喫茶店の女給になった元婚約者
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(やらかした……)
掃除をしながら椎名は特大のため息をついた。昨日、煉獄に渡された匂い袋を受け取れないと断ったら、そのまま抱き締められたのだ。パニックの許容量を超えた事態に椎名の口は言わなくていいことを口走ってしまった。
(もうたくさんなんて……思ってないのに)
ただ、どうしても心の整理がつかないのだ。煉獄の姿を見るとどうしても隠の本田の顔がちらつく。胸がザワザワする。
もう傷付きたくない。
だから会わないほうがいい。
なのに煉獄の姿を探してしまう。
呆れて無関心になったはずなのに、会いに来てくれると安心する。
「馬鹿ね……」
「誰が?」
「ひえっ!?」
独り言に返事が返ってきて椎名は小さく悲鳴をあげた。振り返ると喫茶店のマスターがニコニコして立っている。その後ろからやってきた奥方が呆れたため息をついた。
「アナタ、驚かせてどうするの」
「いやぁ、ゴメンよ。随分考え込んでいるみたいだったから」
「も、申し訳ありません!おはようございます」
「謝らなくて良いのよ。もう掃除は終わりそうね。下拵えに入る前に一杯飲みましょ」
奥方は手際良くコーヒーを入れるとカウンターにカップを置いた。座るよう促されて椎名が腰掛ける。興味津々といった喫茶店夫婦が向かい側に陣取ったのに苦笑する。
「そんなに気になりますか?」
「そりゃあね、うちの金の卵の悩みはお店の存続に繋がるからね」
大袈裟なマスターの言葉に椎名は笑うしかない。奥方がコーヒーにたっぷりのミルクと砂糖を入れた。
「あの方よね?金髪の……毎日のように食事に来ていた方。椎名ちゃんがここにくる原因になった方なのじゃ無くて?」
一度も煉獄を紹介していないのに正しく指摘されて椎名はギクリとした。この夫婦は明るく楽しく懐広くが信条の夫婦だが、なかなか観察眼が鋭い。
「……戻ってきて欲しいって言われた?」
「いえ……」
「じゃあアレね。君を愛してる」
「…………っ」
昨日抱き締められた感覚がありありと蘇って椎名は頬を染めた。婚約者だったころにはあっても手を繋ぐ程度だったのでどうしても恥ずかしい。真っ赤になった椎名に夫婦の笑みが深くなった。
「あらあら良いわね、若いって」
「うんうん、若さの特権だね」
「で、ですが!その……婚約はもう……」
破棄されているのだ、と何故か口にしたくなくて椎名が口ごもる。昨日の日記には大嫌いと書いたのにどうしてこんな気持ちになるのか。自分の事なのに訳が分からなくて椎名は泣きそうになった。気付いた奥方の手がそっと椎名の手を握る。
「人間ですもの、一度や二度の過ちはあるわ。貴女だって思ってもいないことを言ったりした経験はあるでしょう?」
「…………はい」
昨日の自分の発言を思い返して頷く椎名にマスターはクッキーをお茶請けに出してくれた。ほろりとした触感と甘さが心に優しい。
「勿論程度はあると思うけどね。でも椎名ちゃん許してあげたいなって顔をしているよ?」
「…………そう、でしょうか」
それはどんな表情で、昨日煉獄の前でもしてたのだろうか。
想像がつかなくて椎名は自分の顔に触れてみるのだった。
掃除をしながら椎名は特大のため息をついた。昨日、煉獄に渡された匂い袋を受け取れないと断ったら、そのまま抱き締められたのだ。パニックの許容量を超えた事態に椎名の口は言わなくていいことを口走ってしまった。
(もうたくさんなんて……思ってないのに)
ただ、どうしても心の整理がつかないのだ。煉獄の姿を見るとどうしても隠の本田の顔がちらつく。胸がザワザワする。
もう傷付きたくない。
だから会わないほうがいい。
なのに煉獄の姿を探してしまう。
呆れて無関心になったはずなのに、会いに来てくれると安心する。
「馬鹿ね……」
「誰が?」
「ひえっ!?」
独り言に返事が返ってきて椎名は小さく悲鳴をあげた。振り返ると喫茶店のマスターがニコニコして立っている。その後ろからやってきた奥方が呆れたため息をついた。
「アナタ、驚かせてどうするの」
「いやぁ、ゴメンよ。随分考え込んでいるみたいだったから」
「も、申し訳ありません!おはようございます」
「謝らなくて良いのよ。もう掃除は終わりそうね。下拵えに入る前に一杯飲みましょ」
奥方は手際良くコーヒーを入れるとカウンターにカップを置いた。座るよう促されて椎名が腰掛ける。興味津々といった喫茶店夫婦が向かい側に陣取ったのに苦笑する。
「そんなに気になりますか?」
「そりゃあね、うちの金の卵の悩みはお店の存続に繋がるからね」
大袈裟なマスターの言葉に椎名は笑うしかない。奥方がコーヒーにたっぷりのミルクと砂糖を入れた。
「あの方よね?金髪の……毎日のように食事に来ていた方。椎名ちゃんがここにくる原因になった方なのじゃ無くて?」
一度も煉獄を紹介していないのに正しく指摘されて椎名はギクリとした。この夫婦は明るく楽しく懐広くが信条の夫婦だが、なかなか観察眼が鋭い。
「……戻ってきて欲しいって言われた?」
「いえ……」
「じゃあアレね。君を愛してる」
「…………っ」
昨日抱き締められた感覚がありありと蘇って椎名は頬を染めた。婚約者だったころにはあっても手を繋ぐ程度だったのでどうしても恥ずかしい。真っ赤になった椎名に夫婦の笑みが深くなった。
「あらあら良いわね、若いって」
「うんうん、若さの特権だね」
「で、ですが!その……婚約はもう……」
破棄されているのだ、と何故か口にしたくなくて椎名が口ごもる。昨日の日記には大嫌いと書いたのにどうしてこんな気持ちになるのか。自分の事なのに訳が分からなくて椎名は泣きそうになった。気付いた奥方の手がそっと椎名の手を握る。
「人間ですもの、一度や二度の過ちはあるわ。貴女だって思ってもいないことを言ったりした経験はあるでしょう?」
「…………はい」
昨日の自分の発言を思い返して頷く椎名にマスターはクッキーをお茶請けに出してくれた。ほろりとした触感と甘さが心に優しい。
「勿論程度はあると思うけどね。でも椎名ちゃん許してあげたいなって顔をしているよ?」
「…………そう、でしょうか」
それはどんな表情で、昨日煉獄の前でもしてたのだろうか。
想像がつかなくて椎名は自分の顔に触れてみるのだった。