第一部
夢小説設定
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「かーって嬉しい花一匁♪まけーて悔しい花一匁♪」
夕暮れの近い神社の境内で子供達が向かい合って歌う。適当な石に腰掛けてそれを見ていた雅人に小さな女の子が駆け寄ってきてお手玉を差し出した。
「お兄ちゃんもやって!」
「良いよ」
お手玉を四つ受け取ると高く放り投げる。クルクルと止まることなく周るお手玉に女の子が歓声を上げた。
「すごーい!」
その声につられて子供達が寄ってきた。雅人が一つを特別高く放り投げているうちに他のお手玉を足の下に通す。仕上げに一つを右手の甲、もう一つを左手の甲、一つは頭の上、最後に首の裏で受け止めて見せると一際大きな歓声が上がった。
「なにそれお兄ちゃん!」
「すごいすごい!!」
「もう一回やって!」
「はいはい」
子供達にせがまれるまま日が暮れるまで遊び続ける。
「お兄ちゃんさよならー!」
最後の子供が迎えにきた母親と帰っていくのに手を振ると、雅人はうーんと背伸びをした。
「あぁ、楽しかった」
子供は無邪気で純粋で欲目が無くて良い。雅人は暫く暮れていく空を眺めていたがやがてクツクツと笑い始めた。
「残念だったねぇ。目の前のご馳走にみーんな逃げられちゃって」
閉じられた拝殿の中から湧き出る鬼の気配に雅人は口元だけで笑うと長い方の日輪刀を抜いた。藍錆色の刀が暗闇に溶ける。
「君はどのぐらい強いかなぁ?僕の期待を裏切らないでね」
言い終わるのと同時に拝殿の戸を破って鬼が飛び出た。背中を見せている雅人に襲いかかる。しかし雅人の姿は一瞬でかき消え、鬼の爪は空を切った。
「!?」
「うん?異能持ちじゃない?」
真横から聞こえる声に慌てて距離を取る。鬼は右腕を失っている事に気づいて愕然とした。
(いつの間に…!)
雅人は掴んでいた鬼の腕をポイと投げ捨てた。つまらないとばかりに唇を尖らせる。
「腕の再生も出来ないじゃないか。外れだな」
時間の無駄とばかりに踏み込もうとする雅人に鬼は嫌な笑みを浮かべた。
「阿呆が!!」
「!」
投げ捨てた腕が背後から雅人の脇腹を抉った。横に跳ぶと鬼と距離を取る。鬼の腕は本体と血で繋がっており、うねうねと蠢いていた。雅人はうっすらと笑みを浮かべる。
「なるほど。完全に斬れてないのか。血気術持ってるんじゃないか」
「余裕かましてるからだ!お前みたいのが一番腹立つんだよ!死ねぇっ鬼狩りぃ!!」
腕と本体がバラバラに雅人に向かって襲い掛かってくる。その攻撃を避けながら雅人は繋がっている血に向かい刀を振るった。
「無駄だ!ほんの僅かでも繋がってりゃ斬れた内には…」
ゴロン!と重い音を立てて落ちた腕に鬼は言葉を失った。雅人が落ちた腕に刀を突き立てる。塵と消えていく腕に雅人は面白そうに笑った。
「血液なら吹き飛ばせばバラバラになるからね。ほんの僅かでも繋がっていなければ良いんだろう?」
「………」
(嘘だろ…化けもんかコイツ)
鬼は腕を再生させるとジリ…と後ろに下がった。顔に笑みを張り付けた雅人が一歩踏み出すのに全力で逃走する。
「あんな奴相手にしてられるか!」
「逃げるなんて酷いな。もっと遊んでおくれよ」
「ひっ!?」
暗闇から湧き出るように真後ろに現れた雅人に鬼はひきつった悲鳴を上げた。両腕と足を斬り落とされ地面に転がる。
「うん。繋がれないよう斬ろうと思えば出来るものだね」
