三章
夢小説設定
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「ここが俺の家だ!」
「蝶屋敷といい杏寿郎の家といい立派ね」
「ありがとう!さぁ、入ってくれ!!」
心なしソワソワしている杏寿郎に促され、椎名は初めて煉獄家の門をくぐった。
ロストアイテムのダメージから回復し、機能回復訓練を終えた数日後の事だ。
「千寿郎!今帰ったぞ!!」
「お帰りなさいませ兄う…え」
「………」
庭の方へと回り込むと、縁側を雑巾掛けしていた姿がパッと振り返った。椎名が思わず吹き出しそうになるのを必死で押し殺す。
(激似!!と言うかお父さんの遺伝子、仕事しすぎでしょ!)
「兄上、こちらは…?」
縁側にきちんと座り直した千寿郎に杏寿郎は元気よく答えた。
「彼女の名前は椎名!俺の婚約者だ!!」
「っ!」
ゲフゲフと椎名は横を向くと咳き込んだ。
(いや、間違ってない。間違ってはいないんだけど!)
ついこの前、お互いの気持ちを確認したばかりで免疫が足りない。椎名の髪に隠れがちな耳が真っ赤なのをキョトンと見上げた後、千寿郎はにっこり微笑んだ。
「では義姉上とお呼びして良いですか?」
「んんっ!」
思わず変な声が出る。杏寿郎が心配して顔を覗き込んできた。
「どうした椎名!?大丈夫か!」
「義姉上、お加減でも…」
「ご、こめん!何でもないから!」
杏寿郎千寿郎兄弟の曇りなき眼が直視できない。そっぽを向いて肩を震わせる椎名に杏寿郎が少し萎れた。
「すまない、家族を紹介できたらと思ったのだが、乗り気ではなかったか?」
「!?」
見当違いな杏寿郎の言葉に椎名は勢いよく振り向くと、その両肩を掴んだ。
「違うからね!って何でそんな考えになるかな!違う違う!!そうじゃなくて…いや、うん、そうじゃなくてね…」
言葉にするのが照れ臭い。椎名はモジモジすると視線を横に逃した。
「気恥ずかしいだけで…こ、婚約者とか…あね、うえ、とか…」
かぁ…と茹で上がり手で顔を覆う椎名に、千寿郎はほっこりとした。
(兄上の許嫁がこの人で良かった)
いきなり異人の義姉と言われ初めこそ戸惑ったが、様々な話を兄から聞いていた千寿郎は想像よりも優しそうな椎名に安堵していた。
チーン…。
お鈴の澄んだ音が響く。杏寿郎の母親の仏壇に手を合わせると、椎名はペコリと一礼した。杏寿郎と千寿郎が応えて頭を下げる。
「ありがとう椎名」
「ありがとうございます」
「こちらこそ」
椎名は遠慮がちに杏寿郎に尋ねた。
「御父様にもご挨拶できればと思ってるんだけど」
「あまり気持ちの良い対面にはならんと思うが…千寿郎、父上はどこにいらっしゃるのだ?」
「お酒を召されて…部屋で休まれていると思います」
杏寿郎と千寿郎は顔を見合わせると言い淀んだ。ふむ、と顎に手を当て椎名が考える。
「耀哉からは前炎柱は気が臥せっている、としか聞いてないんだけど…もうこの際だからもう少し詳しく聞いてもいいかしら?」
立ち入りすぎではなんて遠慮は糞食らえである。現状の把握無くして傾向も対策もあったものでは無い。それは椎名が冒険者時代に嫌と言うほど体験したものであって、今でも間違いなく通用するものである。
