二章
夢小説設定
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「っ!」
鬼の振り上げた腕を避けて椎名は大きく飛び退った。
(面倒なタイプの鬼ね!)
街から大きく外れた廃屋の前でかち合った鬼は椎名が一番苦手なタイプの鬼だった。ゴリゴリの力押しのゴリラ系パワー型。
「どうしたぁ?威勢のいいのはもう終いかぁ?」
勝ちを確信しているのか鬼はニタニタした笑いをやめない。椎名は刀を両手で握り直した。
(私の力じゃ硬くて刃が通らない。速さは目で追えているけど、鬼みたいに体力も力も無尽蔵ってわけにもいかないし…)
使える水の呼吸は四つ。途中で呼吸を切り替えるのはリスクが高すぎるので、それを駆使して戦うしかない。
(とにかくスピードで押して隙を作る!!)
グッと地面を踏みしめると、椎名は鬼の懐に飛び込んだ。待ち構えていた鬼が両手で椎名を挟み込もうとする。
ーー水の呼吸 参ノ形 流流舞いーー
「おぉ!?」
技の勢いで体制を変えると後ろを取る。
ーー水の呼吸 肆ノ型 打ち潮ーー
椎名の刀が正確に鬼の首を捕らえた。
(獲った!)
ガキン!と硬い音がして、骨に到達する前に刀が止まった。
「なっ…!」
予想外の事に動きを止めた椎名の左肩に鬼の拳がめり込む。
「…っ」
椎名は日輪刀を手離すと鬼と十分な距離を取った。ズキズキ痛む左腕が少しも動かないのに舌打ちする。
(折れた。呼吸を使っても切れないって…単純に力が足りないって事?)
「惜しかったなぁ、本当に惜しかったぁ。困るよなぁ?鬼狩りにはこいつがなくちゃよぉ」
「………」
笑みを深めた鬼が自分の首から日輪刀を抜くと、傍の木に根元まで深々と突き立てた。べろりと長い舌を舐めずる。
「女は良いよなぁ。柔らかいのが良い。脂が乗ってて旨い。俺は女を内側から食うのが好きなんだぁ」
「………」
椎名は人差し指を横に流すと冒険者時代に愛用していたレイピアを取り出した。正直何の役にも立ちそうに無いけど、無いよりましだ。
(まずは日輪刀を取り戻す)
右手にレイピアを握った椎名を上から下まで舐めるように見た鬼は心底楽しそうに笑った。
「ほぅれ、その足の間。股に開いてるだろぉ?都合の良い穴がよぉ」
言いながら自分の袴の帯を解く。変質者よろしく下半身を剥き出しにした鬼に椎名の顔色がザッと青褪めた。
(冗談じゃ無いわよ!)
椎名は横飛びに木の影に入ると、木々の間を素早く移動した。
(足の膝、関節を切り落とす!)
折れた左の人差し指を動かすとスルンと鬼の目の前にガラスの玉が現れた。
「あん?なんだ…」
カッ!
「っ!!」
太陽のような明るさを放つガラス玉に鬼が顔を覆う。椎名は木影から飛び出すと、膝裏を狙った。
「なーんてなぁ」
「っ!?」
首を鷲掴みにされて椎名の足は地面を離れた。手のレイピアを突き刺そうとする。
「おぉっとぉ」
「がっ、ぁ…!」
振り回され木に強かに背を打ち付けられ、椎名はレイピアを取り落とした。
(意識を保て!何でも良い、方法を…)
「ぐぅ…っ!」
首を掴む力が強くなり椎名は必死に右手でその手を掴んだ。鬼の肩から目玉が沸き出る。
「鬼の目は顔についてるだけのもんじゃねぇんだよなぁ」
「……っ」
鬼の手が伸びビッと衣服の破れる音がする。肩まわりに感じる外気に椎名が眉を寄せた。
「ひひっ、異人を食うのは初めてだぁ」
「…!」
鬼の舌が肩の辺りを舐め回す。椎名は不快感から硬く目を閉じた。
ーー炎の呼吸 壱ノ型 不知火ーー
ゴォッ!
