喫茶店の女給になった元婚約者
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「…………」
俺は自室で椎名の日記を前にしていた。俺の部屋には似つかわしくない可愛らしい帳面の表紙をそっと撫ぜる。
「……よし」
意を決すると帳面を一枚ずつめくっていく。そこに書かれていたのは予想通りの内容が半分と俺には理解できない内容半分だった。聞いたことの無い物の名前と言葉達。椎名に何故あれほど様々な知識があるのか理由がやっと分かった。これらが彼女を強くしたのだろうか。
「いや、違うか……」
これらは椎名の力強さを助ける一助になったに過ぎないのだろう。彼女は元から強く聡明な女性だったのだ。
俺の知っていること、知らなかったこと、知ろうとしなかったこと。日記を読み進めていくうちに胸に湧いてきたのは椎名への愛しさだった。俺と言う人間を一度は諦め、悩み苦しんで……それでも心を寄せてくれている。
(俺は……力を持って守ることに固執しているのか)
現に椎名は非力ではあっても自分の力で強く生きている。そしてそれに俺自身も助けられてきた。強きものとは力の強いものとは限らないのだ。
「……ん?」
最後の頁の書き出しに手が止まる。それは俺への呼びかけから始まっていた。
煉獄杏寿郎様
ここまで日記を読んで下さりありがとうございます。
人に読ませるつもりで書いているものではなかったので、お見苦しいところが多かったと思います。
大体の事は日記に書いていると思っておりますので、それ以外の話を書かせてください。前世の記憶が戻る前の私は自分の思いを伝えることもなく、ただ毎日杏寿郎様が柱としての勤めを果たす為のお手伝いをすることばかりを考えてきました。
もちろんそれが間違えていたとは思いませんが、今となってはそれだけではいけなかったのだと痛感しております。杏寿郎様が心身共にお疲れの時には胡蝶様にお薬を頂いてでも休んでいただくべきだったし、私がそのように考えていることも、実行せずに済むために自発的に休んで欲しいと伝えることもするべきだったのです。
あら、思ったよりも過激なことを書いてしまいました。
つまり私は自分の気持ちや考えをもっとお伝えしてくれば良かった。そうやって杏寿郎様と沢山の話をして分かりあっていきたい。
私は今でも杏寿郎様をお慕いしております。出来ることなら貴方と一緒に生きていきたい。けれど杏寿郎様が同じ気持ちでなければ意味の無いことなので、押し付けたいわけでは無いことをご理解下さい。
私の為とか家の為ではなく杏寿郎様のお気持ちで答えを出して頂ければ、私はそれを受け入れます。一つ前の日記にも書きましたが、遠くから貴方の幸せを祈っております。
前の日記の時はかなり意地を張って書いた言葉でしたけれど、今は心からそう思っております。
この日記を最後まで読んでくださることを願って……。
杏寿郎様の答えをお待ちしております。
「俺の、気持ちで……」
俺は椎名の日記をじっと見つめた。自分の気持ちが本当はどこにあるのか、自らの心の内を探る。自分の気持ちだけならば答えは決まっている。椎名と共にありたい。彼女が一緒に生きていきたいと言ってくれたことが嬉しい。だが、それと同じぐらい彼女を不幸にするのが怖い。今の自分で椎名を幸せにしてやれるのだろうか?
「兄上」
「千寿郎か」
廊下から顔を覗かせた千寿郎に椎名の日記をそっと閉じた。部屋に入ってきた千寿郎が遠慮がちに尋ねる。
「姉上の日記をお読みになったのですね」
「あぁ」
日記の表紙を優しく撫ぜると千寿郎の表情が緩んだ。
「どう……思われましたか?」
「どう、か……」
黙ってしまった俺にしかし千寿郎は安心した笑みを浮かべた。何故そんな表情をするのだろうか?