突然事務的に感じるほどテキパキしだした椎名に、杏寿郎はかえって気が楽になりこれまでの経緯を説明した。
「ーーと言うわけで父上は気力を保てなくなり、今は酒を切らせない状態だ」
杏寿郎の説明を聞き終わった椎名はふぅん…と相槌を打った。落ち着かない様子の千寿郎が兄と椎名の顔を交互に見る。
「杏寿郎」
椎名に名を呼ばれ、いつも真っ直ぐな杏寿郎の背中がさらに伸びた。
「私あなたのお父さんに会ったら喧嘩する自信しかないわ」
「よもや!?」
「って言うか嫌い」
「何とっ!!?」
「人として無理」
「そこまで!?!?」
容赦無い批評の三連続に杏寿郎が声を上げる。ぽかん、とそのやりとりを見ていた千寿郎がプーッと吹き出した。
「千寿郎…」
「す、すみません笑ったりして…でも父上にそこまで容赦なく言える方を初めて見ました。なんか…可笑しくて…」
笑いすぎて浮かんだ涙を拭う。微妙な表情になってしまった杏寿郎に椎名が苦笑した。
「別に人として悪どいとかそう言う意味じゃ無いのよ?あなたのお母さんを本当に大切に思っていたのは間違い無いと思うわ。残される苦しみややり切れなさは私だってわからないわけじゃ無い。そういう意味では本当に情の深い人だと思う」
杏寿郎の懐の広さはそんな父親に似ているのだろう。
「だけど!って言うかそれなら余計に!自分の子供全力で大事にしろよって思うわけよ!」
バンバン!と床を叩いて力説する椎名に二人は拝聴する姿勢を取った。反論しては行けない気がする。いや、間違いない。
「仏壇を見ればあなた達がお母さんをどれだけ大事にしてるか、あなた達をお母さんがどれだけ愛していたかぐらい分かるわけよ!なら!そのお母さんが大事にしていたあなた達をお父さん…面倒い、父親はなんて名前?」
「愼寿郎だ」
「そう、じゃあその愼寿郎は腑抜けで無能で役立たずって事よ!」
「呼び捨て…いや、もうそれもどうでも良いぐらい糞味噌だな!」
ここまで言い切られると一周回ってなんかスッキリした。杏寿郎は明るく笑うと結論を出した。
「では会うのは止めておこう!元とはいえ父上は炎柱。乱闘になって屋敷が壊れては行けないからな!」
「そうね。後は精々どこぞで鉢合わせたりしないよう祈ってて」
「いきなり切りかかったり…しないで下さいね義姉上」
さらっと一番物騒なことを言う千寿郎だった。
「蝶屋敷といい杏寿郎の家といい立派ね」
「ありがとう!さぁ、入ってくれ!!」
心なしソワソワしている杏寿郎に促され、椎名は初めて煉獄家の門をくぐった。
ロストアイテムのダメージから回復し、機能回復訓練を終えた数日後の事だ。
「千寿郎!今帰ったぞ!!」
「お帰りなさいませ兄う…え」
「………」
庭の方へと回り込むと、縁側を雑巾掛けしていた姿がパッと振り返った。椎名が思わず吹き出しそうになるのを必死で押し殺す。
(激似!!と言うかお父さんの遺伝子、仕事しすぎでしょ!)
「兄上、こちらは…?」
縁側にきちんと座り直した千寿郎に杏寿郎は元気よく答えた。
「彼女の名前は椎名!俺の婚約者だ!!」
「っ!」
ゲフゲフと椎名は横を向くと咳き込んだ。
(いや、間違ってない。間違ってはいないんだけど!)
