三章
夢小説設定
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杏寿郎と椎名は地方の温泉宿にいた。討伐が終わり束の間の休息だ。
窓のそばに腰掛け満月を見上げながら、杏寿郎は珍しく酒を傾けていた。椎名も杏寿郎の肩に寄りかかり月を見ている。
杯を空けた杏寿郎がふと椎名を振り返った。
「椎名は今、血はどうやって調達しているんだ?」
「唐突ね」
キョトンとした後クスリと笑う椎名の髪に頬擦りする。酔っ払い、と言いながら椎名がペチリと杏寿郎の頬を叩いた。
「ん、それで?」
「…そうね、最近は鎹鴉が怪我をした時に私の所に寄ってくれるようになったわ」
別に強制したわけではない。鎹鴉達が気をまわしてくれたのだろう。
血が必要と言うよりは血に含まれる生気を食べている椎名としては、怪我をして生気減退中の鎹鴉から血を貰うのは気が引けるのだが。
そこまで言うと杏寿郎がぎゅっと椎名を抱き込んだ。少し痛いぐらいの力で抱き締められ、椎名が身じろぐ。
「杏寿郎?」
「俺の血を飲まないか?」
思いもよらない台詞に椎名は目を見開いた。そっと体を離した杏寿郎が椎名の両肩を掴み顔を覗き込む。熱に浮かされたようなその瞳に椎名は身動きができなかった。
「君の体を作る物が他の者の血で出来ているなど我慢ならない。この爪の先、髪の一筋まで俺で満たしたい」
「………」
カァーッと赤くなると椎名は杏寿郎に背中を向けた。
「椎名?」
予想外の反応に杏寿郎が肩を掴むが椎名は手を横に振ると振り返ることを拒む。ムッとむきになった杏寿郎が椎名を床に引き倒した。
「俺の血では不服か」
「違…そうじゃなくて、ちょ…ちょっと待って」
組み敷かれてもなお手で顔を隠す椎名の耳元に唇を寄せる。
「では、俺の命が尽きるまで俺以外の者の血を飲んではいけない。守れるな?椎名」
「……っ」
顔を隠したままで椎名は何度も頷いた。杏寿郎がその手を掴み顔からよける。下から出てきた顔は真っ赤に茹で上がり今にも泣きそうだった。
「椎名…?」
流石に様子がおかしいと杏寿郎が眉を顰める。椎名は杏寿郎の背に腕を回すとしがみついた。
「ごめ…それ、私の一族が結婚を申し込む時の言葉なの。まさか言われるなんて夢にも…」
「そうか、俺は自分の妻にもう一度結婚を申し込んだのか」
それも悪くない、と杏寿郎は思った。
何度でも何度でも自分は椎名を妻にしたいのだ。
「ならば、返事が欲しいな」
杏寿郎は椎名の顎に手をかけると自分の方へ向けた。涙目で言葉に詰まる椎名の鼻や頬に唇を落とす。
「椎名」
「…あなたの血が私の肉となり、あなたの愛が私の心を作る…誓います。生涯あなただけです」
流れる涙をそのままに微笑んだ椎名は杏寿郎の頬に手を添えるとそっと口付けた。杏寿郎がそれを深いものに変える。
(あなただけ…何と甘美な響きか)
その言葉に酔いしれながら二人の夜は更けていった。
窓のそばに腰掛け満月を見上げながら、杏寿郎は珍しく酒を傾けていた。椎名も杏寿郎の肩に寄りかかり月を見ている。
杯を空けた杏寿郎がふと椎名を振り返った。
「椎名は今、血はどうやって調達しているんだ?」
「唐突ね」
キョトンとした後クスリと笑う椎名の髪に頬擦りする。酔っ払い、と言いながら椎名がペチリと杏寿郎の頬を叩いた。
「ん、それで?」
「…そうね、最近は鎹鴉が怪我をした時に私の所に寄ってくれるようになったわ」
別に強制したわけではない。鎹鴉達が気をまわしてくれたのだろう。
血が必要と言うよりは血に含まれる生気を食べている椎名としては、怪我をして生気減退中の鎹鴉から血を貰うのは気が引けるのだが。
そこまで言うと杏寿郎がぎゅっと椎名を抱き込んだ。少し痛いぐらいの力で抱き締められ、椎名が身じろぐ。
「杏寿郎?」
「俺の血を飲まないか?」
思いもよらない台詞に椎名は目を見開いた。そっと体を離した杏寿郎が椎名の両肩を掴み顔を覗き込む。熱に浮かされたようなその瞳に椎名は身動きができなかった。
「君の体を作る物が他の者の血で出来ているなど我慢ならない。この爪の先、髪の一筋まで俺で満たしたい」
「………」
カァーッと赤くなると椎名は杏寿郎に背中を向けた。
「椎名?」
予想外の反応に杏寿郎が肩を掴むが椎名は手を横に振ると振り返ることを拒む。ムッとむきになった杏寿郎が椎名を床に引き倒した。
「俺の血では不服か」
「違…そうじゃなくて、ちょ…ちょっと待って」
組み敷かれてもなお手で顔を隠す椎名の耳元に唇を寄せる。
「では、俺の命が尽きるまで俺以外の者の血を飲んではいけない。守れるな?椎名」
「……っ」
顔を隠したままで椎名は何度も頷いた。杏寿郎がその手を掴み顔からよける。下から出てきた顔は真っ赤に茹で上がり今にも泣きそうだった。
「椎名…?」
流石に様子がおかしいと杏寿郎が眉を顰める。椎名は杏寿郎の背に腕を回すとしがみついた。
「ごめ…それ、私の一族が結婚を申し込む時の言葉なの。まさか言われるなんて夢にも…」
「そうか、俺は自分の妻にもう一度結婚を申し込んだのか」
それも悪くない、と杏寿郎は思った。
何度でも何度でも自分は椎名を妻にしたいのだ。
「ならば、返事が欲しいな」
杏寿郎は椎名の顎に手をかけると自分の方へ向けた。涙目で言葉に詰まる椎名の鼻や頬に唇を落とす。
「椎名」
「…あなたの血が私の肉となり、あなたの愛が私の心を作る…誓います。生涯あなただけです」
流れる涙をそのままに微笑んだ椎名は杏寿郎の頬に手を添えるとそっと口付けた。杏寿郎がそれを深いものに変える。
(あなただけ…何と甘美な響きか)
その言葉に酔いしれながら二人の夜は更けていった。