「…っ、ま、待ってくれ!もう…もう人は喰わない!だから見逃してくれ!!」
四肢を再生させると鬼は這いつくばって許しを乞うた。見下ろしてくる雅人の殺気に冷や汗が止まらない。
(死んで…死んでたまるか!とにかくここさえ乗り切れりゃ…)
「僕の質問に答えてくれるなら考えてもいいよ?」
ふっと殺気が和らぎ鬼が顔を上げると雅人はニッコリ微笑んでいた。鬼が歪んだ笑みを浮かべる。
「あ、あぁ!何でも聞いてくれ!!」
「じゃあ聞くね。子供を何人喰った?」
雅人の質問に鬼は喉の奥が固まった。そして漸く気付く。雅人は微笑んで見せているが決して笑ってなどいないという事に。鬼は震え始めた体で必死に後ろへ這いずった。
「ふ…二人だけだ!」
「えー?本当に?」
雅人はニコニコしながら鬼を腰で一刀両断にした。ギャァッ!と悲鳴を上げた鬼が必死に体をくっつける。
「嘘はいけないな」
「う…嘘じゃねぇ!ひぃっ!すまねぇ!本当は三人だ!!誓って本当だっ!あの方の名にかけて!!」
「………」
ブルブル震えながら無惨の名に誓う鬼に雅人は怪訝な顔をした。夜明から聞いている行方不明の子供の数と合わない。じっと鬼を見つめていた雅人の瞳が小さく揺れた。
「わかった。そこまで言うなら信じてあげるよ」
「本当か!じゃ、あ…」
顔を上げたと同時に鬼の首は宙を舞っていた。血振りをし納刀した雅人が心から笑う。
「考えたけど見逃すのは止めておくね」
「て、めぇ…こ、の……」
鬼の恨みのこもった視線にひらりと手を振る。塵となって消えていくのを見送ると雅人は自分の脇腹を見下ろした。
「久々に怪我したなぁ」
ここからならば藤の家が近いが蝶屋敷に行くのも良いかもしれない。雅人は小さな三人組の少女達の姿を思い浮かべると歩き始めるのだった。
夕暮れの近い神社の境内で子供達が向かい合って歌う。適当な石に腰掛けてそれを見ていた雅人に小さな女の子が駆け寄ってきてお手玉を差し出した。
「お兄ちゃんもやって!」
「良いよ」
お手玉を四つ受け取ると高く放り投げる。クルクルと止まることなく周るお手玉に女の子が歓声を上げた。
「すごーい!」
その声につられて子供達が寄ってきた。雅人が一つを特別高く放り投げているうちに他のお手玉を足の下に通す。仕上げに一つを右手の甲、もう一つを左手の甲、一つは頭の上、最後に首の裏で受け止めて見せると一際大きな歓声が上がった。
「なにそれお兄ちゃん!」
「すごいすごい!!」
「もう一回やって!」
「はいはい」
子供達にせがまれるまま日が暮れるまで遊び続ける。
「お兄ちゃんさよならー!」
最後の子供が迎えにきた母親と帰っていくのに手を振ると、雅人はうーんと背伸びをした。
「あぁ、楽しかった」
子供は無邪気で純粋で欲目が無くて良い。雅人は暫く暮れていく空を眺めていたがやがてクツクツと笑い始めた。
「残念だったねぇ。目の前のご馳走にみーんな逃げられちゃって」
閉じられた拝殿の中から湧き出る鬼の気配に雅人は口元だけで笑うと長い方の日輪刀を抜いた。藍錆色の刀が暗闇に溶ける。
「君はどのぐらい強いかなぁ?僕の期待を裏切らないでね」
言い終わるのと同時に拝殿の戸を破って鬼が飛び出た。背中を見せている雅人に襲いかかる。しかし雅人の姿は一瞬でかき消え、鬼の爪は空を切った。
「!?」
「うん?異能持ちじゃない?」
真横から聞こえる声に慌てて距離を取る。鬼は右腕を失っている事に気づいて愕然とした。
(いつの間に…!)