炎が鬼と椎名の間に走った。椎名を掴んでいた鬼の腕が切り落とされる。
「あぁ?」
椎名が目の前から消えた事を不思議に思い、鬼が振り返る。
離れた所に椎名を抱えた杏寿郎の後ろ姿を認めて鬼が声を上げた。
「おぉい!邪魔すんじゃねぇよぉ!!」
ビキッと杏寿郎の額に青筋が走った。椎名をゆっくり地面に下ろすと羽織をかける。
「…き、じゅ…ろ……」
椎名が気を失っただけなのを確認すると、杏寿郎はゆっくり鬼の方へ振り返った。
「何人か喰っているようだな」
「ひひっ、女は足開かせて突っ込んでやればすぐ静かになるからなぁ。女の内側は旨いんだよぉ!」
ビキビキビキと自分の血管が音を立てるのが杏寿郎にはよくわかった。腰を落とすと地面を蹴る。
「だからその女もっ!?」
ゴォッと音がして一瞬のうちに鬼の首が宙にまった。
「くわせ…ぁ?あぁぁっ!?」
「それ以上喋るな。不愉快だ」
血ぶりで炎を払うと納刀する。鬼が恐怖に目を見開いたまま塵になっていくのを見送ると、杏寿郎は木に突き刺さっている日輪刀に手をかけた。
「むんっ!」
刀に傷がつかぬよう注意を払い引き抜くが、既に鬼との戦いで刃こぼれが酷かった。
(椎名の日輪刀をゆっくり見るのは初めてだな)
青と緑が混じり合ったような不可思議な色合いが美しい。杏寿郎は鞘を拾うとそれをそっと納刀した。レイピアも拾うと背中に隠す。
椎名の元に戻ると隊服の中に来ている白いシャツを脱ぐ。裂いて布地にすると折れた椎名の左腕を固定した。
「…ぅ…っ」
「もう少し我慢してくれ。すぐ蝶屋敷に連れて行くからな」
自分の隊服をなおすと椎名の体に響かないよう細心の注意を払って抱き上げる。熱があるのか隊服越しの椎名は熱かった。
鬼の振り上げた腕を避けて椎名は大きく飛び退った。
(面倒なタイプの鬼ね!)
街から大きく外れた廃屋の前でかち合った鬼は椎名が一番苦手なタイプの鬼だった。ゴリゴリの力押しのゴリラ系パワー型。
「どうしたぁ?威勢のいいのはもう終いかぁ?」
勝ちを確信しているのか鬼はニタニタした笑いをやめない。椎名は刀を両手で握り直した。
(私の力じゃ硬くて刃が通らない。速さは目で追えているけど、鬼みたいに体力も力も無尽蔵ってわけにもいかないし…)
使える水の呼吸は四つ。途中で呼吸を切り替えるのはリスクが高すぎるので、それを駆使して戦うしかない。
(とにかくスピードで押して隙を作る!!)
グッと地面を踏みしめると、椎名は鬼の懐に飛び込んだ。待ち構えていた鬼が両手で椎名を挟み込もうとする。
ーー水の呼吸 参ノ形 流流舞いーー
「おぉ!?」
技の勢いで体制を変えると後ろを取る。
ーー水の呼吸 肆ノ型 打ち潮ーー
椎名の刀が正確に鬼の首を捕らえた。
(獲った!)
ガキン!と硬い音がして、骨に到達する前に刀が止まった。
「なっ…!」
予想外の事に動きを止めた椎名の左肩に鬼の拳がめり込む。
「…っ」
椎名は日輪刀を手離すと鬼と十分な距離を取った。ズキズキ痛む左腕が少しも動かないのに舌打ちする。
(折れた。呼吸を使っても切れないって…単純に力が足りないって事?)
