一章
夢小説設定
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「私には鬼の首を切るだけの膂力がありません」
「日輪刀も突き刺す形に特化したものです」
「こんな私でも毒を用いて鬼を殺すことは出来ます」
そう言って笑顔を見せるたった16歳の少女に椎名は胸を締め付けられた。
「………」
しのぶは自分が何をされているのか理解できずにいた。約束通り翌日にはやってきた椎名を迎い入れ、見た事も聞いた事もない薬草の話から自らの開発している毒の話、そして鬼の話をしている最中だった。
「あ、の……」
労りの目をした椎名の手がしのぶの頭を何度も撫でる。暖かな掌をどうしても振りほどけずしのぶはゆっくり目を閉じた。
「…私は大丈夫です」
「……姉さんが殺されてからも蝶屋敷を守ってきました」
「鬼だって…!沢山殺してきたんです!」
声が震える。
「しのぶ」
椎名の穏やかな声に目頭が熱くなり、しのぶは両手で顔を覆った。
「どうして私は椎名さんにこんな事言ってるんですか」
「私はやってこれたんです。辛くありません!苦しくありません!!」
「私は…私は……」
唐突にしのぶは理解した。長い時を生きているこの眼の前の生き物は森の大樹と同じなのだ。ただ泰然と目の前の全てを受け入れる。
(こんなの傍にいて欲しいに決まってる)
頭の上にある椎名の手を掴むとしのぶはそれを自分の両瞼に押し当てた。
(私はまだ立っていられる)
椎名がこんな風に受け入れてくれるならば立ち止まっても膝をついても又歩き出せる。
(ずるいですお館様)
絶対に言えない文句を飲み込むとしのぶは涙を一粒落とし、しかしそれ以上泣くことはなかった。
「日輪刀も突き刺す形に特化したものです」
「こんな私でも毒を用いて鬼を殺すことは出来ます」
そう言って笑顔を見せるたった16歳の少女に椎名は胸を締め付けられた。
「………」
しのぶは自分が何をされているのか理解できずにいた。約束通り翌日にはやってきた椎名を迎い入れ、見た事も聞いた事もない薬草の話から自らの開発している毒の話、そして鬼の話をしている最中だった。
「あ、の……」
労りの目をした椎名の手がしのぶの頭を何度も撫でる。暖かな掌をどうしても振りほどけずしのぶはゆっくり目を閉じた。
「…私は大丈夫です」
「……姉さんが殺されてからも蝶屋敷を守ってきました」
「鬼だって…!沢山殺してきたんです!」
声が震える。
「しのぶ」
椎名の穏やかな声に目頭が熱くなり、しのぶは両手で顔を覆った。
「どうして私は椎名さんにこんな事言ってるんですか」
「私はやってこれたんです。辛くありません!苦しくありません!!」
「私は…私は……」
唐突にしのぶは理解した。長い時を生きているこの眼の前の生き物は森の大樹と同じなのだ。ただ泰然と目の前の全てを受け入れる。
(こんなの傍にいて欲しいに決まってる)
頭の上にある椎名の手を掴むとしのぶはそれを自分の両瞼に押し当てた。
(私はまだ立っていられる)
椎名がこんな風に受け入れてくれるならば立ち止まっても膝をついても又歩き出せる。
(ずるいですお館様)
絶対に言えない文句を飲み込むとしのぶは涙を一粒落とし、しかしそれ以上泣くことはなかった。