三章
夢小説設定
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「そうだ椎名!一度手合わせを願いたいのだが良いだろうか!」
「構わないけど、急にどうしたの?」
千寿郎にお茶とお菓子をご馳走になっていた椎名はキョトンとした。
「以前より不死川や宇髄に話を聞いて一度地稽古の相手を頼みたいと思ってはいたのだ。君にしても怪我が治ったばかりだし勘を取り戻すのにうってつけだと思わないか?」
正直なことを言えば前線に赴くのはやめてくれ、なのだが椎名が聞いてくれるとは思えない。ならば自らの手で椎名の実力を確認したかった。
「それもそうね」
特に異論はないのでお茶を飲み干すと椎名は立ち上がった。千寿郎も連れ立って庭先へ出る。千寿郎に木刀を手渡され椎名は杏寿郎と向かい合った。
「では行くぞ!」
杏寿郎は両手で木刀を握ると中段に構えた。教本に出てくるような綺麗な構えだ。一方の椎名は右手に木刀を持つと、ごく自然な感じで立った。
「構えないのか?」
「?もう準備できてるけど?」
「なるほど!」
杏寿郎が地面を蹴る。一足飛びに椎名の懐まで飛び込むと木刀を横薙ぎに払う。
ひらりと後ろへかわした椎名が腕をしならせ大振りに上から打ち込んだ。杏寿郎はそれを木刀で弾き返すと上段から打ち込む。
「むっ!」
くるりと姿勢を変えた椎名の横腹を狙った一撃に杏寿郎は大きく飛び退った。
(動きが俺たち剣士とは違い不規則だな。片手で剣を持つのも本来ならば【あいてむ】とやらを使いながら戦うためだろう)
だが片手故に一撃一撃は軽い。
(ならば力でゴリ押す!)
杏寿郎が駆け出すために力を込めた瞬間、椎名が仕掛けた。一気に杏寿郎との間合いを詰めると木刀を両手で握りしめる。
(両手!?)
杏寿郎がその木刀に意識を取られた瞬間、椎名の姿がかき消えた。
(下か!!)
地面につくほど身を屈めると足元を払う。体制を崩した杏寿郎の耳にヒュゥゥゥと独特の呼吸音が届く。
「なっ!?」
ーー水の呼吸 弐の型 水車ーー
椎名が下から上へと切り上げる。
ーー炎の呼吸 参の型 気炎万象ーー
杏寿郎は咄嗟に技を繰り出した。上から下へ杏寿郎の重みが乗った斬撃に椎名が押される。
「!!」
次の瞬間椎名は木刀から手を離すと体を回転させ杏寿郎の後ろへ回り込んだ。杏寿郎の強い地面への打ち込みに椎名が手放した木刀が跳ね返り宙に舞う。
すかさず上へと飛んだ椎名がその木刀を掴み振り上げた。
「師範に何をする!」
「!?」
声と共に椎名の真横へと影が舞った。
「甘露寺!?」
「たぁぁぁあーっ!」
突如乱入してきた蜜璃が椎名に拳を向ける。
(隊服着てる)
椎名は持っていた木刀を再び手放した。
「えっ!?」
「待て!甘露寺…っ!」
ドゴォォッ!!
雷もかくやと言う凄まじい音がして、蜜璃に殴られた椎名は派手に吹き飛んだ。そのままの勢いで池へと飛び込む。大きな水飛沫が上がって杏寿郎達に降りかかった。
「大丈夫か!!椎名!!?」
「義姉上ーっ!!」
「えぇぇぇぇっ!?」
てっきり良からぬ者かと思っていた蜜璃は顔色を変えた。
(しかも千寿郎くん姉上って言ったわ!どうしましょう!私、師範の奥さんになんてこと!)
