短編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あ〜あったくよォ」
深い森の中、実弥はため息をついた。
「雁首揃えて何やってんだかなァ」
「言っても仕方のないことだな!」
「日の出まであと二時間ばかしだ。派手に待つしかねぇよ」
「にしても、随分深くまで来ちゃったわね」
杏寿郎、天元、椎名がそれぞれに愚痴混じりの言葉を口にする。
4人は各々に鬼を追いかけていた。森の奥深くのこの辺は恐らく鬼の隠れ場所のようなものだったのだろう。逃げる鬼を追いかけ仕留めた所で鉢合わせしたのだ。
ご丁寧にも今夜は新月で方向を完全に見失った面々はその場にとどまることを選んだ。
「夜が明けりゃあ鴉か隠がくんだろ。それまで待つだけだ」
「そうだな!」
杏寿郎が元気に返事した瞬間、そのお腹が大きな音を立てた。一瞬沈黙が落ち、杏寿郎が潔く謝る。
「すまん!腹が減ったな!!」
「確かに、一晩中派手に走り回ったからな」
「誰かなんか食いもん持ってんのか?」
実弥の質問に二人が首を横に振る。あ、と椎名が声を上げた。
「冒険者時代の携帯食でよければあるけど…食べてみる?」
「お前の冒険者時代って何百年前だよ」
保存食とは言え限界というものがある。実弥のもっともな指摘に椎名は笑うと指を横に引いた。ボトボトッと麻袋がいくつか落ちてくる。
「残念ながら私が物をしまっている空間には時間の概念がないのよ。いつでも入れた時のまま新鮮そのものよ」
「君は食べないのだろう?なぜ携帯食など持っている?」
杏寿郎の当然の疑問に椎名は苦笑した。
「…行き倒れって結構そこそこいるのよね」
見殺しは寝覚が悪いのでその為の食料である。珍しそうに袋を手に取る天元に、ただ…と椎名は続けた。
「ものすっごく不味いわよ?」
「「「は?」」」
いまいち分かってない顔をする三人に袋を一つ開いて見せる。中には干し肉っぽいものが入っていた。
「…普通に食えそうだけど?」
「冒険者の携帯食って、野営の時の居眠り防止の気付け代わりみたいなものなのよ」
腹が減るのは困るが、満腹で爆睡も困る。そういうニーズから成り立っている食べ物なのだ。
「どれ」
杏寿郎が干し肉を一枚取ると齧り付く。ピタリと動きを止めた杏寿郎に他の二人が恐る恐る様子を伺った。
「お、おい」
「煉獄?」
「…湯で柔らかくせねば噛み切ることもできん!」
マジか!と二人の目が干し肉に注がれる。完全に怖いもの見たさの二人に椎名は苦笑した。
(好奇心って怖い)
「煮たことは流石に無いなぁ。大抵はこうやって…」
椎名は小振りなナイフを取り出すと小さく削り口に運んだ。ん、とナイフを天元に渡す。実弥、杏寿郎とナイフが一回りした後、3人はそれっとばかりに干し肉のかけらを口に放り込んだ。
噛み締めた途端口に広がるひたすらの塩味と肉の灰汁によるエグ味、生臭さに撃沈する。モグモグと口を動かしながら椎名は野営用のティーセットを取り出した。
携帯コンロのつまみを捻り火をつけると小振りの鍋に水色の石を入れる。みるみる満たされた水がお湯になるのを待って、親指の爪サイズの茶色い塊を投入した。
はっと我に帰った実弥の顔色が悪い。
「おい、これ焼いてから食うもんじゃねぇのか?」
「安心して、そのまま食べるものです」
「飲み込んだのか、すげぇな不死川」
「はいはい、こちらをどうぞ」