雅人は掴んでいた鬼の腕をポイと投げ捨てた。つまらないとばかりに唇を尖らせる。
「腕の再生も出来ないじゃないか。外れだな」
時間の無駄とばかりに踏み込もうとする雅人に鬼は嫌な笑みを浮かべた。
「阿呆が!!」
「!」
投げ捨てた腕が背後から雅人の脇腹を抉った。横に跳ぶと鬼と距離を取る。鬼の腕は本体と血で繋がっており、うねうねと蠢いていた。雅人はうっすらと笑みを浮かべる。
「なるほど。完全に斬れてないのか。血気術持ってるんじゃないか」
「余裕かましてるからだ!お前みたいのが一番腹立つんだよ!死ねぇっ鬼狩りぃ!!」
腕と本体がバラバラに雅人に向かって襲い掛かってくる。その攻撃を避けながら雅人は繋がっている血に向かい刀を振るった。
「無駄だ!ほんの僅かでも繋がってりゃ斬れた内には…」
ゴロン!と重い音を立てて落ちた腕に鬼は言葉を失った。雅人が落ちた腕に刀を突き立てる。塵と消えていく腕に雅人は面白そうに笑った。
「血液なら吹き飛ばせばバラバラになるからね。ほんの僅かでも繋がっていなければ良いんだろう?」
「………」
(嘘だろ…化けもんかコイツ)
鬼は腕を再生させるとジリ…と後ろに下がった。顔に笑みを張り付けた雅人が一歩踏み出すのに全力で逃走する。
「あんな奴相手にしてられるか!」
「逃げるなんて酷いな。もっと遊んでおくれよ」
「ひっ!?」
暗闇から湧き出るように真後ろに現れた雅人に鬼はひきつった悲鳴を上げた。両腕と足を斬り落とされ地面に転がる。
「うん。繋がれないよう斬ろうと思えば出来るものだね」
「…っ、ま、待ってくれ!もう…もう人は喰わない!だから見逃してくれ!!」
四肢を再生させると鬼は這いつくばって許しを乞うた。見下ろしてくる雅人の殺気に冷や汗が止まらない。
(死んで…死んでたまるか!とにかくここさえ乗り切れりゃ…)
「僕の質問に答えてくれるなら考えてもいいよ?」
ふっと殺気が和らぎ鬼が顔を上げると雅人はニッコリ微笑んでいた。鬼が歪んだ笑みを浮かべる。
「あ、あぁ!何でも聞いてくれ!!」
「じゃあ聞くね。子供を何人喰った?」
雅人の質問に鬼は喉の奥が固まった。そして漸く気付く。雅人は微笑んで見せているが決して笑ってなどいないという事に。鬼は震え始めた体で必死に後ろへ這いずった。
「ふ…二人だけだ!」
「えー?本当に?」
雅人はニコニコしながら鬼を腰で一刀両断にした。ギャァッ!と悲鳴を上げた鬼が必死に体をくっつける。
「嘘はいけないな」
「う…嘘じゃねぇ!ひぃっ!すまねぇ!本当は三人だ!!誓って本当だっ!あの方の名にかけて!!」
「………」
ブルブル震えながら無惨の名に誓う鬼に雅人は怪訝な顔をした。夜明から聞いている行方不明の子供の数と合わない。じっと鬼を見つめていた雅人の瞳が小さく揺れた。
「わかった。そこまで言うなら信じてあげるよ」
「本当か!じゃ、あ…」
顔を上げたと同時に鬼の首は宙を舞っていた。血振りをし納刀した雅人が心から笑う。
「考えたけど見逃すのは止めておくね」
「て、めぇ…こ、の……」
鬼の恨みのこもった視線にひらりと手を振る。塵となって消えていくのを見送ると雅人は自分の脇腹を見下ろした。
「久々に怪我したなぁ」
ここからならば藤の家が近いが蝶屋敷に行くのも良いかもしれない。雅人は小さな三人組の少女達の姿を思い浮かべると歩き始めるのだった。