喫茶店の女給になった元婚約者
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(やってしまった!)
煉獄は内心頭を抱えていた。椎名に匂い袋を渡しに行った際に、衝動的に抱き締めてしまったのだ。匂い袋を渡して、少し喜んでくれれば良いと思っていた浅はかな自分をぶん殴りたい。
(俺の考えが足りていなかった)
心底謝罪して想いを伝えればきっと受け入れてくれるなどと考えては行けなかったのだ。気持ちを伝える事を諦める気はないが、もっと椎名の気持ちを汲まなければならなった。
(彼女の心が癒えるまでいつまでも待とう)
そう思うと匂い袋を椎名の服のポケットにこっそり忍ばせたのはやり過ぎだったかと不安になる。
「じゃあ手分けして見回りをするからなー」
ふと藤の家の前に隠が溜まっているのを目に止めた煉獄が僅かに眉を寄せた。隠の中に本田の姿を認めたからだ。
(鬼の探索任務か)
ならば帝都の中に鬼が出る確率が高いのだろう。いつでも動けるようにしておこうと考えていた煉獄は、本田の腰に下がるものを目にした途端思考を停止させた。
赤い布地に金の紐の匂い袋。
それは見間違えようが無く自分が椎名に渡したものだ。
「本田少女!!」
ビリビリと空気が震えるような威圧と共に放たれた声に隠全員の動きが止まった。つかつかと歩み寄ると匂い袋を取り上げる。
「これをどこで手に入れた」
いつもの温かさ明るさなど一切無い冷たい声に本田は小さく震え出した。鋭い煉獄の視線に浅い呼吸を繰り返す。煉獄のあまりに激しい怒りに周りの隠も顔色を無くしていた。
「本田少女!!」
「こっ、これは……その、ち、違う……違うんですっ、わた、私……っ」
しどろもどろの言い訳は既に自白してるも同じ事だった。煉獄は眉を寄せると哀しげな目で本田を見つめた。
「藤の花の匂い袋は鬼から身を守るためのものだ。それを他者から奪うと言うのがどう言うことか……分からない訳ではないだろう」
「そ、れは……」
「ましてや相手が盗まれたことに気付かずにいたら……どうするつもりだ」
「っ!!」
サァッと青ざめた本田に背を向けると煉獄は一つ大きな息を吸った。そのまま手近な隠に指示を出す。
「君達は引き続き鬼の探索任務だ!!」
「かしこまりま……」
返事を最後まで待たずに煉獄は走り出した。いつもならば椎名は帰宅している時間だが、どうしても嫌な予感がする。
(頼む!外れていてくれ!!)
はやる気持ちを速度に乗せて煉獄は夜の帝都を走った。
「っ、はぁっ!はぁ……はっ」
(胸が苦しい……息が切れる、目が回りそう……)
椎名はトヨと共に暗い道を走り回っていた。鬼は一気に襲ってくる様子はなく、しかし逃す気はないようで後ろから追ってきたりかと思えば前に突然現れたりして椎名達が人気の無い道から出ないよう立ち回っていた。しかもどんどん範囲が狭くなっている。
(牧羊犬に追われる羊じゃ無いのよ!)
