「今帰ったぞ！」
「あー！天元様！！」
「お帰りなさい！」
「お勤めご苦労さまでした！」
（本当に嫁【達】だ）
　宇髄と共にやってきた鳴屋敷で三人の女性に出迎えられて椎名はそこそこドン引いた。
（と言うかこの人達…）
　身のこなしが一般人ではない。キャッキャと宇髄に群がる三人の事情が僅かに見えた気がして椎名は口を閉じた。
「紹介するぜ。雛鶴とまきを、須磨だ」
　嫁達に我先にと世話を焼かれながら宇髄は椎名を振り返った。椎名に気づいた雛鶴が慌ててやってくる。
「ごめんなさい！お客様なんて滅多に来ないものだから」
「あぁ、いや」
　鬼殺隊の屋敷ならば当然のことだろう。手をふる椎名の横にヒョイと現れた須磨がくん…と鼻を利かせた。
「えっ！くさっ！！」
「えぇっ！？」
　初対面で言われたくはない台詞である。椎名ががっつりショックを受けていると宇髄がニヤニヤと笑った。
「あー、そいつなー。さっき派手に野生の熊に突っ込んでたからな」
「熊って何！？金太郎なわけ！？」
「なんでそうなる！？」
　思わず全力で突っ込む。まきをが須磨の頭をポカリとやった。
「馬鹿なこと言ってるんじゃないよ。女湯の方も急いで支度しな」
「いたーい！まきをさんがぶったぁーっ！」
「あ、いや私は…」
「遠慮なさらないで下さい。天元様と一緒だったってことは鬼殺隊の関係の方なんですよね？ゆっくりしていって下さい」
「でも…」
「だーめーでーすぅー！そんなくっさいままでいるとか信じられない！気持ち悪いんですよ！！一緒にいる人の事とか考えてくれますぅ？」
「だから須磨！あんたはぁ！！」
「いやー！天元様ぁ～！！」
「………」
　最早誰も椎名の言葉など聞いちゃいない。雛鶴にささっと着替えを渡されるとニヤニヤする宇髄に見送られ、椎名は風呂を借りたのだった。