三章
夢小説設定
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「あれは…」
蝶屋敷での療養中、庭で鍛錬をしていた炭治郎は廊下を歩く椎名の姿に動きを止めた。
(横にいるのは)
思わず眉間に皺が寄る。椎名に並んで歩いているのは炎柱、煉獄杏寿郎だった。斬首すべし!の声が蘇り炭治郎は首を振る。
(椎名さん、炎柱の人とも親しいんだ)
椎名は窓側に立っている為に顔が見えないが杏寿郎の顔はよく見える。杏寿郎は穏やかな笑みを浮かべていた。
(別人みたいだ)
でも俺だってそうだよな、と炭治郎は思った。鬼とそうでないものへ向ける顔が違うのは当たり前だ。人を喰う鬼は誰かの大事な人を奪ってしまうのだ。
(そっか、そうだよな)
柱合会議のモヤモヤが晴れた気がして炭治郎は微笑んだ。
(…ん?)
杏寿郎が立ち止まると椎名の手を取った。もう一方で自分の羽織を大きく広げる。
(何して…っ!?)
杏寿郎はふわりと羽織で椎名を包むとその姿を覆い隠してしまった。くるりと半回転し杏寿郎が窓に背を向ける形になる。
(えっ!?待って待って何して…!?椎名さんを羽織の中に入れたのか?えっ!?………えっ!?)
頬に熱が集まり激しく動揺する。予期せず大人の世界に片足を突っ込んでしまって炭治郎は狼狽えた。
「さっきから何立ち止まってるんだよ炭治郎」
「うへっ!?いや!?何でもないぞ!」
善逸に後ろから声をかけられ炭治郎は飛び上がった。
(ビックリしすぎて口から心臓がまろび出るかと思った!!)
「具合悪いなら言っといた方が良いぜ?この後、機能回復訓練だろ?」
「いや!大丈夫!!元気一杯だよ!?ほら!ほら!!」
腕をグルグル回してみせる炭治郎に善逸は首を傾げたがそれ以上は突っ込まなかった。
「それなら良いけどさ」
「お前ら何やってんだ!!俺様について来い!!」
「あ、こら!伊之助!鹿に乗っちゃ駄目だ!!」
善逸と共に走り出しながら炭治郎はチラリと後ろを振り返った。椎名の腕が杏寿郎の首に回っているのが目に入り慌てて前を向く。
(そりゃあ別人みたいな顔の筈だよ)
あれは鬼ではない人に向ける顔なんてものじゃない。もっと大切で大事で特別な相手に向けるものだ。
(…見なかった事にしよう)
匂いを嗅がなくても分かる甘い空気から逃げるように炭治郎は走る速度を上げたのだった。
蝶屋敷での療養中、庭で鍛錬をしていた炭治郎は廊下を歩く椎名の姿に動きを止めた。
(横にいるのは)
思わず眉間に皺が寄る。椎名に並んで歩いているのは炎柱、煉獄杏寿郎だった。斬首すべし!の声が蘇り炭治郎は首を振る。
(椎名さん、炎柱の人とも親しいんだ)
椎名は窓側に立っている為に顔が見えないが杏寿郎の顔はよく見える。杏寿郎は穏やかな笑みを浮かべていた。
(別人みたいだ)
でも俺だってそうだよな、と炭治郎は思った。鬼とそうでないものへ向ける顔が違うのは当たり前だ。人を喰う鬼は誰かの大事な人を奪ってしまうのだ。
(そっか、そうだよな)
柱合会議のモヤモヤが晴れた気がして炭治郎は微笑んだ。
(…ん?)
杏寿郎が立ち止まると椎名の手を取った。もう一方で自分の羽織を大きく広げる。
(何して…っ!?)
杏寿郎はふわりと羽織で椎名を包むとその姿を覆い隠してしまった。くるりと半回転し杏寿郎が窓に背を向ける形になる。
(えっ!?待って待って何して…!?椎名さんを羽織の中に入れたのか?えっ!?………えっ!?)
頬に熱が集まり激しく動揺する。予期せず大人の世界に片足を突っ込んでしまって炭治郎は狼狽えた。
「さっきから何立ち止まってるんだよ炭治郎」
「うへっ!?いや!?何でもないぞ!」
善逸に後ろから声をかけられ炭治郎は飛び上がった。
(ビックリしすぎて口から心臓がまろび出るかと思った!!)
「具合悪いなら言っといた方が良いぜ?この後、機能回復訓練だろ?」
「いや!大丈夫!!元気一杯だよ!?ほら!ほら!!」
腕をグルグル回してみせる炭治郎に善逸は首を傾げたがそれ以上は突っ込まなかった。
「それなら良いけどさ」
「お前ら何やってんだ!!俺様について来い!!」
「あ、こら!伊之助!鹿に乗っちゃ駄目だ!!」
善逸と共に走り出しながら炭治郎はチラリと後ろを振り返った。椎名の腕が杏寿郎の首に回っているのが目に入り慌てて前を向く。
(そりゃあ別人みたいな顔の筈だよ)
あれは鬼ではない人に向ける顔なんてものじゃない。もっと大切で大事で特別な相手に向けるものだ。
(…見なかった事にしよう)
匂いを嗅がなくても分かる甘い空気から逃げるように炭治郎は走る速度を上げたのだった。