二章
夢小説設定
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「だいぶ力が戻ってきましたね」
自分の手を椎名に握らせるとしのぶはほっと表情を緩めた。あれから3日たって椎名は自力で座れている。
「多分麻痺の効果が付与してあったんだと思う。まだ少し皮膚の感覚が鈍いから」
「安静第一、ですよ?」
「わかってるわ」
出て行くにしても体が万全で無ければ仕事を見つけることも出来ない。椎名は両手を握ったり開いたりして調子を確かめた。
(まだ6割って所かな)
そんな様子の椎名を見て、しのぶは意を決して話を切り出した。
「椎名さん、お伺いしたい事があります」
「え…どうしたの?しのぶ」
「ここを出て行くというのは本気ですか?」
椎名は目を丸くするとしのぶを見つめた。誰かに言ったつもりはなかったが、何故知っているのだろう?
「……」
苦い顔で笑う椎名にしのぶは泣きそうになった。どうして捨てて行こうとしている側がそんな顔をするのか。
「駄目ですよ椎名さん。貴方は鬼殺隊に必要な方なんです。ここにいて下さい」
(まだまだ沢山話をしたいんです。貴女と笑い合ってつまらない話をして…)
「…私は鬼殺隊じゃない。本当に鬼殺隊に必要なのはしのぶや杏寿郎、天元達のような鬼を倒したいと強く願っているもの達よ」
「煉獄さんが柱を、鬼殺隊を辞めると言ったからですか?」
しのぶの問いに椎名の指がピクリと震えた。それを隠すために手を握りしめる。
「……杏寿郎が鬼狩りになる為、炎柱になる為どれほど努力したことか。それを私なんかの為に…」
「それを決めるのは君ではない!」
ダン!と音を立てて扉が開き杏寿郎が入ってきた。す…としのぶが席を外す。代わって杏寿郎がそこへ腰掛けた。まっすぐこちらを見つめてくる杏寿郎を椎名は見ることさえ出来ない。
「俺は君が好きだ。君を助けるためにしたことに後悔はない」
「後悔があるとか無いとかじゃない。あれほど炎柱になる事を切望していたのに…鬼が誰かを殺す話を聞くたび、苦しい思いをするのは杏寿郎なの」
助けられたはずでは…そんな思いは答えのない底無し沼のような問いだ。足元にまとわりつきいつまでも離れない。
杏寿郎にそんな苦しみを与えたくない。自分の所為で…。
「何故そう決めつける!椎名!!君の頭の中の俺ではなく、ここにいる俺を見ろ!!」
杏寿郎は両手で椎名の顔を掴むと、無理やり自分の方へと向けた。杏寿郎の強い眼差しに椎名が耐え切れず叫ぶ。
「人間なんて…100年も生きられないじゃない!!」
「……」
杏寿郎の顔が驚きに染まるが、椎名はもう止められなかった。杏寿郎の袖を力一杯握りしめる。
「杏寿郎が百まで生きて、その後は!?私はまだ300年だって400年だって生きる!貴方がいなくなった後、一人で…そんな長くっ……」
吐き出してしまった言葉の醜さに椎名は俯いた。
(なんて自分勝手な…)
「っ!?」
唐突に椎名の視界が回った。ドサリと音がして頭が枕に沈む。杏寿郎を見上げる形になって椎名は目を瞬いた。
