喫茶店の女給になった元婚約者
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煉獄が蝶屋敷に運び込まれてから10日が経っていた。その間に煉獄は三度危うくなり、一度は胡蝶を呼び出す事態にまでなった。
だが昨日から徐々に呼吸が落ち着きを見せ始め、椎名は僅かに胸を撫で下ろした。この10日間、椎名は自分のことは最小限で未来の感染症の知識を頼りに可能な限りの雑菌の侵入を阻んできた。人の出入りは緊急時以外は例え胡蝶であっても許さず、病室に持ち込むものは全て部屋の前で滅菌してから中に入れた。自分の食事も廊下に置いてもらいその場でパッと済ませ、中に入る時は自身の除菌も徹底した。
一日中病室に篭り、外で済まさなければならない用事以外の全てを煉獄の看病に費やす椎名は鬼気迫っており見舞いに来た柱さえ遠巻きに様子を見て帰っていくだけだった。
「……ふぅ」
厠に行っていた椎名は病室の前で一息ついていた。煉獄の呼吸が少しずつ深くなっており、体温も血圧も安定してきた。
(油断しちゃ駄目。もう一踏ん張りよ)
「おい」
「……まぁ!愼寿郎様」
椎名は思いもよらぬ人物の登場に驚いて声を上げた。居心地悪そうな愼寿郎が風呂敷包みを差し出してくる。受け取った椎名は目をパチクリさせた。
「申し訳ありません愼寿郎様……杏寿郎様はまだお食事は……」
「阿呆、そんなことは知っている。それはお前の分だ」
「私の……?」
まさか愼寿郎にそんな気遣いをされるとは思わずキョトンとする。照れ隠しなのか愼寿郎はペン!と椎名の額を人差し指で軽く小突いた。
「青白い顔をしおって!そんなでは杏寿郎が回復する前にお前が駄目になってしまうぞ!それを食って精をつけろ」
「……ありがとうございます」
くん、と匂いをかけば香ばしい鰻の匂いがして突然空腹になった気がする。お腹がなりそうな気がして椎名が胃の辺りを抑えていると愼寿郎の小さな声が聞こえた。
「杏寿郎を頼む」
「…………」
パッと顔を上げるが愼寿郎はもう既に背を向け去って行くところだった。その後ろ姿に深く頭を下げると椎名は気合を入れて煉獄の看病に戻った。
一週間ほど小康状態が続き三週間目に突入した頃、煉獄がようやくゆっくりと目を開いた。隻眼ではあるものの周囲をゆっくりと見回すと椅子に座っている椎名に視線を向ける。
「……杏寿郎様?分かりますか?」
「椎名……か?」
喉が掠れているのか煉獄の声は枯れていた。体が痛むのだろう眉を寄せる煉獄に椎名が立ち上がる。
「胡蝶様を呼んで参ります。お待ちください」
「椎名」
目覚めたばかりとは思えない力で煉獄が椎名の手を掴んだ。目を丸くする椎名を側に引き寄せる。煉獄の目は泣きそうに揺らめいていた。
「俺は……生きているのか」
「……えぇ、とても頑張られましたね」
「夢現に何度も君の姿を見た」
「えぇ、お側におりましたわ」
「椎名、触れていいだろうか」
「お好きなだ……っ」
言い終わるより先に煉獄の唇が椎名のそれに押し当てられた。ギュウと力任せに抱き寄せられて椎名はされるがままその腕に収まった。煉獄が目を開け喋っている。それが喜びの全てだ。
「お帰りなさいませっ」
「あぁ……今帰った」
煉獄杏寿郎生還の知らせは瞬く間に鬼殺隊内を駆け巡った。
だが昨日から徐々に呼吸が落ち着きを見せ始め、椎名は僅かに胸を撫で下ろした。この10日間、椎名は自分のことは最小限で未来の感染症の知識を頼りに可能な限りの雑菌の侵入を阻んできた。人の出入りは緊急時以外は例え胡蝶であっても許さず、病室に持ち込むものは全て部屋の前で滅菌してから中に入れた。自分の食事も廊下に置いてもらいその場でパッと済ませ、中に入る時は自身の除菌も徹底した。
一日中病室に篭り、外で済まさなければならない用事以外の全てを煉獄の看病に費やす椎名は鬼気迫っており見舞いに来た柱さえ遠巻きに様子を見て帰っていくだけだった。
「……ふぅ」
厠に行っていた椎名は病室の前で一息ついていた。煉獄の呼吸が少しずつ深くなっており、体温も血圧も安定してきた。
(油断しちゃ駄目。もう一踏ん張りよ)
「おい」
「……まぁ!愼寿郎様」
椎名は思いもよらぬ人物の登場に驚いて声を上げた。居心地悪そうな愼寿郎が風呂敷包みを差し出してくる。受け取った椎名は目をパチクリさせた。
「申し訳ありません愼寿郎様……杏寿郎様はまだお食事は……」
「阿呆、そんなことは知っている。それはお前の分だ」
「私の……?」
まさか愼寿郎にそんな気遣いをされるとは思わずキョトンとする。照れ隠しなのか愼寿郎はペン!と椎名の額を人差し指で軽く小突いた。
「青白い顔をしおって!そんなでは杏寿郎が回復する前にお前が駄目になってしまうぞ!それを食って精をつけろ」
「……ありがとうございます」
くん、と匂いをかけば香ばしい鰻の匂いがして突然空腹になった気がする。お腹がなりそうな気がして椎名が胃の辺りを抑えていると愼寿郎の小さな声が聞こえた。
「杏寿郎を頼む」
「…………」
パッと顔を上げるが愼寿郎はもう既に背を向け去って行くところだった。その後ろ姿に深く頭を下げると椎名は気合を入れて煉獄の看病に戻った。
一週間ほど小康状態が続き三週間目に突入した頃、煉獄がようやくゆっくりと目を開いた。隻眼ではあるものの周囲をゆっくりと見回すと椅子に座っている椎名に視線を向ける。
「……杏寿郎様?分かりますか?」
「椎名……か?」
喉が掠れているのか煉獄の声は枯れていた。体が痛むのだろう眉を寄せる煉獄に椎名が立ち上がる。
「胡蝶様を呼んで参ります。お待ちください」
「椎名」
目覚めたばかりとは思えない力で煉獄が椎名の手を掴んだ。目を丸くする椎名を側に引き寄せる。煉獄の目は泣きそうに揺らめいていた。
「俺は……生きているのか」
「……えぇ、とても頑張られましたね」
「夢現に何度も君の姿を見た」
「えぇ、お側におりましたわ」
「椎名、触れていいだろうか」
「お好きなだ……っ」
言い終わるより先に煉獄の唇が椎名のそれに押し当てられた。ギュウと力任せに抱き寄せられて椎名はされるがままその腕に収まった。煉獄が目を開け喋っている。それが喜びの全てだ。
「お帰りなさいませっ」
「あぁ……今帰った」
煉獄杏寿郎生還の知らせは瞬く間に鬼殺隊内を駆け巡った。