名に杏寿郎が手を差し伸べる。が、千寿郎が興奮した様子で椎名の手を掴むと自分の方へ引き寄せた。
「義姉上!これは一体どう言う物なのですか!?どうして蔵の中に星空が!?これは本物なのですか!?」
「……」
伸ばした手の行先がなくなり杏寿郎が頭をかく。しかしその顔には嬉しそうな笑みが浮かんでいた。
椎名は千寿郎を挟む形で杏寿郎とは反対側に腰掛けた。手にしていた灯りを消すと、さらに夜空が濃くなる。
「これは星見の杖って言う道具よ。占星術を学ぶ為の勉強道具だったらしいわ」
「らしい、ですか?」
「譲り受けたものだから詳しく無いのよ。それより千寿郎、これは座ったままじゃなくこうして見るものなのよ」
トンと肩を押され千寿郎は敷物の上で仰向けに転がった。視界を占拠する星空にうっとりため息を漏らす。杏寿郎も椎名も同じように転がると仲良く川の字で空を見上げた。
「夜更かししている気分です!」
「ははっ!確かにそうだな!」
「時間感覚が無くなるわね」
星座やその由来の話をしながら三人はしばらく星を眺め続けた。やがて満足げな千寿郎を先頭に蔵から出てくる。椎名がはい、と杖を千寿郎に差し出した。
「えっ!?」
「気に入ってくれたみたいだしあげるわ」
「いいのか?」
貴重なものだろうと杏寿郎が尋ねる。椎名は頬に手を当てると困った顔をして見せた。
「正直なことを言えば荷物を整理していた時に出てきたやつで、存在を忘れてたぐらいなのよね」
産屋敷の役に立つとも思えないので持っている意味がない。
「だから喜んでくれる人が持ってた方が、それも喜ぶと思うのよ」
「兄上…」
遠慮する千寿郎に杏寿郎が頷いた。
「ありがたく頂戴しなさい」
パァッと千寿郎の顔が明るくなった。椎名から杖を受け取ると大事そうに抱える。
「ありがとうございます!大切にしますね!」
「上の球体は割れ物だから気をつけて」
「布団に包んで保管します!」
嬉しそうに歩いていく後ろで、杏寿郎が椎名の手をそっと握った。
「ありがとう椎名」
千寿郎のあんなに嬉しそうな顔は久しぶりに見た。杏寿郎の心も暖かく軽くなった気がする。
「どういたしまして」
杏寿郎と椎名は顔を見合わせると笑い合った。
「構わない!今はもう使っていないものばかりだ!!」
「埃っぽかったので風通しをして少し掃除をしておきました」
杏寿郎と千寿郎、椎名は煉獄家の倉の中にいた。昼間だが日を通さない蔵の中は戸を閉めてしまえばしっとりと暗い。
照明の魔道具で灯りを取ると三人でそれっと敷物を広げた。
「それで椎名!一体何が始まるのだ?」
「兄上もご存知無いのですか!?」
「うむ!楽しみは取っておいた方が良いからな!」
揃って腰掛ける兄弟の楽しそうな様子に笑みが漏れる。椎名は少し離れた場所で人差し指を横に流すと細い杖の先に丸い球体のついたものを取り出した。
とん、と杖先で床を叩くと自立する。
地面に刺したわけでも無いのに倒れないそれに千寿郎が目を輝かせた。
「うわぁ!不思議です!!」
「摩訶不思議だな!しかし暗いところである必要はあったのか?」
「まだこれからよ」
気の早い杏寿郎に笑うと椎名は球体を二度叩いた。球体の中に夜空が広がったかと思うと、瞬く間に蔵の中全てが星空になる。
突然空に放り出されたような錯覚を起こし、千寿郎は兄にしがみついた。
「わぁっ!」
「これは…凄まじいな!千寿郎、大丈夫だ!顔を上げてみろ!」
「…凄い。綺麗ですね兄上!」
恐る恐る顔を上げた千寿郎は広がる景色に目を奪われた。大小様々な星が輝き時折流れ星も落ちて行く。千寿郎は杏寿郎にしがみついたままなのも忘れて魅入った。
「どう?なかなかの物でしょう?」
問題なく動いていることを確認すると敷物に戻ってきた椎名に杏寿郎が手を差し伸べる。が、千寿郎が興奮した様子で椎名の手を掴むと自分の方へ引き寄せた。
「義姉上!これは一体どう言う物なのですか!?どうして蔵の中に星空が!?これは本物なのですか!?」
「……」
伸ばした手の行先がなくなり杏寿郎が頭をかく。しかしその顔には嬉しそうな笑みが浮かんでいた。
椎名は千寿郎を挟む形で杏寿郎とは反対側に腰掛けた。手にしていた灯りを消すと、さらに夜空が濃くなる。
「これは星見の杖って言う道具よ。占星術を学ぶ為の勉強道具だったらしいわ」
「らしい、ですか?」
「譲り受けたものだから詳しく無いのよ。それより千寿郎、これは座ったままじゃなくこうして見るものなのよ」
トンと肩を押され千寿郎は敷物の上で仰向けに転がった。視界を占拠する星空にうっとりため息を漏らす。杏寿郎も椎名も同じように転がると仲良く川の字で空を見上げた。
「夜更かししている気分です!」
「ははっ!確かにそうだな!」
「時間感覚が無くなるわね」
星座やその由来の話をしながら三人はしばらく星を眺め続けた。やがて満足げな千寿郎を先頭に蔵から出てくる。椎名がはい、と杖を千寿郎に差し出した。
「えっ!?」
「気に入ってくれたみたいだしあげるわ」
「いいのか?」
貴重なものだろうと杏寿郎が尋ねる。椎名は頬に手を当てると困った顔をして見せた。
「正直なことを言えば荷物を整理していた時に出てきたやつで、存在を忘れてたぐらいなのよね」
産屋敷の役に立つとも思えないので持っている意味がない。
「だから喜んでくれる人が持ってた方が、それも喜ぶと思うのよ」
「兄上…」
遠慮する千寿郎に杏寿郎が頷いた。
「ありがたく頂戴しなさい」
パァッと千寿郎の顔が明るくなった。椎名から杖を受け取ると大事そうに抱える。
「ありがとうございます!大切にしますね!」
「上の球体は割れ物だから気をつけて」
「布団に包んで保管します!」
嬉しそうに歩いていく後ろで、杏寿郎が椎名の手をそっと握った。
「ありがとう椎名」
千寿郎のあんなに嬉しそうな顔は久しぶりに見た。杏寿郎の心も暖かく軽くなった気がする。
「どういたしまして」
杏寿郎と椎名は顔を見合わせると笑い合った。