「惜しかったなぁ、本当に惜しかったぁ。困るよなぁ?鬼狩りにはこいつがなくちゃよぉ」
「………」
笑みを深めた鬼が自分の首から日輪刀を抜くと、傍の木に根元まで深々と突き立てた。べろりと長い舌を舐めずる。
「女は良いよなぁ。柔らかいのが良い。脂が乗ってて旨い。俺は女を内側から食うのが好きなんだぁ」
「………」
椎名は人差し指を横に流すと冒険者時代に愛用していたレイピアを取り出した。正直何の役にも立ちそうに無いけど、無いよりましだ。
(まずは日輪刀を取り戻す)
右手にレイピアを握った椎名を上から下まで舐めるように見た鬼は心底楽しそうに笑った。
「ほぅれ、その足の間。股に開いてるだろぉ?都合の良い穴がよぉ」
言いながら自分の袴の帯を解く。変質者よろしく下半身を剥き出しにした鬼に椎名の顔色がザッと青褪めた。
(冗談じゃ無いわよ!)
椎名は横飛びに木の影に入ると、木々の間を素早く移動した。
(足の膝、関節を切り落とす!)
折れた左の人差し指を動かすとスルンと鬼の目の前にガラスの玉が現れた。
「あん?なんだ…」
カッ!
「っ!!」
太陽のような明るさを放つガラス玉に鬼が顔を覆う。椎名は木影から飛び出すと、膝裏を狙った。
「なーんてなぁ」
「っ!?」
首を鷲掴みにされて椎名の足は地面を離れた。手のレイピアを突き刺そうとする。
「おぉっとぉ」
「がっ、ぁ…!」
振り回され木に強かに背を打ち付けられ、椎名はレイピアを取り落とした。
(意識を保て!何でも良い、方法を…)
「ぐぅ…っ!」
首を掴む力が強くなり椎名は必死に右手でその手を掴んだ。鬼の肩から目玉が沸き出る。
「鬼の目は顔についてるだけのもんじゃねぇんだよなぁ」
「……っ」
鬼の手が伸びビッと衣服の破れる音がする。肩まわりに感じる外気に椎名が眉を寄せた。
「ひひっ、異人を食うのは初めてだぁ」
「…!」
鬼の舌が肩の辺りを舐め回す。椎名は不快感から硬く目を閉じた。
ーー炎の呼吸 壱ノ型 不知火ーー
ゴォッ!
炎が鬼と椎名の間に走った。椎名を掴んでいた鬼の腕が切り落とされる。
「あぁ?」
椎名が目の前から消えた事を不思議に思い、鬼が振り返る。
離れた所に椎名を抱えた杏寿郎の後ろ姿を認めて鬼が声を上げた。
「おぉい!邪魔すんじゃねぇよぉ!!」
ビキッと杏寿郎の額に青筋が走った。椎名をゆっくり地面に下ろすと羽織をかける。
「…き、じゅ…ろ……」
椎名が気を失っただけなのを確認すると、杏寿郎はゆっくり鬼の方へ振り返った。
「何人か喰っているようだな」
「ひひっ、女は足開かせて突っ込んでやればすぐ静かになるからなぁ。女の内側は旨いんだよぉ!」
ビキビキビキと自分の血管が音を立てるのが杏寿郎にはよくわかった。腰を落とすと地面を蹴る。
「だからその女もっ!?」
ゴォッと音がして一瞬のうちに鬼の首が宙にまった。
「くわせ…ぁ?あぁぁっ!?」
「それ以上喋るな。不愉快だ」
血ぶりで炎を払うと納刀する。鬼が恐怖に目を見開いたまま塵になっていくのを見送ると、杏寿郎は木に突き刺さっている日輪刀に手をかけた。
「むんっ!」
刀に傷がつかぬよう注意を払い引き抜くが、既に鬼との戦いで刃こぼれが酷かった。
(椎名の日輪刀をゆっくり見るのは初めてだな)
青と緑が混じり合ったような不可思議な色合いが美しい。杏寿郎は鞘を拾うとそれをそっと納刀した。レイピアも拾うと背中に隠す。
椎名の元に戻ると隊服の中に来ている白いシャツを脱ぐ。裂いて布地にすると折れた椎名の左腕を固定した。
「…ぅ…っ」
「もう少し我慢してくれ。すぐ蝶屋敷に連れて行くからな」
自分の隊服をなおすと椎名の体に響かないよう細心の注意を払って抱き上げる。熱があるのか隊服越しの椎名は熱かった。