「確かに俺は先に死ぬ!鬼殺隊に身を置いている以上、100年と言わずもっと早く死ぬかもしれん!だが…」
押し倒してしまったために乱れた椎名の髪を指に絡める。
「それが5年、例え3年だろうと君を一生分愛してみせる」
「………」
ポロ…と椎名の目から涙が滑り落ちた。杏寿郎が身を屈め抱き締める。
「俺の我儘を受け入れてくれ」
「………っ……!」
大粒の涙をこぼしながら椎名は杏寿郎にしがみついた。杏寿郎が腕の力を強くする。
「貴方が好き…好きよ杏寿郎っ」
「!!」
杏寿郎は驚いて身を離すと椎名を覗き込んだ。涙でボロボロになった顔で椎名が微笑む。目頭が熱くなり、杏寿郎の目からも涙が溢れた。
「き、杏寿郎!?」
椎名が驚いて体を起こすが、杏寿郎は涙を拭うと照れ臭そうに笑った。
「驚かせてすまん。嬉し泣きなど、生まれて初めてかもしれん」
そっと椎名の手を掬い上げると指先に口付ける。
「…っ」
「これから宜しく頼む椎名」
「…こちらこそ」
頬を赤らめ恥ずかしさに下を向く椎名に杏寿郎は穏やかに微笑んだ。
「煉・獄・さん」
椎名の病室を辞した後、杏寿郎は廊下でしのぶに呼び止められた。しのぶはいつもの通りの笑みを浮かべていた。
「おめでとうございます。晴れて両想いですね」
「ありがとう胡蝶。それで、言いたいことは何かな?」
全く動じない杏寿郎にしのぶの笑みも崩れない。
「いえいえ、ちょっとだけ物申しておこうかと思いまして」
「聞こう」
杏寿郎はしのぶにきちんと向き直った。そこまで拝聴の姿勢をとられると思っていなかったしのぶがにっこり微笑む。
「椎名さんを泣かせたら一服もりますので、そのおつもりで」
「物騒な話だが承知した。無論そんなことをするつもりはないがな」
「そうですか」
杏寿郎の返事に満足したのか踵を返すしのぶに今度は杏寿郎から声をかける。
「意外だな!」
「…何がでしょう」
しのぶは振り返らない。
「椎名が蝶屋敷に入り浸っているのは知っていたが、そこまで仲が良かったのだな!!」
しのぶは振り向くと邪気のない顔でにっこりと笑った。
「女の子の秘密というやつですよ。殿方にはわからない結束というものがありますから」
「そうか!」
今度こそ立ち去るしのぶを見送ると杏寿郎は腕を組み不適に笑った。
「よもやの強敵だな!」
相手にとって不足はない。だが負けるつもりもない。杏寿郎もまた踵を返すと立ち去ったのだった。
自分の手を椎名に握らせるとしのぶはほっと表情を緩めた。あれから3日たって椎名は自力で座れている。
「多分麻痺の効果が付与してあったんだと思う。まだ少し皮膚の感覚が鈍いから」
「安静第一、ですよ?」
「わかってるわ」
出て行くにしても体が万全で無ければ仕事を見つけることも出来ない。椎名は両手を握ったり開いたりして調子を確かめた。
(まだ6割って所かな)
そんな様子の椎名を見て、しのぶは意を決して話を切り出した。
「椎名さん、お伺いしたい事があります」
「え…どうしたの?しのぶ」
「ここを出て行くというのは本気ですか?」
椎名は目を丸くするとしのぶを見つめた。誰かに言ったつもりはなかったが、何故知っているのだろう?
