三章
夢小説設定
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「本当においしくないわよ?」
「うふふ、ありがとうございます」
蝶屋敷の一室にて椎名はしのぶに冒険者時代の薬草茶を振舞っていた。ルーナリディと言うお茶でとにかく渋く苦い。飲みなれている椎名がお茶を口に含んだタイミングでしのぶが爆弾発言をした。
「ところで、椎名さんは煉獄さんともう同衾されたんですか?」
ぶふーーーっ!
椎名はお茶を吹き出すと激しく咳き込んだ。しかしその間もしのぶの爆弾は炸裂し続ける。
「煉獄さんはなかなかお堅い人ではありますが、新しいものも様々に入ってきているこのご時世。別に付き合っている者同士であれば…」
「しのぶ、ちょいちょいちょい!」
もが…とくぐもった音を立ててしのぶの言葉が止まった。椎名が口を手で塞いだのだ。
「何がどうしてそんな質問になったの」
「いえ、拝見する限り随分清い交際をされているようで、老婆心ながら何か理由でもあるのかと気になったものですから」
「……」
ニコニコと微笑むしのぶの頭を椎名は黙って撫でた。この年頃の娘に随分いらない心配をかけたらしい。ほんの僅かに口元を尖らせて不服を示すしのぶに苦笑が漏れる。
「私たちの一族はね、番う相手は一生に一人と決まっているのよ」
「…では、既にどなたかと?」
「ないない、無いから。でもね、もうそう言う生き物だと思ってくれればいいんだけど、番う相手が決まるともうそれ以外は受け入れられなくなるの」
精神的な歯止めがあるとかそんなものでは無い。魂が引き裂かれると言うか、内側から腐っていくような苦痛というか、そういうものが想像しただけで感じられるのだ。
「煉獄さんが相手では不安ですか?」
「………そうじゃない、んだけどね」
杏寿郎は絶対に椎名より先に死ぬ。その後の長い人生を杏寿郎との思い出だけで生きるのは辛いのでは?としのぶは言外に心配しているのだ。
そのしのぶの優しさがわかるから、椎名も正直に答えることにした。
「杏寿郎には重い内容なんじゃ無いかと、そう思って…杏寿郎がいつか未来を失った時、私を一人にすることを後悔させたくない」
「……」
杏寿郎の事が本当に好きだと言外に告げる椎名にしのぶは優しい笑みを浮かべた。お茶を一口含むと確かめるように飲み込む。
「煉獄さんは〈わがままな男〉のようですからね。悩むより伝えて一緒に考えたほうがいいような気はしますけど」
「そう、ね。本当にそうね」
椎名はカップを傾け、温くなってしまったお茶を口に運んだ。
「ところでこのお茶、本当に不味いですね」
「だから言ったじゃない」
苦笑する椎名にしのぶはニッコリ笑った。
「でも気に入りました。眠気覚ましに飲みたいのでいくつか譲っていただけません?」
「…このお茶を気に入るしのぶの胃が心配」
ため息をつくと椎名は人差し指を横に滑らせるのだった。
「うふふ、ありがとうございます」
蝶屋敷の一室にて椎名はしのぶに冒険者時代の薬草茶を振舞っていた。ルーナリディと言うお茶でとにかく渋く苦い。飲みなれている椎名がお茶を口に含んだタイミングでしのぶが爆弾発言をした。
「ところで、椎名さんは煉獄さんともう同衾されたんですか?」
ぶふーーーっ!
椎名はお茶を吹き出すと激しく咳き込んだ。しかしその間もしのぶの爆弾は炸裂し続ける。
「煉獄さんはなかなかお堅い人ではありますが、新しいものも様々に入ってきているこのご時世。別に付き合っている者同士であれば…」
「しのぶ、ちょいちょいちょい!」
もが…とくぐもった音を立ててしのぶの言葉が止まった。椎名が口を手で塞いだのだ。
「何がどうしてそんな質問になったの」
「いえ、拝見する限り随分清い交際をされているようで、老婆心ながら何か理由でもあるのかと気になったものですから」
「……」
ニコニコと微笑むしのぶの頭を椎名は黙って撫でた。この年頃の娘に随分いらない心配をかけたらしい。ほんの僅かに口元を尖らせて不服を示すしのぶに苦笑が漏れる。
「私たちの一族はね、番う相手は一生に一人と決まっているのよ」
「…では、既にどなたかと?」
「ないない、無いから。でもね、もうそう言う生き物だと思ってくれればいいんだけど、番う相手が決まるともうそれ以外は受け入れられなくなるの」
精神的な歯止めがあるとかそんなものでは無い。魂が引き裂かれると言うか、内側から腐っていくような苦痛というか、そういうものが想像しただけで感じられるのだ。
「煉獄さんが相手では不安ですか?」
「………そうじゃない、んだけどね」
杏寿郎は絶対に椎名より先に死ぬ。その後の長い人生を杏寿郎との思い出だけで生きるのは辛いのでは?としのぶは言外に心配しているのだ。
そのしのぶの優しさがわかるから、椎名も正直に答えることにした。
「杏寿郎には重い内容なんじゃ無いかと、そう思って…杏寿郎がいつか未来を失った時、私を一人にすることを後悔させたくない」
「……」
杏寿郎の事が本当に好きだと言外に告げる椎名にしのぶは優しい笑みを浮かべた。お茶を一口含むと確かめるように飲み込む。
「煉獄さんは〈わがままな男〉のようですからね。悩むより伝えて一緒に考えたほうがいいような気はしますけど」
「そう、ね。本当にそうね」
椎名はカップを傾け、温くなってしまったお茶を口に運んだ。
「ところでこのお茶、本当に不味いですね」
「だから言ったじゃない」
苦笑する椎名にしのぶはニッコリ笑った。
「でも気に入りました。眠気覚ましに飲みたいのでいくつか譲っていただけません?」
「…このお茶を気に入るしのぶの胃が心配」
ため息をつくと椎名は人差し指を横に滑らせるのだった。