一煮立ちさせた茶色い液体をカップに注ぐと全員に渡す。くん、と匂いを嗅いだ杏寿郎が眉を寄せた。
「茶、か?」
「そ、ルーナリディって言う薬草茶よ」
口内の不快な味を洗い流そうと杏寿郎がカップを傾ける。強烈な渋みと苦みにグフッとむせたかと思うと、杏寿郎は今まで見たことないぐらい落ち込んだ。
「うおっ!煉獄が見たことねぇほど暗い!」
「派手派手が売りなのにマジか!!」
ちびちび薬草茶を飲む椎名を他所に実弥はハッとした顔で鍋を見つめた。
「この干し肉煮てみようぜ。俺、塩持ってるわ」
「あ、待て待て。確か向こうにヨモギ生えてた」
「うむ!そう言えば俺も味噌玉を持っている!!」
「「それを先に出せ!!」」
「ねぇ、この国の人たちのその食に対する情熱なんなの?」
徹夜に空腹でテンションのおかしくなってきた三人はなんやかんやを鍋に放り込んだ。グツグツと謎の匂いが立ち込める。味噌玉とお湯だけで良かったのでは?と今更言い出せない椎名は黙ってお茶を口に運んでいた。
深夜の勢い怖い。
「…だいぶ柔らかくなったようだな」
「派手に行くか…」
「よぉし」
カップによそうと顔を見合わせ頷く。ガッとそれを流し込むと三人はそのまま倒れ伏し、動かなくなった。
「おーい、大丈夫ー?」
体に悪いものはないが、流石に心配になる食べ合わせだ。椎名が声をかけると杏寿郎が大声で笑い出した。
「ははは…はははははっ!」
「く、くくくっ!なぁにやってんだろうな俺達」
「ははは!たまには派手にバカやるのも良いじゃねぇか!」
実弥も天元も笑い出す。朝日が差し込んできて、遠くから隠の声が聞こえてきた。器を洗い片付ける椎名に杏寿郎が言う。
「冒険者とは過酷な職業だな!椎名!!」
「………」
いや、頼むからさっきの謎の物体を一緒にしてくれるな、と思う椎名だった。
深い森の中、実弥はため息をついた。
「雁首揃えて何やってんだかなァ」
「言っても仕方のないことだな!」
「日の出まであと二時間ばかしだ。派手に待つしかねぇよ」
「にしても、随分深くまで来ちゃったわね」
杏寿郎、天元、椎名がそれぞれに愚痴混じりの言葉を口にする。
4人は各々に鬼を追いかけていた。森の奥深くのこの辺は恐らく鬼の隠れ場所のようなものだったのだろう。逃げる鬼を追いかけ仕留めた所で鉢合わせしたのだ。
ご丁寧にも今夜は新月で方向を完全に見失った面々はその場にとどまることを選んだ。
「夜が明けりゃあ鴉か隠がくんだろ。それまで待つだけだ」
「そうだな!」
杏寿郎が元気に返事した瞬間、そのお腹が大きな音を立てた。一瞬沈黙が落ち、杏寿郎が潔く謝る。
「すまん!腹が減ったな!!」
「確かに、一晩中派手に走り回ったからな」
「誰かなんか食いもん持ってんのか?」
実弥の質問に二人が首を横に振る。あ、と椎名が声を上げた。
「冒険者時代の携帯食でよければあるけど…食べてみる?」
「お前の冒険者時代って何百年前だよ」
保存食とは言え限界というものがある。実弥のもっともな指摘に椎名は笑うと指を横に引いた。ボトボトッと麻袋がいくつか落ちてくる。
「残念ながら私が物をしまっている空間には時間の概念がないのよ。いつでも入れた時のまま新鮮そのものよ」
「君は食べないのだろう?なぜ携帯食など持っている?」
杏寿郎の当然の疑問に椎名は苦笑した。
「…行き倒れって結構そこそこいるのよね」
見殺しは寝覚が悪いのでその為の食料である。珍しそうに袋を手に取る天元に、ただ…と椎名は続けた。
