「椎名」
　産屋敷かなたにグイグイ手を引かれ椎名は苦笑しながらついて行った。人の成長とはとにかく速いものだ。瞬きの間にはいはいを卒業し、歩いたかと思えば走り出す。
　自分の手を力強く引くかなたの背中に椎名は目を細めた。
「ずいぶん大きくなったね。かなた達は今、何歳だっけ？」
「もう６歳よ。椎名はいつもそれを聞くわ」
　そうだったろうか？椎名は少し首を傾げると笑ってみせた。
　と、
　向かう庭先に複数人の気配を感じ、椎名は足を止めた。どうしたのかと振り返るかなたをふわりと抱き上げる。
「…これは耀哉に問いたださなくちゃ、かしらね？」
　歴戦の闘士としか思えぬ気配に椎名は少し苛ついた。これまで産屋敷の人間とは持ちつ持たれつの関係でやってきたが、"この国の事はこの国の人間が解決すべし”と言う産屋敷の考えで、椎名は一度も表舞台に立ったことが無い。自身もそれでいいと考えてきたのに今になっての一方的な耀哉の独断。
「椎名、行こう？」
庭を指差すかなたに笑いかけると、椎名はその方向へと足を進めた。