一章
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「なんでテメェがこんな所にいやがるぅ」
不死川の言葉に刀を鞘に収めた椎名は首を傾げた。村から外れた山間の民家にいた鬼を始末し終えた所に、不死川の方がやってきた上での台詞である。
「貴方が、ここに来たのよね?」
文句を言われるのは甚だ理不尽である。しかし不死川はウルセェ!と手近な桶を蹴り飛ばした。廃屋だったのが幸いして咎めるものはいない。羽織りに血がついている所を見ると不死川もまた鬼を斬りながらここまで来たのだろう。
「ちっ!鬼の気配がまだプンプンしやがるじゃねぇか!」
「そうなのよね」
イラつく様子の不死川に構わず椎名はあたりを見回した。だが気配はあれど姿は見えず、又襲ってくる気配もない。しかし逃げていくのでもないので機会を伺っているのだろう。
不死川は舌打ちすると日輪刀で自分の腕を切りつけた。
「!?何してるの!!」
「ウルセェ!黙って見てろぉ!!」
ボタボタと血が滴り落ちる。眉を潜める椎名を他所に不死川は声を張り上げた。
「ほら来いよぉ!お前ら鬼の大好物の稀血だぁ!」
ザザッ!
不死川の声をきっかけに小さい影がいくつも躍りでた。
――風の呼吸 陸ノ型 黒風烟嵐――
細かな斬撃にボトボトと地面に落ちたそれに椎名は眉を寄せた。
(子供…?)
赤子から精々三つまでの幼子の亡骸が塵となって消えていく。
「うふ……うふ……」
「「!!」」
着物を引き摺る音に警戒を向ければそこには着物を長く引き摺った女の鬼がいた。
「子を切り捨てるとは…鬼にも劣る所業」
「どのみちテメェに食われたガキ共だろうがよぉ。ならひと思いに楽にしてやった方がよほど良いぜ」
「くふ…ふふ……」
鬼が着物を広げるとその影から子の姿を鬼が次々湧いて出た。
「いくらでもいるとも…喰った分だけたぁくさん」
「ちっ!胸糞悪ぃ!!」
女の鬼の背後に銀の影が走った。
日輪刀が翻り胴を薙ぎ払う。バサリと着物は落ちたが鬼は素早い動きで距離を取った。
「おぉ、怖い…」
椎名の攻撃を嘲笑う鬼だったが椎名を見た瞬間息を止め慄いた。血走った目で椎名が睨みつける。
「子ばかりを喰うのか」
ザワリ…と怒りに椎名の髪が揺れた。鬼が気圧され一歩下がる。そこを不死川は見逃さなかった。
――風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風――
「ひぃっ!」
土煙が上がり視界が遮られる。次の瞬間煙から飛び出してきたのはよく似た顔立ちをした男の兄弟鬼だった。
「ふひっ…ひひひ!この子らは他のとは違うぞ!お互いを守ろうとしたばかりに結局妾に喰われた阿呆な兄弟だがこやつらには他のより力を…」
ザンッ!!
女の鬼が言い終えるより先に椎名の刀が兄弟鬼を葬っていた。
「どう違うのかわからなくて残念だったなぁオイ!」
不死川の目にも怒気がこもる。怒れる鬼狩りに挟まれ鬼は不快な叫び声を上げた。
「キィエェェェェッ!何が悪い何が悪い!子など必要ない!!子など足手まといよ!!子など…!子など…!!」
足元の影が膨れ上がり二十を超える子鬼が湧いてくる。ちっ!と舌打ちする不死川の肩を椎名が掴んだ。
「本体宜しく」
「…何だ意外と冷静じゃねぇか。頭に血ぃ上らせて大暴れするかと思ったぜぇ」
「いや、あの叫び声で返って落ちついたわ」
鬼に人の道理は通用しないのだ。だから切らねばならぬ。
「ガキ斬るのは寝覚めが悪いだろぉ、俺がやる」
さっきのブチ切れ方を見るに椎名は余程子供が好きなのだろう。思いがけない不死川の気遣いに、しかし椎名は首を横に振った。
「兄弟の鬼見せられて怒りちらしてた人に言われてもね。大丈夫よ、露払いは私の役目だから」
「そうかよぉ」
抜き身の刀を片手にぶら下げて椎名が影の中へ突っ込む。小鬼の手が届く一歩前で大きく跳躍すると両手で刀を振るう。
――水の呼吸 参ノ型 流流舞い――
子鬼の首が宙に舞う。椎名が地面に足をつける頃には全ての子鬼は塵となって消えていた。
「なんじゃと!?」
「テメェは余所見してんじゃねぇよ!」
「っ!!」
――風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ――
まさに一閃。鬼の首が重い音を立てて地面に転がる。その姿が塵になるのを見送ると不死川が口を開いた。