椎名は鞄を探ると藤の花のお守りを取り出した。トヨの手にそれを握らせるとギュッと手を握る。
「私が足止めをするから合図したら走って」
「そ、そんなっ!駄目ですそんな……椎名さんは!?」
「心配しないで。ちゃんと考えがあるから、ね?」
もちろん嘘だ。椎名はそれとなく鞄の中をもう一度探った。煉獄に渡されたはずの匂い袋が無い。背筋が冷たくなるのを感じながら椎名は微笑んで見せた。
トヨを守るため、後には引けない。
「それに私には守り神がついてるから」
炎を宿した頼りになる守り神が。ご利益を期待することはできないが。
「椎名さん……」
「さぁ!行って!!」
走り出したトヨを追いかけようとする鬼に向かって椎名は鞄から取り出した藤のお香を投げつけた。ギャァ!と鬼が悲鳴をあげて顔を覆う。その隙をついて椎名はトヨとは別の方向へ走り出した。
テメェ!と怒号が上がったので手に握っていた香を投げようと後ろを振り返る。
「まずはテメェだ」
後ろから声がして背中が酷く熱くなって……椎名の意識はそこで途切れた。
煉獄は内心頭を抱えていた。椎名に匂い袋を渡しに行った際に、衝動的に抱き締めてしまったのだ。匂い袋を渡して、少し喜んでくれれば良いと思っていた浅はかな自分をぶん殴りたい。
(俺の考えが足りていなかった)
心底謝罪して想いを伝えればきっと受け入れてくれるなどと考えては行けなかったのだ。気持ちを伝える事を諦める気はないが、もっと椎名の気持ちを汲まなければならなった。
(彼女の心が癒えるまでいつまでも待とう)
そう思うと匂い袋を椎名の服のポケットにこっそり忍ばせたのはやり過ぎだったかと不安になる。
「じゃあ手分けして見回りをするからなー」
ふと藤の家の前に隠が溜まっているのを目に止めた煉獄が僅かに眉を寄せた。隠の中に本田の姿を認めたからだ。
(鬼の探索任務か)
ならば帝都の中に鬼が出る確率が高いのだろう。いつでも動けるようにしておこうと考えていた煉獄は、本田の腰に下がるものを目にした途端思考を停止させた。
赤い布地に金の紐の匂い袋。
それは見間違えようが無く自分が椎名に渡したものだ。
「本田少女!!」
ビリビリと空気が震えるような威圧と共に放たれた声に隠全員の動きが止まった。つかつかと歩み寄ると匂い袋を取り上げる。
「これをどこで手に入れた」
いつもの温かさ明るさなど一切無い冷たい声に本田は小さく震え出した。鋭い煉獄の視線に浅い呼吸を繰り返す。煉獄のあまりに激しい怒りに周りの隠も顔色を無くしていた。
「本田少女!!」
「こっ、これは……その、ち、違う……違うんですっ、わた、私……っ」
しどろもどろの言い訳は既に自白してるも同じ事だった。煉獄は眉を寄せると哀しげな目で本田を見つめた。
「藤の花の匂い袋は鬼から身を守るためのものだ。それを他者から奪うと言うのがどう言うことか……分からない訳ではないだろう」
「そ、れは……」
「ましてや相手が盗まれたことに気付かずにいたら……どうするつもりだ」
「っ!!」
サァッと青ざめた本田に背を向けると煉獄は一つ大きな息を吸った。そのまま手近な隠に指示を出す。
「君達は引き続き鬼の探索任務だ!!」
「かしこまりま……」
返事を最後まで待たずに煉獄は走り出した。いつもならば椎名は帰宅している時間だが、どうしても嫌な予感がする。
(頼む!外れていてくれ!!)
はやる気持ちを速度に乗せて煉獄は夜の帝都を走った。
「っ、はぁっ!はぁ……はっ」
(胸が苦しい……息が切れる、目が回りそう……)
椎名はトヨと共に暗い道を走り回っていた。鬼は一気に襲ってくる様子はなく、しかし逃す気はないようで後ろから追ってきたりかと思えば前に突然現れたりして椎名達が人気の無い道から出ないよう立ち回っていた。しかもどんどん範囲が狭くなっている。
(牧羊犬に追われる羊じゃ無いのよ!)
椎名は鞄を探ると藤の花のお守りを取り出した。トヨの手にそれを握らせるとギュッと手を握る。
「私が足止めをするから合図したら走って」
「そ、そんなっ!駄目ですそんな……椎名さんは!?」
「心配しないで。ちゃんと考えがあるから、ね?」
もちろん嘘だ。椎名はそれとなく鞄の中をもう一度探った。煉獄に渡されたはずの匂い袋が無い。背筋が冷たくなるのを感じながら椎名は微笑んで見せた。
トヨを守るため、後には引けない。
「それに私には守り神がついてるから」
炎を宿した頼りになる守り神が。ご利益を期待することはできないが。
「椎名さん……」
「さぁ!行って!!」
走り出したトヨを追いかけようとする鬼に向かって椎名は鞄から取り出した藤のお香を投げつけた。ギャァ!と鬼が悲鳴をあげて顔を覆う。その隙をついて椎名はトヨとは別の方向へ走り出した。
テメェ!と怒号が上がったので手に握っていた香を投げようと後ろを振り返る。
「まずはテメェだ」
後ろから声がして背中が酷く熱くなって……椎名の意識はそこで途切れた。