三章
夢小説設定
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(今日は家へ帰れそうだ)
任務明け、体調観察のために蝶屋敷に寄っていた杏寿郎は廊下を歩いていた。
(日が暮れる…)
茜色に染まった景色は美しいが、夜が来ると思うとこのまま休んで良いのかと不安に駆られる。
(しかし体を休めねば次の任務に差し障る)
心は休まらないが、そこまで贅沢は言えない。杏寿郎はふぅ、とため息をついた。
「……?」
(歌…)
聞こえてきた声に杏寿郎は足を止めた。聞き馴染みのない旋律の歌が小さく聞こえてくる。初めて聴くのに懐かしいそれに杏寿郎は引き寄せられる様に足を動かした。
「………」
(椎名か)
廊下に設られた小さな休憩スペースのベンチに座り、椎名は外を見ていた。開け放たれた窓枠に肘を乗せ歌う。
木々の木漏れ日 風のよう
風のざわめき 水のよう
水の流れは 時のよう
森は広がり 人は流れる
「良い歌だな」
「任務帰り?」
「あぁ」
振り返った椎名の隣に腰掛けると尋ねる。
「なんと言う歌なんだ?」
「とくに名前はついてないのよね」
再び外へ視線を向けると小さく微笑む。
「昔、よく母が歌ってくれた子守唄なの」
なんだか懐かしくてね、と椎名は笑った。
「よければもう少し聞かせてくれないだろうか」
「…いいわよ」
暮れていく夕暮れの静けさを破らないようそっと歌う。杏寿郎は目を閉じ耳を傾けた。
(落ち着く)
夜が来ることにざわめいていた心が凪いでいく。春から夏へと移りゆく夕暮れの心地よさに杏寿郎はゆっくり意識を手放した。
「………」
とん、と肩に乗った重みに歌が途切れた。視線を横に向けると椎名の方に寄りかかり杏寿郎が眠っている。
(疲れてるのね)
夜は鬼狩りの為走り回り、明るいうちに休むと言うのは体に思わぬ負担がかかる。しかもその昼間でさえ部下の鍛錬に充てているとなればいつ休んでいるのか。
ずるりと姿勢が崩れ、椎名の膝の上に落ちてきた杏寿郎の頭を椎名はそっと撫でた。
(少しでも休まれば良いけど)
安らかな寝息を立てる杏寿郎に、椎名はささやかな願いを抱いたのだった。
任務明け、体調観察のために蝶屋敷に寄っていた杏寿郎は廊下を歩いていた。
(日が暮れる…)
茜色に染まった景色は美しいが、夜が来ると思うとこのまま休んで良いのかと不安に駆られる。
(しかし体を休めねば次の任務に差し障る)
心は休まらないが、そこまで贅沢は言えない。杏寿郎はふぅ、とため息をついた。
「……?」
(歌…)
聞こえてきた声に杏寿郎は足を止めた。聞き馴染みのない旋律の歌が小さく聞こえてくる。初めて聴くのに懐かしいそれに杏寿郎は引き寄せられる様に足を動かした。
「………」
(椎名か)
廊下に設られた小さな休憩スペースのベンチに座り、椎名は外を見ていた。開け放たれた窓枠に肘を乗せ歌う。
木々の木漏れ日 風のよう
風のざわめき 水のよう
水の流れは 時のよう
森は広がり 人は流れる
「良い歌だな」
「任務帰り?」
「あぁ」
振り返った椎名の隣に腰掛けると尋ねる。
「なんと言う歌なんだ?」
「とくに名前はついてないのよね」
再び外へ視線を向けると小さく微笑む。
「昔、よく母が歌ってくれた子守唄なの」
なんだか懐かしくてね、と椎名は笑った。
「よければもう少し聞かせてくれないだろうか」
「…いいわよ」
暮れていく夕暮れの静けさを破らないようそっと歌う。杏寿郎は目を閉じ耳を傾けた。
(落ち着く)
夜が来ることにざわめいていた心が凪いでいく。春から夏へと移りゆく夕暮れの心地よさに杏寿郎はゆっくり意識を手放した。
「………」
とん、と肩に乗った重みに歌が途切れた。視線を横に向けると椎名の方に寄りかかり杏寿郎が眠っている。
(疲れてるのね)
夜は鬼狩りの為走り回り、明るいうちに休むと言うのは体に思わぬ負担がかかる。しかもその昼間でさえ部下の鍛錬に充てているとなればいつ休んでいるのか。
ずるりと姿勢が崩れ、椎名の膝の上に落ちてきた杏寿郎の頭を椎名はそっと撫でた。
(少しでも休まれば良いけど)
安らかな寝息を立てる杏寿郎に、椎名はささやかな願いを抱いたのだった。