一章
夢小説設定
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「右に2、左に3」
「んじゃこのまま真っ直ぐ。俺右ね」
「…まぁ良いけど」
山の中を駆け抜けながらしれっと楽な方を選ぶ宇髄に椎名は小さく笑った。
暗い森の中、木々の影にうごめく異形。
「ったくド派手に嫌な迎えだぜ」
「嫁?」
「んな訳あるか!よっと」
鮮やかに鬼の攻撃を避けると瞬く間に二つの首を切り落とす。続いて椎名も鬼へと躍りかかるが、最後の一匹への斬り込みが浅い。
「あらっ」
「下手くそ!」
背を向け逃げ出す鬼を宇髄が片付ける。静けさを取り戻した森に宇髄が息をついた。
「もういないようだな」
「………」
「おい?」
椎名は鬼がいた方へ向かって歩き出した。宇髄が呼んでも足を止める気配がない。仕方なく後ろをついて行くと、思いがけない光景が広がっていた。
「酷ぇな」
子熊が二頭すでに死に絶えていた。唸り声を上げる母熊も今にも事切れそうだ。辺りには血が飛び散り金気臭い匂いが充満していた。
(鬼どもの仕業か…にしてはアイツら腹減らしてたよな?)
ちらりと母熊を見て宇髄は目を細めた。
(守ったのか)
鬼五匹から我が子を守る。出来ることではない。現に子熊は死に、母熊も死にゆこうとしている。
(野生なんだから鬼なんて化け物は忌避すりゃ良かったんだ。子は又産めただろうに)
「!おい」
母熊の傍に寄って行った椎名に宇髄は慌てた。手負いの獣ほど厄介なものはない。
「大丈夫よ」
「はぁ?何が…」
反論仕掛けてしかし宇髄は自分が言われた訳ではないことに気づいた。椎名は膝をつき母熊の目を真っ直ぐに見ている。
「もう大丈夫。鬼はいなくなったわ」
(熊に話しかけるとか正気かよ)
呆気に取られる宇髄の前で母熊は威嚇を止めじっと椎名を見つめた。
「だから安心して逝きなさい。あなた達の肉はこの山に住む山犬や狐が綺麗に食べてくれるでしょう。残された臓物も皮も骨も虫が分解してくれる。土塊になった後も森の木を育み、小さな動物達が木の実を分け合える」
「………」
「森に還れるから…貴方も、子供も」
母熊は最後の力を振り絞ると血まみれの足を差し出した。椎名がその痛ましい傷に口付けると唇についた血を舐め取る。その光景に宇髄は背中がひやりとした。
(人外…か)
椎名は母熊が動かなくなるまで見送ると、漸く立ち上がった。
「行きましょう」
「あぁ」
宇髄は感情を飲み込むと椎名に並び走り出した。
「んじゃこのまま真っ直ぐ。俺右ね」
「…まぁ良いけど」
山の中を駆け抜けながらしれっと楽な方を選ぶ宇髄に椎名は小さく笑った。
暗い森の中、木々の影にうごめく異形。
「ったくド派手に嫌な迎えだぜ」
「嫁?」
「んな訳あるか!よっと」
鮮やかに鬼の攻撃を避けると瞬く間に二つの首を切り落とす。続いて椎名も鬼へと躍りかかるが、最後の一匹への斬り込みが浅い。
「あらっ」
「下手くそ!」
背を向け逃げ出す鬼を宇髄が片付ける。静けさを取り戻した森に宇髄が息をついた。
「もういないようだな」
「………」
「おい?」
椎名は鬼がいた方へ向かって歩き出した。宇髄が呼んでも足を止める気配がない。仕方なく後ろをついて行くと、思いがけない光景が広がっていた。
「酷ぇな」
子熊が二頭すでに死に絶えていた。唸り声を上げる母熊も今にも事切れそうだ。辺りには血が飛び散り金気臭い匂いが充満していた。
(鬼どもの仕業か…にしてはアイツら腹減らしてたよな?)
ちらりと母熊を見て宇髄は目を細めた。
(守ったのか)
鬼五匹から我が子を守る。出来ることではない。現に子熊は死に、母熊も死にゆこうとしている。
(野生なんだから鬼なんて化け物は忌避すりゃ良かったんだ。子は又産めただろうに)
「!おい」
母熊の傍に寄って行った椎名に宇髄は慌てた。手負いの獣ほど厄介なものはない。
「大丈夫よ」
「はぁ?何が…」
反論仕掛けてしかし宇髄は自分が言われた訳ではないことに気づいた。椎名は膝をつき母熊の目を真っ直ぐに見ている。
「もう大丈夫。鬼はいなくなったわ」
(熊に話しかけるとか正気かよ)
呆気に取られる宇髄の前で母熊は威嚇を止めじっと椎名を見つめた。
「だから安心して逝きなさい。あなた達の肉はこの山に住む山犬や狐が綺麗に食べてくれるでしょう。残された臓物も皮も骨も虫が分解してくれる。土塊になった後も森の木を育み、小さな動物達が木の実を分け合える」
「………」
「森に還れるから…貴方も、子供も」
母熊は最後の力を振り絞ると血まみれの足を差し出した。椎名がその痛ましい傷に口付けると唇についた血を舐め取る。その光景に宇髄は背中がひやりとした。
(人外…か)
椎名は母熊が動かなくなるまで見送ると、漸く立ち上がった。
「行きましょう」
「あぁ」
宇髄は感情を飲み込むと椎名に並び走り出した。