「ガキ…好きなのかぁ?」
「………私達一族は長命故に子に恵まれにくいの。子は宝なのよ」
「そうかよぉ」
不死川は長く長く沈黙した後、ズイと自分の腕を差し出した。まだ生々しい血がこびり付いている。
「ん」
「…何?」
「血が飯代わりなんだろぉ」
「……嫌よ。それ鬼の血でしょ?より好みぐらいしたいわ」
そんな物口にしてお腹でも壊したらどうしてくれる。椎名の返事に不死川は眉間に皺を寄せた。
「んな訳あるかぁ。これは俺の血だぁ」
「……はっ!?自分の血!?何で?何やってるの貴方!!えぇーっ!?刀傷!?自傷!!?馬鹿じゃないの!?しのぶに張り倒され…」
結構な量の出血をしている不死川に椎名は血相を変えて叫んだ。不死川のこめかみに血管が浮かぶ。
「ウルセェェェ!良いから飲めぇ!!」
「むぐっ!?」
口の中に腕を押し込まれ椎名は呻いた。不死川から慌てて離れる。フン!と不死川は鼻を鳴らした。
「俺は稀血って言って鬼が特に好む…」
「うっぇ…マッズ!」
「……はぁ!?」
椎名は木の陰に行くと口に入った血を吐き出した。ゲホゲホと咳き込む椎名に困惑顔のまま不死川が水を差し出す。
口をゆすぎ顔についた血も綺麗に洗い流して椎名は漸く一息ついた。
「…オイ、大丈夫かぁ」
気持ち遠慮がちに声をかける不死川を椎名はキッと睨みつけた。
「なんて血の味させてんのよ!!ねぇちょっと病気なんじゃないの!?食生活乱れてるとしか思えないんだけど!?」
「そ…そんなに、かよぉ…」
「傷の手当てがてらしのぶに検査して貰いなさいよね!!」
「お、おぅ…」
椎名はプリプリ怒りながら去っていった。
「何だアイツ…鬼と真逆の反応しやがって」
呟く不死川の顔は意外と穏やかだった。
不死川の言葉に刀を鞘に収めた椎名は首を傾げた。村から外れた山間の民家にいた鬼を始末し終えた所に、不死川の方がやってきた上での台詞である。
「貴方が、ここに来たのよね?」
文句を言われるのは甚だ理不尽である。しかし不死川はウルセェ!と手近な桶を蹴り飛ばした。廃屋だったのが幸いして咎めるものはいない。羽織りに血がついている所を見ると不死川もまた鬼を斬りながらここまで来たのだろう。
「ちっ!鬼の気配がまだプンプンしやがるじゃねぇか!」
「そうなのよね」
イラつく様子の不死川に構わず椎名はあたりを見回した。だが気配はあれど姿は見えず、又襲ってくる気配もない。しかし逃げていくのでもないので機会を伺っているのだろう。
不死川は舌打ちすると日輪刀で自分の腕を切りつけた。
「!?何してるの!!」
「ウルセェ!黙って見てろぉ!!」
ボタボタと血が滴り落ちる。眉を潜める椎名を他所に不死川は声を張り上げた。
「ほら来いよぉ!お前ら鬼の大好物の稀血だぁ!」
ザザッ!
不死川の声をきっかけに小さい影がいくつも躍りでた。
――風の呼吸 陸ノ型 黒風烟嵐――
細かな斬撃にボトボトと地面に落ちたそれに椎名は眉を寄せた。
(子供…?)
赤子から精々三つまでの幼子の亡骸が塵となって消えていく。
「うふ……うふ……」
「「!!」」
着物を引き摺る音に警戒を向ければそこには着物を長く引き摺った女の鬼がいた。
「子を切り捨てるとは…鬼にも劣る所業」
「どのみちテメェに食われたガキ共だろうがよぉ。ならひと思いに楽にしてやった方がよほど良いぜ」
「くふ…ふふ……」
鬼が着物を広げるとその影から子の姿を鬼が次々湧いて出た。
「いくらでもいるとも…喰った分だけたぁくさん」
「ちっ!胸糞悪ぃ!!」
女の鬼の背後に銀の影が走った。
日輪刀が翻り胴を薙ぎ払う。バサリと着物は落ちたが鬼は素早い動きで距離を取った。
「おぉ、怖い…」
椎名の攻撃を嘲笑う鬼だったが椎名を見た瞬間息を止め慄いた。血走った目で椎名が睨みつける。
「子ばかりを喰うのか」
ザワリ…と怒りに椎名の髪が揺れた。鬼が気圧され一歩下がる。そこを不死川は見逃さなかった。
――風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風――
「ひぃっ!」
土煙が上がり視界が遮られる。次の瞬間煙から飛び出してきたのはよく似た顔立ちをした男の兄弟鬼だった。
「ふひっ…ひひひ!この子らは他のとは違うぞ!お互いを守ろうとしたばかりに結局妾に喰われた阿呆な兄弟だがこやつらには他のより力を…」
ザンッ!!