「どうした?千寿郎」
「兄上の顔がなんだか嬉しそうだなと思って」
「……嬉しそう」
そんなつもりはないのだが……千寿郎の言葉が不思議で自分の顔に触ってみる。嬉しさと不安が半々のつもりだったのに違うと言うことか?うんうんと頭を捻る俺に千寿郎が温かな視線を向けた。
「兄上はよく考えても仕方のないことは考えるなと仰いますが、姉上とのことは考えるのをやめないのですね」
「!!」
千寿郎の台詞にハッとした。そうだ、俺はどんな理由をつけても結局椎名のことを考えている。元気にしているか、不便はないか、恐ろしい目にあってはいないか。
口では離れた方がと言ったところで椎名を想うことがやめられない。それが俺の気持ちで答えなのだ。
「ありがとう千寿郎」
「僕は何も……でも兄上と姉上のお力になれたなら嬉しいです」
「あぁ!最強の助っ人だ!」
体ばかりでなく心も守るのに必要なのは力だけではないだろう。椎名を幸せにする為に心を砕くことには自信がある。力強く立ち上がると俺は羽織を手にした。
「出掛けてくる!」
「はい、お気を付けて」
千寿郎に見送られつつ俺は走り出した。
俺は自室で椎名の日記を前にしていた。俺の部屋には似つかわしくない可愛らしい帳面の表紙をそっと撫ぜる。
「……よし」
意を決すると帳面を一枚ずつめくっていく。そこに書かれていたのは予想通りの内容が半分と俺には理解できない内容半分だった。聞いたことの無い物の名前と言葉達。椎名に何故あれほど様々な知識があるのか理由がやっと分かった。これらが彼女を強くしたのだろうか。
「いや、違うか……」
これらは椎名の力強さを助ける一助になったに過ぎないのだろう。彼女は元から強く聡明な女性だったのだ。
俺の知っていること、知らなかったこと、知ろうとしなかったこと。日記を読み進めていくうちに胸に湧いてきたのは椎名への愛しさだった。俺と言う人間を一度は諦め、悩み苦しんで……それでも心を寄せてくれている。
(俺は……力を持って守ることに固執しているのか)
現に椎名は非力ではあっても自分の力で強く生きている。そしてそれに俺自身も助けられてきた。強きものとは力の強いものとは限らないのだ。
「……ん?」
最後の頁の書き出しに手が止まる。それは俺への呼びかけから始まっていた。
煉獄杏寿郎様
ここまで日記を読んで下さりありがとうございます。
人に読ませるつもりで書いているものではなかったので、お見苦しいところが多かったと思います。
大体の事は日記に書いていると思っておりますので、それ以外の話を書かせてください。前世の記憶が戻る前の私は自分の思いを伝えることもなく、ただ毎日杏寿郎様が柱としての勤めを果たす為のお手伝いをすることばかりを考えてきました。
もちろんそれが間違えていたとは思いませんが、今となってはそれだけではいけなかったのだと痛感しております。杏寿郎様が心身共にお疲れの時には胡蝶様にお薬を頂いてでも休んでいただくべきだったし、私がそのように考えていることも、実行せずに済むために自発的に休んで欲しいと伝えることもするべきだったのです。
あら、思ったよりも過激なことを書いてしまいました。
つまり私は自分の気持ちや考えをもっとお伝えしてくれば良かった。そうやって杏寿郎様と沢山の話をして分かりあっていきたい。
私は今でも杏寿郎様をお慕いしております。出来ることなら貴方と一緒に生きていきたい。けれど杏寿郎様が同じ気持ちでなければ意味の無いことなので、押し付けたいわけでは無いことをご理解下さい。
私の為とか家の為ではなく杏寿郎様のお気持ちで答えを出して頂ければ、私はそれを受け入れます。一つ前の日記にも書きましたが、遠くから貴方の幸せを祈っております。
前の日記の時はかなり意地を張って書いた言葉でしたけれど、今は心からそう思っております。
この日記を最後まで読んでくださることを願って……。
杏寿郎様の答えをお待ちしております。
「俺の、気持ちで……」
俺は椎名の日記をじっと見つめた。自分の気持ちが本当はどこにあるのか、自らの心の内を探る。自分の気持ちだけならば答えは決まっている。椎名と共にありたい。彼女が一緒に生きていきたいと言ってくれたことが嬉しい。だが、それと同じぐらい彼女を不幸にするのが怖い。今の自分で椎名を幸せにしてやれるのだろうか?
「兄上」
「千寿郎か」
廊下から顔を覗かせた千寿郎に椎名の日記をそっと閉じた。部屋に入ってきた千寿郎が遠慮がちに尋ねる。
「姉上の日記をお読みになったのですね」
「あぁ」
日記の表紙を優しく撫ぜると千寿郎の表情が緩んだ。
「どう……思われましたか?」
「どう、か……」
黙ってしまった俺にしかし千寿郎は安心した笑みを浮かべた。何故そんな表情をするのだろうか?
「どうした?千寿郎」
「兄上の顔がなんだか嬉しそうだなと思って」
「……嬉しそう」
そんなつもりはないのだが……千寿郎の言葉が不思議で自分の顔に触ってみる。嬉しさと不安が半々のつもりだったのに違うと言うことか?うんうんと頭を捻る俺に千寿郎が温かな視線を向けた。
「兄上はよく考えても仕方のないことは考えるなと仰いますが、姉上とのことは考えるのをやめないのですね」
「!!」
千寿郎の台詞にハッとした。そうだ、俺はどんな理由をつけても結局椎名のことを考えている。元気にしているか、不便はないか、恐ろしい目にあってはいないか。
口では離れた方がと言ったところで椎名を想うことがやめられない。それが俺の気持ちで答えなのだ。
「ありがとう千寿郎」
「僕は何も……でも兄上と姉上のお力になれたなら嬉しいです」
「あぁ!最強の助っ人だ!」
体ばかりでなく心も守るのに必要なのは力だけではないだろう。椎名を幸せにする為に心を砕くことには自信がある。力強く立ち上がると俺は羽織を手にした。
「出掛けてくる!」
「はい、お気を付けて」
千寿郎に見送られつつ俺は走り出した。