喫茶店の女給になった元婚約者
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本日より日記をつけることにした。
特に理由はない。
あえて言うならば自分の気持にけじめを付けるため。
本日雇ってくれた喫茶店の店主が可愛らしい帳面をくれたから。
そんな程度だ。
藤の家の娘だった私がどうして喫茶店で働くことになったのか書いておこうと思う。
私は、3日前に婚約者だった煉獄杏寿郎様に婚約破棄を突きつけられた。典型的な台詞だったと思う。
「本日この時、君との婚約を破棄する!」ですって!
でもこの台詞、すごい色んな本で読んだ気がする。
そう思った瞬間知らない記憶が蘇った。おかしな言い回しだけれどそうとしか言いようがない。
誰に見せるでもない日記だから本当のことを書こうと思う。
私は前世の記憶を思い出した。
ここより未来の過去の記憶。
飛行機、新幹線、スマホ、SNS、電子レンジ、エアコン……。
目の回るような膨大な記憶に目を回しているうちに杏寿郎様……煉獄様は私との婚約を破棄する理由を述べていた、と思う。正直それどころじゃなくて半分しか聞いてなかったわ。どうやら私は隠のお嬢さんに嫌がらせをしていた、らしい。初耳過ぎて反論も出来なかった。身に覚えが無さすぎて無実を証明する方法が無かったから。こういうのって悪魔の証明って言ったかしら?
本当は反論すべきだったんだろうけれど見たことのない隠のお嬢さんを背に庇い、私を厳しく睨みつけてくる煉獄様にこれまでの尊敬とかほのかに寄せていた愛情は霧散した。心底煉獄様のことがどうでも良くなったのだ。私の話を一言も聞かずに結論を出したのはあまりにせっかちだと思いませんこと?煉獄様。
私は貴方になんにも信用されていなかったのですね。
「そうですか、お幸せに」とだけ告げて私はさっさと煉獄家を後にした。嫁入り前に家のことに慣れておくためと煉獄家に入っていたけれど、無駄な努力になっちゃったわ。千寿郎様には泣かれてしまったけれど、愼寿朗様には黙って送り出された。頭を下げられたのには驚いてしまったけれど私に非が無いのを分かってくださったのだと思えば嬉しかった。
その後、私は家に……は戻れなかった。実家は藤の家だ。柱である煉獄様に婚約破棄された娘など出戻れる場所じゃない。両親だって扱いに困るだろう。そうなれば自分の口は自分で養うしかない。幸いなことに前世の記憶を取り戻した私は働くことに抵抗がない。この時代、まだ外で働く女性は珍しかったけれどいないわけではないし、いかがわしい仕事さえ避けられれば何でも良かった。
……何でも良かったは言いすぎかしらね。私は前世では料理人を目指して専門学校に通っていた学生だった。だから料理に関われる所で働きたい希望はあった。けれどやはりそういう所で女を雇ってくれる場所はほぼ無い。
どうしたものかと街を彷徨うこと2日。ようやく見つけたのが明日から働く喫茶店だった。マスターの奥様が私の事情にいたく同情してくださって雇ってくださるばかりか住み込みの部屋まで貸してくださった。話をよく聞けばこの喫茶店、夜はいかがわしいお店もしているらしい。けれど朝一からの掃除を引き受ける代わりに夕方までの勤めでいいと言ってもらえた。
ありがたくて足を向けて寝られないわ。
明日から頑張って働こうと思う。
もしかするとデザートを手掛ける機会もあるかもしれない。
特に理由はない。
あえて言うならば自分の気持にけじめを付けるため。
本日雇ってくれた喫茶店の店主が可愛らしい帳面をくれたから。
そんな程度だ。
藤の家の娘だった私がどうして喫茶店で働くことになったのか書いておこうと思う。
私は、3日前に婚約者だった煉獄杏寿郎様に婚約破棄を突きつけられた。典型的な台詞だったと思う。
「本日この時、君との婚約を破棄する!」ですって!
でもこの台詞、すごい色んな本で読んだ気がする。
そう思った瞬間知らない記憶が蘇った。おかしな言い回しだけれどそうとしか言いようがない。
誰に見せるでもない日記だから本当のことを書こうと思う。
私は前世の記憶を思い出した。
ここより未来の過去の記憶。
飛行機、新幹線、スマホ、SNS、電子レンジ、エアコン……。
目の回るような膨大な記憶に目を回しているうちに杏寿郎様……煉獄様は私との婚約を破棄する理由を述べていた、と思う。正直それどころじゃなくて半分しか聞いてなかったわ。どうやら私は隠のお嬢さんに嫌がらせをしていた、らしい。初耳過ぎて反論も出来なかった。身に覚えが無さすぎて無実を証明する方法が無かったから。こういうのって悪魔の証明って言ったかしら?
本当は反論すべきだったんだろうけれど見たことのない隠のお嬢さんを背に庇い、私を厳しく睨みつけてくる煉獄様にこれまでの尊敬とかほのかに寄せていた愛情は霧散した。心底煉獄様のことがどうでも良くなったのだ。私の話を一言も聞かずに結論を出したのはあまりにせっかちだと思いませんこと?煉獄様。
私は貴方になんにも信用されていなかったのですね。
「そうですか、お幸せに」とだけ告げて私はさっさと煉獄家を後にした。嫁入り前に家のことに慣れておくためと煉獄家に入っていたけれど、無駄な努力になっちゃったわ。千寿郎様には泣かれてしまったけれど、愼寿朗様には黙って送り出された。頭を下げられたのには驚いてしまったけれど私に非が無いのを分かってくださったのだと思えば嬉しかった。
その後、私は家に……は戻れなかった。実家は藤の家だ。柱である煉獄様に婚約破棄された娘など出戻れる場所じゃない。両親だって扱いに困るだろう。そうなれば自分の口は自分で養うしかない。幸いなことに前世の記憶を取り戻した私は働くことに抵抗がない。この時代、まだ外で働く女性は珍しかったけれどいないわけではないし、いかがわしい仕事さえ避けられれば何でも良かった。
……何でも良かったは言いすぎかしらね。私は前世では料理人を目指して専門学校に通っていた学生だった。だから料理に関われる所で働きたい希望はあった。けれどやはりそういう所で女を雇ってくれる場所はほぼ無い。
どうしたものかと街を彷徨うこと2日。ようやく見つけたのが明日から働く喫茶店だった。マスターの奥様が私の事情にいたく同情してくださって雇ってくださるばかりか住み込みの部屋まで貸してくださった。話をよく聞けばこの喫茶店、夜はいかがわしいお店もしているらしい。けれど朝一からの掃除を引き受ける代わりに夕方までの勤めでいいと言ってもらえた。
ありがたくて足を向けて寝られないわ。
明日から頑張って働こうと思う。
もしかするとデザートを手掛ける機会もあるかもしれない。
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