女の鬼が言い終えるより先に椎名の刀が兄弟鬼を葬っていた。
「どう違うのかわからなくて残念だったなぁオイ!」
不死川の目にも怒気がこもる。怒れる鬼狩りに挟まれ鬼は不快な叫び声を上げた。
「キィエェェェェッ!何が悪い何が悪い!子など必要ない!!子など足手まといよ!!子など…!子など…!!」
足元の影が膨れ上がり二十を超える子鬼が湧いてくる。ちっ!と舌打ちする不死川の肩を椎名が掴んだ。
「本体宜しく」
「…何だ意外と冷静じゃねぇか。頭に血ぃ上らせて大暴れするかと思ったぜぇ」
「いや、あの叫び声で返って落ちついたわ」
鬼に人の道理は通用しないのだ。だから切らねばならぬ。
「ガキ斬るのは寝覚めが悪いだろぉ、俺がやる」
さっきのブチ切れ方を見るに椎名は余程子供が好きなのだろう。思いがけない不死川の気遣いに、しかし椎名は首を横に振った。
「兄弟の鬼見せられて怒りちらしてた人に言われてもね。大丈夫よ、露払いは私の役目だから」
「そうかよぉ」
抜き身の刀を片手にぶら下げて椎名が影の中へ突っ込む。小鬼の手が届く一歩前で大きく跳躍すると両手で刀を振るう。
――水の呼吸 参ノ型 流流舞い――
子鬼の首が宙に舞う。椎名が地面に足をつける頃には全ての子鬼は塵となって消えていた。
「なんじゃと!?」
「テメェは余所見してんじゃねぇよ!」
「っ!!」
――風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ――
まさに一閃。鬼の首が重い音を立てて地面に転がる。その姿が塵になるのを見送ると不死川が口を開いた。
「ガキ…好きなのかぁ?」
「………私達一族は長命故に子に恵まれにくいの。子は宝なのよ」
「そうかよぉ」
不死川は長く長く沈黙した後、ズイと自分の腕を差し出した。まだ生々しい血がこびり付いている。
「ん」
「…何?」
「血が飯代わりなんだろぉ」
「……嫌よ。それ鬼の血でしょ?より好みぐらいしたいわ」
そんな物口にしてお腹でも壊したらどうしてくれる。椎名の返事に不死川は眉間に皺を寄せた。
「んな訳あるかぁ。これは俺の血だぁ」
「……はっ!?自分の血!?何で?何やってるの貴方!!えぇーっ!?刀傷!?自傷!!?馬鹿じゃないの!?しのぶに張り倒され…」
結構な量の出血をしている不死川に椎名は血相を変えて叫んだ。不死川のこめかみに血管が浮かぶ。
「ウルセェェェ!良いから飲めぇ!!」
「むぐっ!?」
口の中に腕を押し込まれ椎名は呻いた。不死川から慌てて離れる。フン!と不死川は鼻を鳴らした。
「俺は稀血って言って鬼が特に好む…」
「うっぇ…マッズ!」
「……はぁ!?」
椎名は木の陰に行くと口に入った血を吐き出した。ゲホゲホと咳き込む椎名に困惑顔のまま不死川が水を差し出す。
口をゆすぎ顔についた血も綺麗に洗い流して椎名は漸く一息ついた。
「…オイ、大丈夫かぁ」
気持ち遠慮がちに声をかける不死川を椎名はキッと睨みつけた。
「なんて血の味させてんのよ!!ねぇちょっと病気なんじゃないの!?食生活乱れてるとしか思えないんだけど!?」
「そ…そんなに、かよぉ…」
「傷の手当てがてらしのぶに検査して貰いなさいよね!!」
「お、おぅ…」
椎名はプリプリ怒りながら去っていった。
「何だアイツ…鬼と真逆の反応しやがって」
呟く不死川の顔は意外と穏やかだった。