池へと駆け寄った二人に倣い走り寄る。ザバリと水音がして椎名が池の中で立ち上がった。
「大丈夫か!椎名!!」
「…いや流石に死ぬかと思ったわ」
びしょびしょの髪から滴る水が鬱陶しくて髪をかき上げる。意外と平気そうな椎名に千寿郎が目を丸くした。
「お怪我は…ありませんか?」
「大丈夫よ千寿郎。これでだいぶ相殺出来たから」
そう言ってスイっと指を横に引くと、少し離れた場所に座布団サイズの石板がゴトゴトと重い音を立てて落ちた。
「ギリギリ2枚。差し挟んだから吹っ飛んだだけで済んだわ」
「…なぜそんなものを持っているんだ」
「素材の採取とか物資の運搬って仕事は多かったのよ」
要は残り物の入れっぱなしだ。はぁ、と息をつくと杏寿郎は蜜璃を振り返った。ビクッと肩を震わせる蜜璃に腕を組む。
「甘露寺!」
「ご、こめんなさい!師範!!私てっきり師範が襲われてるとばかり!」
「状況の把握も無しに戦線に突っ込むべきではないと前に教えただろう!」
「隊服着てなかったし、何だか気配が普通の人とは違っていたから…本当にごめんなさい!あの…わざと木刀を手放してくれたんですよね?本当に本当にごめんなさい!!」
前半は杏寿郎へ、後半は椎名に向かって頭を下げる蜜璃が本当に反省しているのが分かったので、椎名は笑いかけると手を振った。
「もう良いのよ。お陰様で良い訓練になったわ」
そう言いながら髪を掴んで水を絞る。ジャーと音を立てて滴り落ちる水を見て、杏寿郎はハッとして千寿郎に指示した。
「千寿郎、すまんが風呂の支度を頼む。何か彼女が着られそうなものはあるか?」
「あ、はい!ええと…そうだ、蜜璃さんが使っていた稽古着があります」
「いや、着替えならあるわよ?ほら、前の…」
「却下だ!」
あんな物また着られたら杏寿郎の心臓がもたない。
(そう言えば甘露寺の隊服も似たような物だが、椎名のは万倍心臓に悪い)
「着方知らないけど…」
「あっ、私!私お手伝いします!!お詫びにはならないけど、それぐらいさせて下さい!!」
ピョコピョコと飛び跳ねるように手を上げる蜜璃の仕草が可愛くて椎名は思わず笑った。
「じゃあそれで手打ちね。お願いするわ」
「はい!あ、私甘露寺蜜璃って言います。師範…煉獄さんの継子をしていました」
杏寿郎の手を借り池から出ると蜜璃と握手をする。
「宜しく蜜璃。私は椎名よ」
「煉獄さんにこんな素敵な奥様がいらしたなんて…ドキドキしちゃいます」
「そうだろう!と言いたいところだが、まだ婚約者だ!」
「……」
風邪じゃなくて熱が出そうだ、と思う椎名だった。
「構わないけど、急にどうしたの?」
千寿郎にお茶とお菓子をご馳走になっていた椎名はキョトンとした。
「以前より不死川や宇髄に話を聞いて一度地稽古の相手を頼みたいと思ってはいたのだ。君にしても怪我が治ったばかりだし勘を取り戻すのにうってつけだと思わないか?」
正直なことを言えば前線に赴くのはやめてくれ、なのだが椎名が聞いてくれるとは思えない。ならば自らの手で椎名の実力を確認したかった。
「それもそうね」
特に異論はないのでお茶を飲み干すと椎名は立ち上がった。千寿郎も連れ立って庭先へ出る。千寿郎に木刀を手渡され椎名は杏寿郎と向かい合った。
「では行くぞ!」
杏寿郎は両手で木刀を握ると中段に構えた。教本に出てくるような綺麗な構えだ。一方の椎名は右手に木刀を持つと、ごく自然な感じで立った。
「構えないのか?」
「?もう準備できてるけど?」
「なるほど!」
杏寿郎が地面を蹴る。一足飛びに椎名の懐まで飛び込むと木刀を横薙ぎに払う。
ひらりと後ろへかわした椎名が腕をしならせ大振りに上から打ち込んだ。杏寿郎はそれを木刀で弾き返すと上段から打ち込む。
「むっ!」
くるりと姿勢を変えた椎名の横腹を狙った一撃に杏寿郎は大きく飛び退った。
(動きが俺たち剣士とは違い不規則だな。片手で剣を持つのも本来ならば【あいてむ】とやらを使いながら戦うためだろう)
だが片手故に一撃一撃は軽い。
(ならば力でゴリ押す!)
杏寿郎が駆け出すために力を込めた瞬間、椎名が仕掛けた。一気に杏寿郎との間合いを詰めると木刀を両手で握りしめる。
(両手!?)
杏寿郎がその木刀に意識を取られた瞬間、椎名の姿がかき消えた。
(下か!!)
