二章
夢小説設定
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十二鬼月の佩狼を倒した杏寿郎はボロボロに傷ついており、蝶屋敷行きとなっていた。
「銃創で左腕は骨折しています。打身と切り傷多数、足の骨のヒビ。しばらく療養ですね」
「入院だろうか!?」
「二、三日はここに泊まりです。その後は御自宅に戻られても良いでしょう」
「しのぶ、いるー?」
「?」
しのぶの診察を受けていると椎名が現れた。紙に包まれた薬草を見て、しのぶが小躍りして喜ぶ。突然現れた異人としのぶの様子に杏寿郎が目を丸くする。
「まぁ、椎名さん!こんな珍しい薬草、よく見つけてきましたね」
「南の方の湿地帯に生えてるのを持ってきたのよ。根ごとだから増やせないかしらね」
「もちろんやってみましょう。温室の中に植えてみますね」
株分けして増やしましょう、とうきうきのしのぶを他所に杏寿郎はポンと手を打つと声を上げた。
「あの時の!」
「ん?」
「椎名さん、煉獄さんをご存知なのですか?」
「んん?」
「以前山中での鬼殺の時に仲間を救ってくれた!」
首を傾げるいっそうの椎名に杏寿郎は斯々然々と説明をするが、椎名は全く思い出せず首を横に振った。
「ごめんなさいね。正直方々回っているからわからないわ」
「よもや!」
覚えられやすい容姿をしていると自覚していた杏寿郎は丸っと忘れられている事に少なくないショックを受けた。が、そんな事は意に解さないしのぶが杏寿郎を強制退室させる。
「診察は以上です。薬は後でお持ちしますからベッドで寝ていて下さい。言っておきますが、鍛錬なんてしようものならその腕使い物にならなくなりますからね」
「わ、わかった!」
実はそんなことをチラと考えていた杏寿郎は慌てて返事をすると病室へと戻っていった。
ベッドに入り大人しくしているがどうにも落ち着かない。そんな杏寿郎の病室に椎名が薬を持ってはいってきた。
「しのぶから聞いたわ。随分な怪我だったのね」
薬を横の小机に置くと杏寿郎を見つめる。見透かすような瞳に何もかも吐露したい衝動に駆られて杏寿郎は拳を握りしめた。
「…十二鬼月を倒した。だか奴は下弦の弍。もっともっと強くならなければ」
今にも引きちぎれそうな糸のように張り詰めた様子の煉獄に居た堪れなく、椎名は杏寿郎の頭を撫でた。
ビックリ顔の杏寿郎に笑いかける。
「生きてる。生きてるから先がある。大丈夫、強くなれるわ」
「……」
杏寿郎の笑顔がゆっくりと消えていき、ギブスで固められた自分の腕に落ちた。
(何だろう?自分の中の何か…緩んだ?)
杏寿郎はほぼ無意識のうちに口を開いていた。
「十二鬼月…佩狼に言われた。惨めだと。誰にも認められず、知られずに死んでいくのだと。それで構わないのだと俺は答えた…」
取り留めなく話す杏寿郎に椎名は口を挟まない。
「だが…」
ーー寂しいーー
浮かんできた言葉に杏寿郎は自分で驚いた。弟の千寿郎も弟子の甘露寺もいるのに何故?手で口元を覆い杏寿郎は目を見開いた。
(俺は孤独…なのか?)
母は早くに亡くなり、努力しても努力しても父に認められない自分。炎の呼吸を継いでほしい甘露寺は派生の呼吸に落ち着き、千寿郎は優し過ぎて戦うことさえ難しいだろう。
大丈夫だと皆に、自分に言い聞かせるたび足元から這い上がってくる不安。
(なんと、不甲斐ない)
杏寿郎はきつく目を閉じると唇を噛み締めた。
「どうして?」
「っ!!」
杏寿郎はハッとすると顔を上げた。椎名はまだ杏寿郎の頭を撫でくりまわしーーとても優しく微笑んでいた。
「………」
「貴方には家族がいて、隊士の仲間も、隠も、藤の家の者も皆んないる。貴方を忘れないし、想っているし、祈っている」
「………」
何かが込み上げて杏寿郎は再び目を閉じた。こんなことで泣くとは男子にあるまじきだ。
「貴方の姿勢はみんなが認めているよ」
「その通り、と横から失礼しますね」
入り口にしのぶが現れ、杏寿郎は姿勢を正した。
「蟲柱様」
「あぁ、そのままで。それに敬称も必要ありませんよ」
椎名が椅子から立ち上がり離れると、しのぶが代わりに腰掛け一通の手紙を差し出した。
「これは?」
「煉獄杏寿郎殿」
「はっ!」
しのぶの改まった呼びかけに杏寿郎は背筋をさらに伸ばした。しのぶが深々と頭を下げる。
「本日をもって炎柱に昇格されましたこと、心よりお喜び申し上げます」
「………ははっ!お言葉誠にありがとうございます!これからも柱として恥ずかしくないよう精進いたします!!」
杏寿郎も深く頭を下げると手紙を受け取る。差出人には産屋敷耀哉と書かれていた。
炎柱。その二文字に杏寿郎は自分の中にビシッと一本芯が通った気がした。
「本来ならお館様より直接お渡しするものなのですが、柱合会議はこの前終わったばかりですし煉獄さんも怪我をしていらっしゃるので手紙ですまない、と伝えてほしいそうです」