「ものすっごく不味いわよ?」
「「「は?」」」
いまいち分かってない顔をする三人に袋を一つ開いて見せる。中には干し肉っぽいものが入っていた。
「…普通に食えそうだけど?」
「冒険者の携帯食って、野営の時の居眠り防止の気付け代わりみたいなものなのよ」
腹が減るのは困るが、満腹で爆睡も困る。そういうニーズから成り立っている食べ物なのだ。
「どれ」
杏寿郎が干し肉を一枚取ると齧り付く。ピタリと動きを止めた杏寿郎に他の二人が恐る恐る様子を伺った。
「お、おい」
「煉獄?」
「…湯で柔らかくせねば噛み切ることもできん!」
マジか!と二人の目が干し肉に注がれる。完全に怖いもの見たさの二人に椎名は苦笑した。
(好奇心って怖い)
「煮たことは流石に無いなぁ。大抵はこうやって…」
椎名は小振りなナイフを取り出すと小さく削り口に運んだ。ん、とナイフを天元に渡す。実弥、杏寿郎とナイフが一回りした後、3人はそれっとばかりに干し肉のかけらを口に放り込んだ。
噛み締めた途端口に広がるひたすらの塩味と肉の灰汁によるエグ味、生臭さに撃沈する。モグモグと口を動かしながら椎名は野営用のティーセットを取り出した。
携帯コンロのつまみを捻り火をつけると小振りの鍋に水色の石を入れる。みるみる満たされた水がお湯になるのを待って、親指の爪サイズの茶色い塊を投入した。
はっと我に帰った実弥の顔色が悪い。
「おい、これ焼いてから食うもんじゃねぇのか?」
「安心して、そのまま食べるものです」
「飲み込んだのか、すげぇな不死川」
「はいはい、こちらをどうぞ」
一煮立ちさせた茶色い液体をカップに注ぐと全員に渡す。くん、と匂いを嗅いだ杏寿郎が眉を寄せた。
「茶、か?」
「そ、ルーナリディって言う薬草茶よ」
口内の不快な味を洗い流そうと杏寿郎がカップを傾ける。強烈な渋みと苦みにグフッとむせたかと思うと、杏寿郎は今まで見たことないぐらい落ち込んだ。
「うおっ!煉獄が見たことねぇほど暗い!」
「派手派手が売りなのにマジか!!」
ちびちび薬草茶を飲む椎名を他所に実弥はハッとした顔で鍋を見つめた。
「この干し肉煮てみようぜ。俺、塩持ってるわ」
「あ、待て待て。確か向こうにヨモギ生えてた」
「うむ!そう言えば俺も味噌玉を持っている!!」
「「それを先に出せ!!」」
「ねぇ、この国の人たちのその食に対する情熱なんなの?」
徹夜に空腹でテンションのおかしくなってきた三人はなんやかんやを鍋に放り込んだ。グツグツと謎の匂いが立ち込める。味噌玉とお湯だけで良かったのでは?と今更言い出せない椎名は黙ってお茶を口に運んでいた。
深夜の勢い怖い。
「…だいぶ柔らかくなったようだな」
「派手に行くか…」
「よぉし」
カップによそうと顔を見合わせ頷く。ガッとそれを流し込むと三人はそのまま倒れ伏し、動かなくなった。
「おーい、大丈夫ー?」
体に悪いものはないが、流石に心配になる食べ合わせだ。椎名が声をかけると杏寿郎が大声で笑い出した。
「ははは…はははははっ!」
「く、くくくっ!なぁにやってんだろうな俺達」
「ははは!たまには派手にバカやるのも良いじゃねぇか!」
実弥も天元も笑い出す。朝日が差し込んできて、遠くから隠の声が聞こえてきた。器を洗い片付ける椎名に杏寿郎が言う。
「冒険者とは過酷な職業だな!椎名!!」
「………」
いや、頼むからさっきの謎の物体を一緒にしてくれるな、と思う椎名だった。