地面につくほど身を屈めると足元を払う。体制を崩した杏寿郎の耳にヒュゥゥゥと独特の呼吸音が届く。
「なっ!?」
ーー水の呼吸 弐の型 水車ーー
椎名が下から上へと切り上げる。
ーー炎の呼吸 参の型 気炎万象ーー
杏寿郎は咄嗟に技を繰り出した。上から下へ杏寿郎の重みが乗った斬撃に椎名が押される。
「!!」
次の瞬間椎名は木刀から手を離すと体を回転させ杏寿郎の後ろへ回り込んだ。杏寿郎の強い地面への打ち込みに椎名が手放した木刀が跳ね返り宙に舞う。
すかさず上へと飛んだ椎名がその木刀を掴み振り上げた。
「師範に何をする!」
「!?」
声と共に椎名の真横へと影が舞った。
「甘露寺!?」
「たぁぁぁあーっ!」
突如乱入してきた蜜璃が椎名に拳を向ける。
(隊服着てる)
椎名は持っていた木刀を再び手放した。
「えっ!?」
「待て!甘露寺…っ!」
ドゴォォッ!!
雷もかくやと言う凄まじい音がして、蜜璃に殴られた椎名は派手に吹き飛んだ。そのままの勢いで池へと飛び込む。大きな水飛沫が上がって杏寿郎達に降りかかった。
「大丈夫か!!椎名!!?」
「義姉上ーっ!!」
「えぇぇぇぇっ!?」
てっきり良からぬ者かと思っていた蜜璃は顔色を変えた。
(しかも千寿郎くん姉上って言ったわ!どうしましょう!私、師範の奥さんになんてこと!)
池へと駆け寄った二人に倣い走り寄る。ザバリと水音がして椎名が池の中で立ち上がった。
「大丈夫か!椎名!!」
「…いや流石に死ぬかと思ったわ」
びしょびしょの髪から滴る水が鬱陶しくて髪をかき上げる。意外と平気そうな椎名に千寿郎が目を丸くした。
「お怪我は…ありませんか?」
「大丈夫よ千寿郎。これでだいぶ相殺出来たから」
そう言ってスイっと指を横に引くと、少し離れた場所に座布団サイズの石板がゴトゴトと重い音を立てて落ちた。
「ギリギリ2枚。差し挟んだから吹っ飛んだだけで済んだわ」
「…なぜそんなものを持っているんだ」
「素材の採取とか物資の運搬って仕事は多かったのよ」
要は残り物の入れっぱなしだ。はぁ、と息をつくと杏寿郎は蜜璃を振り返った。ビクッと肩を震わせる蜜璃に腕を組む。
「甘露寺!」
「ご、こめんなさい!師範!!私てっきり師範が襲われてるとばかり!」
「状況の把握も無しに戦線に突っ込むべきではないと前に教えただろう!」
「隊服着てなかったし、何だか気配が普通の人とは違っていたから…本当にごめんなさい!あの…わざと木刀を手放してくれたんですよね?本当に本当にごめんなさい!!」
前半は杏寿郎へ、後半は椎名に向かって頭を下げる蜜璃が本当に反省しているのが分かったので、椎名は笑いかけると手を振った。
「もう良いのよ。お陰様で良い訓練になったわ」
そう言いながら髪を掴んで水を絞る。ジャーと音を立てて滴り落ちる水を見て、杏寿郎はハッとして千寿郎に指示した。
「千寿郎、すまんが風呂の支度を頼む。何か彼女が着られそうなものはあるか?」
「あ、はい!ええと…そうだ、蜜璃さんが使っていた稽古着があります」
「いや、着替えならあるわよ?ほら、前の…」
「却下だ!」
あんな物また着られたら杏寿郎の心臓がもたない。
(そう言えば甘露寺の隊服も似たような物だが、椎名のは万倍心臓に悪い)
「着方知らないけど…」
「あっ、私!私お手伝いします!!お詫びにはならないけど、それぐらいさせて下さい!!」
ピョコピョコと飛び跳ねるように手を上げる蜜璃の仕草が可愛くて椎名は思わず笑った。
「じゃあそれで手打ちね。お願いするわ」
「はい!あ、私甘露寺蜜璃って言います。師範…煉獄さんの継子をしていました」
杏寿郎の手を借り池から出ると蜜璃と握手をする。
「宜しく蜜璃。私は椎名よ」
「煉獄さんにこんな素敵な奥様がいらしたなんて…ドキドキしちゃいます」
「そうだろう!と言いたいところだが、まだ婚約者だ!」
「……」
風邪じゃなくて熱が出そうだ、と思う椎名だった。