「勿体無いお言葉です」
喜んでくれるであろう人たちの顔を思い浮かべ、杏寿郎の表情は緩んだのだった。
「銃創で左腕は骨折しています。打身と切り傷多数、足の骨のヒビ。しばらく療養ですね」
「入院だろうか!?」
「二、三日はここに泊まりです。その後は御自宅に戻られても良いでしょう」
「しのぶ、いるー?」
「?」
しのぶの診察を受けていると椎名が現れた。紙に包まれた薬草を見て、しのぶが小躍りして喜ぶ。突然現れた異人としのぶの様子に杏寿郎が目を丸くする。
「まぁ、椎名さん!こんな珍しい薬草、よく見つけてきましたね」
「南の方の湿地帯に生えてるのを持ってきたのよ。根ごとだから増やせないかしらね」
「もちろんやってみましょう。温室の中に植えてみますね」
株分けして増やしましょう、とうきうきのしのぶを他所に杏寿郎はポンと手を打つと声を上げた。
「あの時の!」
「ん?」
「椎名さん、煉獄さんをご存知なのですか?」
「んん?」
「以前山中での鬼殺の時に仲間を救ってくれた!」
首を傾げるいっそうの椎名に杏寿郎は斯々然々と説明をするが、椎名は全く思い出せず首を横に振った。
「ごめんなさいね。正直方々回っているからわからないわ」
「よもや!」
覚えられやすい容姿をしていると自覚していた杏寿郎は丸っと忘れられている事に少なくないショックを受けた。が、そんな事は意に解さないしのぶが杏寿郎を強制退室させる。
「診察は以上です。薬は後でお持ちしますからベッドで寝ていて下さい。言っておきますが、鍛錬なんてしようものならその腕使い物にならなくなりますからね」
「わ、わかった!」
実はそんなことをチラと考えていた杏寿郎は慌てて返事をすると病室へと戻っていった。
ベッドに入り大人しくしているがどうにも落ち着かない。そんな杏寿郎の病室に椎名が薬を持ってはいってきた。
「しのぶから聞いたわ。随分な怪我だったのね」
薬を横の小机に置くと杏寿郎を見つめる。見透かすような瞳に何もかも吐露したい衝動に駆られて杏寿郎は拳を握りしめた。
「…十二鬼月を倒した。だか奴は下弦の弍。もっともっと強くならなければ」
今にも引きちぎれそうな糸のように張り詰めた様子の煉獄に居た堪れなく、椎名は杏寿郎の頭を撫でた。
ビックリ顔の杏寿郎に笑いかける。
「生きてる。生きてるから先がある。大丈夫、強くなれるわ」
「……」
杏寿郎の笑顔がゆっくりと消えていき、ギブスで固められた自分の腕に落ちた。
(何だろう?自分の中の何か…緩んだ?)
杏寿郎はほぼ無意識のうちに口を開いていた。
「十二鬼月…佩狼に言われた。惨めだと。誰にも認められず、知られずに死んでいくのだと。それで構わないのだと俺は答えた…」
取り留めなく話す杏寿郎に椎名は口を挟まない。
「だが…」
ーー寂しいーー
浮かんできた言葉に杏寿郎は自分で驚いた。弟の千寿郎も弟子の甘露寺もいるのに何故?手で口元を覆い杏寿郎は目を見開いた。
(俺は孤独…なのか?)
母は早くに亡くなり、努力しても努力しても父に認められない自分。炎の呼吸を継いでほしい甘露寺は派生の呼吸に落ち着き、千寿郎は優し過ぎて戦うことさえ難しいだろう。
大丈夫だと皆に、自分に言い聞かせるたび足元から這い上がってくる不安。
(なんと、不甲斐ない)
杏寿郎はきつく目を閉じると唇を噛み締めた。
「どうして?」
「っ!!」
杏寿郎はハッとすると顔を上げた。椎名はまだ杏寿郎の頭を撫でくりまわしーーとても優しく微笑んでいた。
「………」
「貴方には家族がいて、隊士の仲間も、隠も、藤の家の者も皆んないる。貴方を忘れないし、想っているし、祈っている」
「………」
何かが込み上げて杏寿郎は再び目を閉じた。こんなことで泣くとは男子にあるまじきだ。
「貴方の姿勢はみんなが認めているよ」
「その通り、と横から失礼しますね」
入り口にしのぶが現れ、杏寿郎は姿勢を正した。
「蟲柱様」
「あぁ、そのままで。それに敬称も必要ありませんよ」
椎名が椅子から立ち上がり離れると、しのぶが代わりに腰掛け一通の手紙を差し出した。
「これは?」
「煉獄杏寿郎殿」
「はっ!」
しのぶの改まった呼びかけに杏寿郎は背筋をさらに伸ばした。しのぶが深々と頭を下げる。
「本日をもって炎柱に昇格されましたこと、心よりお喜び申し上げます」
「………ははっ!お言葉誠にありがとうございます!これからも柱として恥ずかしくないよう精進いたします!!」
杏寿郎も深く頭を下げると手紙を受け取る。差出人には産屋敷耀哉と書かれていた。
炎柱。その二文字に杏寿郎は自分の中にビシッと一本芯が通った気がした。
「本来ならお館様より直接お渡しするものなのですが、柱合会議はこの前終わったばかりですし煉獄さんも怪我をしていらっしゃるので手紙ですまない、と伝えてほしいそうです」
「勿体無いお言葉です」
喜んでくれるであろう人たちの顔を思い浮かべ、杏寿郎の表情は緩んだのだった。