喫茶店の女給になった元婚約者
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椎名と晴れて婚約者と言う間柄に戻れた煉獄はとても浮かれていた。千寿郎が苦笑し、愼寿郎が呆れ返り、胡蝶が額に青筋を浮かべるぐらいには。
しかしそんな事は些細なことだと煉獄は気にも留めない。そして今日も今日とて煉獄は蝶屋敷の椎名を訪ねた。愛しの婚約者に珊瑚と琥珀をあしらった簪を渡す為だ。
「椎名!いるか!」
「まぁ、煉獄様。こんなお時間から……お休みにはなられたのですか?」
午前10時と言えば普通の人間ならば活動時間真っ只中だが、鬼殺隊ではそうではない。そのことにきちんと気を回してくれる椎名に煉獄の笑みは深くなるばかりだ。
「大丈夫だ!昨夜は早めに任務を終えたのでしっかり休んできた!!」
「それは宜しゅうございました」
そう言って微笑む椎名を抱き締めたい衝動にかられて煉獄は必死に自制した。椎名はようやく日常生活を送れるようにはなったがまだ傷が痛む日もあるようで、煉獄家に戻っても実家に帰っても働こうとするだろうからここに居なさいと胡蝶から退院を拒否されている。
しかしそこは藤の家の娘。働き癖のある椎名は蝶屋敷で細々とした雑務をこなすようになっていた。今も大量の洗濯物を干し終わったところだ。
「君の方こそまだ完全ではないのだから無理をすべきではないぞ」
「えぇ、ですが何もせずにいるというのも気詰まりで……」
「そうか!君らしいな!!」
世間話をしつつ煉獄は懐の簪をいつ取り出そうかと機会を伺った。早くこの簪を身に着けた椎名を見たいと思うがなかなか切り出せない。様子のおかしい煉獄に椎名が首を傾げる。
「煉獄様?どうなさいました?」
「……実は、今日は君に渡したいものがあってきたんだ」
(婚約者に贈り物をするのがこんなに緊張と気恥ずかしさを伴うものだとは!)
しかしそれと同時に得も言われぬ幸福感もある。これを今まで知らずにいた自分に煉獄は歯噛みした。一方椎名は煉獄が取り出したものに目を丸くした。匂い袋に続いて煉獄を思い起こさせる色合いのそれに頬が熱くなる。
「ありがとうございます……」
「俺が髪に挿してもいいだろうか」
「……はい」
真っ赤になって俯いてしまった椎名に一歩近づくと正面から抱き込むように腕を回して簪を挿す。黒髪に琥珀と珊瑚がよく映えて煉獄が満足げなため息を付いた。
「よく似合う」
「わ、たしもなにか……煉獄様にお返しできれば良いのですが……」
生憎今は手元に煉獄に贈れるようなものが何も無い。眉を下げる椎名の頬に指先で触れると煉獄が微笑んだ。
「では、また名前で呼んでくれないか」
「…………杏、寿郎さ、ま」
きっとお互い胸に感じるのは喜びばかりでは無く多少の痛みを伴うけれど、それでもそれを超える幸せがここにある。椎名は未だ赤い顔を上げると真っ直ぐに煉獄を見上げた。
「杏寿郎様」
「椎名」
そろりと煉獄の手が椎名の背中に回る。いざ触れようとしたタイミングで胡蝶の咳払いが炸裂した。二人の横に立つとニコニコと額に青筋を立てる。
「もしもーし、お二人さん。人目を憚って頂けると助かります」
「こっ、胡蝶様!!失礼いたしました!!」
椎名は比喩で無く飛び上がると頭を下げて逃げていった。洗濯物を入れていた桶が置き去りになって胡蝶が笑いながらそれを持ち上げる。
「胡蝶……」
「ウフフ、椎名さんに悪いことをしてしまいましたね。ですが煉獄さん、椎名さんの背中の傷はもう少しかかるので触らないようお願いします」
「……分かった」
煉獄は渋々頷いた。本当ならもう少し椎名といたかったが、今日はこの後産屋敷邸に向かわなければならないので断腸の思いで諦める。そう呟けば胡蝶があら、と声を上げた。
「煉獄さんも行かれるのですか?」
「胡蝶もか!お館様より任務について話があるそうでな!」
「そうですか。あ、ちなみに椎名さんならきっとアオイと一緒に台所にいると思いますよ」
任務に向かう煉獄を見送れなかったのでは椎名が気にするだろう。アオイの前ならば煉獄もさっきのような暴挙に出る事も無い……はず。胡蝶は万が一の時は煉獄の脇腹に注射を突き立てようと心に決めた。
任務に遅れが出るかも知れないがその時は自分からもお館様に謝罪申し上げようと思う。
