この日この時間に産屋敷家に来て欲しい。

　夜更けのとある地方の森の中、これまで一度もない呼び出し方をされて椎名は眉をひそめた。いつもは鬼殺隊の隊士がいない夜の訪問が主だったのにどうしたというのか。
　知らせを持ってきた鎹鴉を見たが、長距離を移動してきた鴉は疲れ切っており、椎名の腕の中ですでに眠りについている。
「ま、いいか」
　耀哉の事だから椎名の持っているアイテムから又何か使えるアイデアを思いついたのかもしれない。職人との顔合わせなら昼間なのも頷ける。
「移動は明日にしようか」
　この辺の小物の鬼達は一掃したが移動は昼間のほうが楽だ。椎名は背の高い木に登ると枝に腰掛け、生い茂る葉に隠れるように横になった。
「お前は温かいね」
　腹の上で眠るカラスのスベスベとした背を撫でると目を閉じる。
　椎名が産屋敷家に到着したのは約束の一時間前のことだった。