ついこの前、お互いの気持ちを確認したばかりで免疫が足りない。椎名の髪に隠れがちな耳が真っ赤なのをキョトンと見上げた後、千寿郎はにっこり微笑んだ。
「では義姉上とお呼びして良いですか?」
「んんっ!」
思わず変な声が出る。杏寿郎が心配して顔を覗き込んできた。
「どうした椎名!?大丈夫か!」
「義姉上、お加減でも…」
「ご、こめん!何でもないから!」
杏寿郎千寿郎兄弟の曇りなき眼が直視できない。そっぽを向いて肩を震わせる椎名に杏寿郎が少し萎れた。
「すまない、家族を紹介できたらと思ったのだが、乗り気ではなかったか?」
「!?」
見当違いな杏寿郎の言葉に椎名は勢いよく振り向くと、その両肩を掴んだ。
「違うからね!って何でそんな考えになるかな!違う違う!!そうじゃなくて…いや、うん、そうじゃなくてね…」
言葉にするのが照れ臭い。椎名はモジモジすると視線を横に逃した。
「気恥ずかしいだけで…こ、婚約者とか…あね、うえ、とか…」
かぁ…と茹で上がり手で顔を覆う椎名に、千寿郎はほっこりとした。
(兄上の許嫁がこの人で良かった)
いきなり異人の義姉と言われ初めこそ戸惑ったが、様々な話を兄から聞いていた千寿郎は想像よりも優しそうな椎名に安堵していた。
チーン…。
お鈴の澄んだ音が響く。杏寿郎の母親の仏壇に手を合わせると、椎名はペコリと一礼した。杏寿郎と千寿郎が応えて頭を下げる。
「ありがとう椎名」
「ありがとうございます」
「こちらこそ」
椎名は遠慮がちに杏寿郎に尋ねた。
「御父様にもご挨拶できればと思ってるんだけど」
「あまり気持ちの良い対面にはならんと思うが…千寿郎、父上はどこにいらっしゃるのだ?」
「お酒を召されて…部屋で休まれていると思います」
杏寿郎と千寿郎は顔を見合わせると言い淀んだ。ふむ、と顎に手を当て椎名が考える。
「耀哉からは前炎柱は気が臥せっている、としか聞いてないんだけど…もうこの際だからもう少し詳しく聞いてもいいかしら?」
立ち入りすぎではなんて遠慮は糞食らえである。現状の把握無くして傾向も対策もあったものでは無い。それは椎名が冒険者時代に嫌と言うほど体験したものであって、今でも間違いなく通用するものである。
突然事務的に感じるほどテキパキしだした椎名に、杏寿郎はかえって気が楽になりこれまでの経緯を説明した。
「ーーと言うわけで父上は気力を保てなくなり、今は酒を切らせない状態だ」
杏寿郎の説明を聞き終わった椎名はふぅん…と相槌を打った。落ち着かない様子の千寿郎が兄と椎名の顔を交互に見る。
「杏寿郎」
椎名に名を呼ばれ、いつも真っ直ぐな杏寿郎の背中がさらに伸びた。
「私あなたのお父さんに会ったら喧嘩する自信しかないわ」
「よもや!?」
「って言うか嫌い」
「何とっ!!?」
「人として無理」
「そこまで!?!?」
容赦無い批評の三連続に杏寿郎が声を上げる。ぽかん、とそのやりとりを見ていた千寿郎がプーッと吹き出した。
「千寿郎…」
「す、すみません笑ったりして…でも父上にそこまで容赦なく言える方を初めて見ました。なんか…可笑しくて…」
笑いすぎて浮かんだ涙を拭う。微妙な表情になってしまった杏寿郎に椎名が苦笑した。
「別に人として悪どいとかそう言う意味じゃ無いのよ?あなたのお母さんを本当に大切に思っていたのは間違い無いと思うわ。残される苦しみややり切れなさは私だってわからないわけじゃ無い。そういう意味では本当に情の深い人だと思う」
杏寿郎の懐の広さはそんな父親に似ているのだろう。
「だけど!って言うかそれなら余計に!自分の子供全力で大事にしろよって思うわけよ!」
バンバン!と床を叩いて力説する椎名に二人は拝聴する姿勢を取った。反論しては行けない気がする。いや、間違いない。
「仏壇を見ればあなた達がお母さんをどれだけ大事にしてるか、あなた達をお母さんがどれだけ愛していたかぐらい分かるわけよ!なら!そのお母さんが大事にしていたあなた達をお父さん…面倒い、父親はなんて名前?」
「愼寿郎だ」
「そう、じゃあその愼寿郎は腑抜けで無能で役立たずって事よ!」
「呼び捨て…いや、もうそれもどうでも良いぐらい糞味噌だな!」
ここまで言い切られると一周回ってなんかスッキリした。杏寿郎は明るく笑うと結論を出した。
「では会うのは止めておこう!元とはいえ父上は炎柱。乱闘になって屋敷が壊れては行けないからな!」
「そうね。後は精々どこぞで鉢合わせたりしないよう祈ってて」
「いきなり切りかかったり…しないで下さいね義姉上」
さらっと一番物騒なことを言う千寿郎だった。