喫茶店の女給になった元婚約者
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今日は疲れた。
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三日前の一文日記を見返して少し整理をつけたいので書くことにした。
四日前、胡蝶様が来店された。これはあれね、完全に柱の皆様に私の居場所が共有されている。と言うことは宇髄様も知らないふりをしただけで私のことはご存知だったのだろう。冨岡様が情報共有したとは考えにくいし。むしろ冨岡様も私の様子を見にきたのかもしれない。自意識過剰でなければ。
胡蝶様は新作のバニラアイスとキャラメルアイスの盛り合わせをご注文された。品良くアイスを召し上がる胡蝶様はコーヒーも美味しく楽しめる方のようでゆっくりアイスとコーヒーを味わって召し上がられた。胡蝶様は食の細い方だから少しでもカロリーのあるものをお召しになるのは良いことだと思う。本当を言えばもう少し体を休めるお時間を作ってくださるともっと良い。
コーヒーを最後の一口まで堪能された胡蝶様はほぅ……と息をつかれると、私の方を見てニッコリと手招きされた。えぇ、まぁ……そうなりますよねぇ。胡蝶様が来店された段階で何かあるだろうなとは思ってました。
注文いただいたお客様なのでお断り出来ずにテーブルへ向かうと胡蝶様にお久しぶりですとご挨拶いただいた。そっか、もう三月ほど経ったのだ。月に二、三度は蝶屋敷にお邪魔していたことを考えると確かに久しぶりなので、素直にお久しぶりでございますと頭を下げた。
「お元気そうで安心しました」
そうおっしゃられると言う事は煉獄様と私との間のことはもうすっかりご存知なのだろう。お陰様で元気でやっておりますと嘘偽りなく答えておいた。だって本当に楽しいのだから。
胡蝶様は意外だったようでちょっと目を丸くされていた。そうね、私も前世の記憶が戻らなければもっと悲壮感を漂わせていたかもしれない。良いタイミングで戻ってきたね、前世の記憶よ。
「どうやら元気じゃ無いのは向こうのようですね」と言う胡蝶様の台詞は聞かなかったことにした。だって向こうが元気じゃ無いのは私のせいじゃ無い。隠のお嬢さんと上手くいってないのかしら?私には関係ないけど。
結局胡蝶様の用向きはきよちゃん達のことだった。私を恋しがっているので蝶屋敷に顔を出して欲しいと言うのだ。きよちゃん達には会いたいけれど……凄く行きたくない。いる。絶対いる予感しかしない。元気じゃない向こうはもしかすると私にまだ文句があるかも知れないし。
考えが全部顔に出ていたのか胡蝶様は苦笑すると煉獄様には絶対に教えないと約束してくださった。そこまで言われたのでは仕方がない。ちょうど翌日お休みだった私が蝶屋敷を訪ねる約束をすると胡蝶様は帰っていった。
そして翌日、手作りのクッキーを手におっかなびっくり蝶屋敷を訪ねた私はきよちゃん、すみちゃん、なほちゃんに熱烈大歓迎を受けた。来るまでは緊張していたけれど私も蝶屋敷の皆に会えるのは嬉しい。沢山お喋りをしてアオイちゃんのご飯支度を手伝い、ついでにいつものように蝶屋敷の洗濯や掃除も手伝って夕方になる前に失礼しようとした。
「また来てくださいね!」「絶対ですよ!」「待ってますから!」と手を振る三人と別れ玄関に向かっていると、目の前に隠が一人立ちはだかった。もう比喩じゃなくて通せんぼの形で両手を広げてね。何事かと思えばあの隠のお嬢さんだった。息を切らしていたからもしかすると走ってきたのかもしれない。
特に話すこともないので横を通り過ぎようとしたけれど、お嬢さんはどうしても私に文句を言いたかったのか色んな言葉を怒鳴ってきた。「なんであんたが!」とか「まだ炎柱を苦しめる気か!」とか「あんたのせいで!」とか心当たりのない言葉を向けられても反応に困る。そもそも無実の罪で私を追い出したのはそちらだろうに。黙っているからいけないのだろうか、反論すべきだろうかと考えていたらパン!と頬に衝撃が走り視界が軽く揺れた。
隠のお嬢さんに頬を叩かれた。
まさか叩かれるとは思っていなかったので呆然としていると胡蝶様が騒ぎに気付いて駆けつけてくださった。どうやらお嬢さんは仕事を放り出してここに来たらしい。随分厳しく叱責されて俯いていた。どうしてそこまで私を嫌っているのか、訳が分からない。分かりたくもないけれど。
胡蝶様から謝罪と手当の申し出を受けたけれどこの程度ならば帰って冷やせば問題ない。それに暗くなる前に帰らなければこのまま蝶屋敷に泊まりなんてことになるのは困る。胡蝶様の謝罪だけを受け取ると私は部屋に帰宅して翌朝腫れてないことを祈りつつ必死に頬を冷やした。
途中までは楽しかったけれどとにかく疲れた。もう蝶屋敷には行かないと思う。煉獄様との縁が切れ、実家にも戻れない私に鬼殺隊との繋がりはもう無いのだ。
それに関わらない方が心穏やかでいられる。
プリンもアイスも好評だし、次は何を作ろうか?パンケーキなんかも良いかもしれない。生クリームの代わりになるものを考えなくちゃ。