「……」
苦い顔で笑う椎名にしのぶは泣きそうになった。どうして捨てて行こうとしている側がそんな顔をするのか。
「駄目ですよ椎名さん。貴方は鬼殺隊に必要な方なんです。ここにいて下さい」
(まだまだ沢山話をしたいんです。貴女と笑い合ってつまらない話をして…)
「…私は鬼殺隊じゃない。本当に鬼殺隊に必要なのはしのぶや杏寿郎、天元達のような鬼を倒したいと強く願っているもの達よ」
「煉獄さんが柱を、鬼殺隊を辞めると言ったからですか?」
しのぶの問いに椎名の指がピクリと震えた。それを隠すために手を握りしめる。
「……杏寿郎が鬼狩りになる為、炎柱になる為どれほど努力したことか。それを私なんかの為に…」
「それを決めるのは君ではない!」
ダン!と音を立てて扉が開き杏寿郎が入ってきた。す…としのぶが席を外す。代わって杏寿郎がそこへ腰掛けた。まっすぐこちらを見つめてくる杏寿郎を椎名は見ることさえ出来ない。
「俺は君が好きだ。君を助けるためにしたことに後悔はない」
「後悔があるとか無いとかじゃない。あれほど炎柱になる事を切望していたのに…鬼が誰かを殺す話を聞くたび、苦しい思いをするのは杏寿郎なの」
助けられたはずでは…そんな思いは答えのない底無し沼のような問いだ。足元にまとわりつきいつまでも離れない。
杏寿郎にそんな苦しみを与えたくない。自分の所為で…。
「何故そう決めつける!椎名!!君の頭の中の俺ではなく、ここにいる俺を見ろ!!」
杏寿郎は両手で椎名の顔を掴むと、無理やり自分の方へと向けた。杏寿郎の強い眼差しに椎名が耐え切れず叫ぶ。
「人間なんて…100年も生きられないじゃない!!」
「……」
杏寿郎の顔が驚きに染まるが、椎名はもう止められなかった。杏寿郎の袖を力一杯握りしめる。
「杏寿郎が百まで生きて、その後は!?私はまだ300年だって400年だって生きる!貴方がいなくなった後、一人で…そんな長くっ……」
吐き出してしまった言葉の醜さに椎名は俯いた。
(なんて自分勝手な…)
「っ!?」
唐突に椎名の視界が回った。ドサリと音がして頭が枕に沈む。杏寿郎を見上げる形になって椎名は目を瞬いた。
「確かに俺は先に死ぬ!鬼殺隊に身を置いている以上、100年と言わずもっと早く死ぬかもしれん!だが…」
押し倒してしまったために乱れた椎名の髪を指に絡める。
「それが5年、例え3年だろうと君を一生分愛してみせる」
「………」
ポロ…と椎名の目から涙が滑り落ちた。杏寿郎が身を屈め抱き締める。
「俺の我儘を受け入れてくれ」
「………っ……!」
大粒の涙をこぼしながら椎名は杏寿郎にしがみついた。杏寿郎が腕の力を強くする。
「貴方が好き…好きよ杏寿郎っ」
「!!」
杏寿郎は驚いて身を離すと椎名を覗き込んだ。涙でボロボロになった顔で椎名が微笑む。目頭が熱くなり、杏寿郎の目からも涙が溢れた。
「き、杏寿郎!?」
椎名が驚いて体を起こすが、杏寿郎は涙を拭うと照れ臭そうに笑った。
「驚かせてすまん。嬉し泣きなど、生まれて初めてかもしれん」
そっと椎名の手を掬い上げると指先に口付ける。
「…っ」
「これから宜しく頼む椎名」
「…こちらこそ」
頬を赤らめ恥ずかしさに下を向く椎名に杏寿郎は穏やかに微笑んだ。
「煉・獄・さん」
椎名の病室を辞した後、杏寿郎は廊下でしのぶに呼び止められた。しのぶはいつもの通りの笑みを浮かべていた。
「おめでとうございます。晴れて両想いですね」
「ありがとう胡蝶。それで、言いたいことは何かな?」
全く動じない杏寿郎にしのぶの笑みも崩れない。
「いえいえ、ちょっとだけ物申しておこうかと思いまして」
「聞こう」
杏寿郎はしのぶにきちんと向き直った。そこまで拝聴の姿勢をとられると思っていなかったしのぶがにっこり微笑む。
「椎名さんを泣かせたら一服もりますので、そのおつもりで」
「物騒な話だが承知した。無論そんなことをするつもりはないがな」
「そうですか」
杏寿郎の返事に満足したのか踵を返すしのぶに今度は杏寿郎から声をかける。
「意外だな!」
「…何がでしょう」
しのぶは振り返らない。
「椎名が蝶屋敷に入り浸っているのは知っていたが、そこまで仲が良かったのだな!!」
しのぶは振り向くと邪気のない顔でにっこりと笑った。
「女の子の秘密というやつですよ。殿方にはわからない結束というものがありますから」
「そうか!」
今度こそ立ち去るしのぶを見送ると杏寿郎は腕を組み不適に笑った。
「よもやの強敵だな!」
相手にとって不足はない。だが負けるつもりもない。杏寿郎もまた踵を返すと立ち去ったのだった。