「そうか!では出立の挨拶だけして行こう!!」
「挨拶だけですよ?煉獄さん」
でもやっぱり心配で釘を刺す胡蝶だった。
しかしそんな事は些細なことだと煉獄は気にも留めない。そして今日も今日とて煉獄は蝶屋敷の椎名を訪ねた。愛しの婚約者に珊瑚と琥珀をあしらった簪を渡す為だ。
「椎名!いるか!」
「まぁ、煉獄様。こんなお時間から……お休みにはなられたのですか?」
午前10時と言えば普通の人間ならば活動時間真っ只中だが、鬼殺隊ではそうではない。そのことにきちんと気を回してくれる椎名に煉獄の笑みは深くなるばかりだ。
「大丈夫だ!昨夜は早めに任務を終えたのでしっかり休んできた!!」
「それは宜しゅうございました」
そう言って微笑む椎名を抱き締めたい衝動にかられて煉獄は必死に自制した。椎名はようやく日常生活を送れるようにはなったがまだ傷が痛む日もあるようで、煉獄家に戻っても実家に帰っても働こうとするだろうからここに居なさいと胡蝶から退院を拒否されている。
しかしそこは藤の家の娘。働き癖のある椎名は蝶屋敷で細々とした雑務をこなすようになっていた。今も大量の洗濯物を干し終わったところだ。
「君の方こそまだ完全ではないのだから無理をすべきではないぞ」
「えぇ、ですが何もせずにいるというのも気詰まりで……」
「そうか!君らしいな!!」
世間話をしつつ煉獄は懐の簪をいつ取り出そうかと機会を伺った。早くこの簪を身に着けた椎名を見たいと思うがなかなか切り出せない。様子のおかしい煉獄に椎名が首を傾げる。
「煉獄様?どうなさいました?」
「……実は、今日は君に渡したいものがあってきたんだ」
(婚約者に贈り物をするのがこんなに緊張と気恥ずかしさを伴うものだとは!)
しかしそれと同時に得も言われぬ幸福感もある。これを今まで知らずにいた自分に煉獄は歯噛みした。一方椎名は煉獄が取り出したものに目を丸くした。匂い袋に続いて煉獄を思い起こさせる色合いのそれに頬が熱くなる。
「ありがとうございます……」
「俺が髪に挿してもいいだろうか」
「……はい」
真っ赤になって俯いてしまった椎名に一歩近づくと正面から抱き込むように腕を回して簪を挿す。黒髪に琥珀と珊瑚がよく映えて煉獄が満足げなため息を付いた。
「よく似合う」
「わ、たしもなにか……煉獄様にお返しできれば良いのですが……」
生憎今は手元に煉獄に贈れるようなものが何も無い。眉を下げる椎名の頬に指先で触れると煉獄が微笑んだ。
「では、また名前で呼んでくれないか」
「…………杏、寿郎さ、ま」
きっとお互い胸に感じるのは喜びばかりでは無く多少の痛みを伴うけれど、それでもそれを超える幸せがここにある。椎名は未だ赤い顔を上げると真っ直ぐに煉獄を見上げた。
「杏寿郎様」
「椎名」
そろりと煉獄の手が椎名の背中に回る。いざ触れようとしたタイミングで胡蝶の咳払いが炸裂した。二人の横に立つとニコニコと額に青筋を立てる。
「もしもーし、お二人さん。人目を憚って頂けると助かります」
「こっ、胡蝶様!!失礼いたしました!!」
椎名は比喩で無く飛び上がると頭を下げて逃げていった。洗濯物を入れていた桶が置き去りになって胡蝶が笑いながらそれを持ち上げる。
「胡蝶……」
「ウフフ、椎名さんに悪いことをしてしまいましたね。ですが煉獄さん、椎名さんの背中の傷はもう少しかかるので触らないようお願いします」
「……分かった」
煉獄は渋々頷いた。本当ならもう少し椎名といたかったが、今日はこの後産屋敷邸に向かわなければならないので断腸の思いで諦める。そう呟けば胡蝶があら、と声を上げた。
「煉獄さんも行かれるのですか?」
「胡蝶もか!お館様より任務について話があるそうでな!」
「そうですか。あ、ちなみに椎名さんならきっとアオイと一緒に台所にいると思いますよ」
任務に向かう煉獄を見送れなかったのでは椎名が気にするだろう。アオイの前ならば煉獄もさっきのような暴挙に出る事も無い……はず。胡蝶は万が一の時は煉獄の脇腹に注射を突き立てようと心に決めた。
任務に遅れが出るかも知れないがその時は自分からもお館様に謝罪申し上げようと思う。
「そうか!では出立の挨拶だけして行こう!!」
「挨拶だけですよ?煉獄さん」
でもやっぱり心配で釘を刺す胡蝶だった。