喫茶店の女給になった元婚約者
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「お待たせいたしました。オムライスと抹茶アイスでございます」
「たまごサンドとカツサンドです」
「プリンとアイス盛り合わせとパンケーキお待たせいたしました」
喫茶コロンビアは突然の大繁盛に翻弄されていた。昨日発売された雑誌にコロンビアが紹介されたそうで、今日は開店と同時にずっと満席が続いている。マスターも奥様も女給仲間も皆んなフル回転で走り回る。
「椎名ちゃん!もう夜の部だからっ!はいっ、お疲れ様!!」
なのでそう言ったマスターに店から追い出されたのはもう暗くなってからだった。もう一人、15歳の仕事仲間と裏口を出たところで顔を見合わせる。どちらからともなく笑いが漏れた。
「追い出されちゃった」
「本当ね。帰りましょうか」
なんとなく連れ立って歩く。トヨちゃんは弟妹が8人もいる長女と言うことで11歳の頃からあちこちで働いている女の子だ。聞くところによると昨年コロンビアの奥様にスカウトされて女給になったらしい。小さな体でクルクル動く働き者だ。
「それにしても今日は本当に凄かったですね。雑誌社も載せるなら一言言ってくれたら良かったのに」
「そうね、そうしたらもっと準備して待っていられたのにね」
最初の列のお客さんが教えてくれて初めてことを知ったコロンビアでは準備が間に合わずお帰りになってしまったお客様も何組かある。とても勿体無いことをした。
「でも!帰り際に奥様が臨時報酬を期待していてって言ってくれたんです!!とっても楽しみ」
「それは良いわね。一生懸命働いたら良いことがあるのね」
ニコニコとボーナスに夢を馳せるトヨちゃんはとても可愛らしい。他愛の無い話をしながら歩いていると別れ道に出た。私は右の賑やかな道を行くからいいけれどトヨちゃんが進もうとしている道は人気が無くて灯りもほとんどない。
「トヨちゃん、こっちの道からにしない?暗いし危ないわ」
「でも今日は遅くなっちゃったし、皆んな待ってるから……」
暗い道は怖いけれど遠回りはしたくない。小さな弟妹の事を思えば無理のない事だろう。仕方ない、ここは一肌脱ぐとしよう。
「では送っていくわ。二人なら怖くないでしょう?」
「えっ!?でも!そんな……」
「良いから良いから。ほら、ここで問答してるより歩いた方が早いわよ」
「すいません……」
トヨちゃんが気に病まないよう明るく背中を押すと歩き出す。10メートルも行けば本当にしんとしていて、気味が悪いぐらいだ。
ひたひたひた……。
ほどなく後ろに素足で歩くような足音が聞こえた。ちらりと横を見るとトヨちゃんにも聞こえたのか顔が強張っている。
私は鞄の中を思い返した。藤の花の匂い袋は前からのものと煉獄様から……そう、あの時の匂い袋がいつの間にか服のポケットに入っていたのだ。柱の速さって凄い。なので匂い袋は二つある。それに運の良いこと胡蝶様から頂いたばかりの藤の花のお香も入ったままだ。
「トヨちゃん」
私は前を向いたまま横に話しかけた。緊張で喉がカラカラだ。
「は、はい」
「走るの得意?」
「ちょっとだけ……」
「じゃあ……走って!!」
掛け声と共にトヨちゃんの背中を軽く叩く。弾かれるように駆け出したトヨちゃんに続いて私も走り出した。向こうが襲ってくるのを待つ理由はない。
「ひーっひひひっ!はーっはっはぁ!!」
歪な高笑いが追いかけてくるのがわかった。
「たまごサンドとカツサンドです」
「プリンとアイス盛り合わせとパンケーキお待たせいたしました」
喫茶コロンビアは突然の大繁盛に翻弄されていた。昨日発売された雑誌にコロンビアが紹介されたそうで、今日は開店と同時にずっと満席が続いている。マスターも奥様も女給仲間も皆んなフル回転で走り回る。
「椎名ちゃん!もう夜の部だからっ!はいっ、お疲れ様!!」
なのでそう言ったマスターに店から追い出されたのはもう暗くなってからだった。もう一人、15歳の仕事仲間と裏口を出たところで顔を見合わせる。どちらからともなく笑いが漏れた。
「追い出されちゃった」
「本当ね。帰りましょうか」
なんとなく連れ立って歩く。トヨちゃんは弟妹が8人もいる長女と言うことで11歳の頃からあちこちで働いている女の子だ。聞くところによると昨年コロンビアの奥様にスカウトされて女給になったらしい。小さな体でクルクル動く働き者だ。
「それにしても今日は本当に凄かったですね。雑誌社も載せるなら一言言ってくれたら良かったのに」
「そうね、そうしたらもっと準備して待っていられたのにね」
最初の列のお客さんが教えてくれて初めてことを知ったコロンビアでは準備が間に合わずお帰りになってしまったお客様も何組かある。とても勿体無いことをした。
「でも!帰り際に奥様が臨時報酬を期待していてって言ってくれたんです!!とっても楽しみ」
「それは良いわね。一生懸命働いたら良いことがあるのね」
ニコニコとボーナスに夢を馳せるトヨちゃんはとても可愛らしい。他愛の無い話をしながら歩いていると別れ道に出た。私は右の賑やかな道を行くからいいけれどトヨちゃんが進もうとしている道は人気が無くて灯りもほとんどない。
「トヨちゃん、こっちの道からにしない?暗いし危ないわ」
「でも今日は遅くなっちゃったし、皆んな待ってるから……」
暗い道は怖いけれど遠回りはしたくない。小さな弟妹の事を思えば無理のない事だろう。仕方ない、ここは一肌脱ぐとしよう。
「では送っていくわ。二人なら怖くないでしょう?」
「えっ!?でも!そんな……」
「良いから良いから。ほら、ここで問答してるより歩いた方が早いわよ」
「すいません……」
トヨちゃんが気に病まないよう明るく背中を押すと歩き出す。10メートルも行けば本当にしんとしていて、気味が悪いぐらいだ。
ひたひたひた……。
ほどなく後ろに素足で歩くような足音が聞こえた。ちらりと横を見るとトヨちゃんにも聞こえたのか顔が強張っている。
私は鞄の中を思い返した。藤の花の匂い袋は前からのものと煉獄様から……そう、あの時の匂い袋がいつの間にか服のポケットに入っていたのだ。柱の速さって凄い。なので匂い袋は二つある。それに運の良いこと胡蝶様から頂いたばかりの藤の花のお香も入ったままだ。
「トヨちゃん」
私は前を向いたまま横に話しかけた。緊張で喉がカラカラだ。
「は、はい」
「走るの得意?」
「ちょっとだけ……」
「じゃあ……走って!!」
掛け声と共にトヨちゃんの背中を軽く叩く。弾かれるように駆け出したトヨちゃんに続いて私も走り出した。向こうが襲ってくるのを待つ理由はない。
「ひーっひひひっ!はーっはっはぁ!!」
歪な高笑いが追いかけてくるのがわかった。