第二部
夢小説設定
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「う…おぉぉぉぉおっ!!」
ゴリゴリゴリ…!と凄まじい音と共に背よりも高い大岩が動き出す。雅人は岩の前に障害物が来ないよう注意しながら一町を押し終えた。呼吸を整えると大きく息を吐き出す。
「相生」
「悲鳴嶼さん、やっと終わりましたよ。これ、他の隊士は大丈夫なの?」
汗を拭うとワイシャツを羽織る。悲鳴嶼が小首を傾げた。
「丸太担ぎは護摩火の上では行っていない。十分一般隊士には配慮したつもりだ」
「マジかー」
柱の配慮は容赦無い。雅人は面白そうに笑った。悲鳴嶼が手を合わせる。
「他の者の心配をするようになったとは…君は本当に変わったのだな相生」
「時透君には戻ったって言われましたよ。子供って本当に面白い」
「…君は、子供が相変わらず好きなのだな」
悲鳴嶼のどこか否定的な声に雅人は肩をすくめた。この話で悲鳴嶼と意見が合ったことがない。
「好きですよ。子供は自分に正直だ。打算が無い。勘が鋭くて見たままを受け入れる柔軟な生き物だ。見てて飽きないでしょ」
「…それ故に残酷で自分勝手だ」
「大人の方がよっぽどだと思いますけど」
大人は裏切る。騙す。掠め取るし、相手を蹴落とす。そこまで考えて雅人は苦い笑いを浮かべた。
「結局僕も貴方も自分の見たものしか信じてないんだ」
悲鳴嶼は子供に裏切られた。雅人は大人に搾取されてきた。無論、黙って搾取されるばかりではなかったけれど。だから尚のこと子供の純粋さが眩しい。
「今更考えを改める必要はないでしょ。お互いにはいそうですかと素直に納得する質でもない。ただ、僕はそう思ってるってだけです」
「…そうか、そうだな」
悲鳴嶼は僅かに口元を緩めた。幼子を否定する事は受け入れられることが少なく、批判されたり、口には出さずとも空気が冷える事もしばしばだ。
(あるがままを受け入れるという意味では、君もまだ幼いという事なのだろうか)
「………何してんですか」
わしわしと頭を撫でられて雅人は憮然とした。いい年をした男が自分よりも大男に頭を撫でられて誰が嬉しいと思うのか。
「いや、煉獄は良き友を持った」
「僕、悲鳴嶼さんの思考回路がよく分かんなくなってきた」
何でそこで煉獄が出てくるのか。額を押さえる雅人に悲鳴嶼は微笑むばかりだ。
(良しも悪しも受け入れてくれる友というのは良いものだろうな)
自分にも居てくれたらとは思うが、良いものだからこそ得難いのだろう。
「これで柱稽古は終いだ。煉獄の稽古を手伝ってやるといい」
「お世話になりました」
煉獄家に戻ると鉄乃条からの刀が届いており、その仕上がりに雅人は薄く微笑んだ。
ゴリゴリゴリ…!と凄まじい音と共に背よりも高い大岩が動き出す。雅人は岩の前に障害物が来ないよう注意しながら一町を押し終えた。呼吸を整えると大きく息を吐き出す。
「相生」
「悲鳴嶼さん、やっと終わりましたよ。これ、他の隊士は大丈夫なの?」
汗を拭うとワイシャツを羽織る。悲鳴嶼が小首を傾げた。
「丸太担ぎは護摩火の上では行っていない。十分一般隊士には配慮したつもりだ」
「マジかー」
柱の配慮は容赦無い。雅人は面白そうに笑った。悲鳴嶼が手を合わせる。
「他の者の心配をするようになったとは…君は本当に変わったのだな相生」
「時透君には戻ったって言われましたよ。子供って本当に面白い」
「…君は、子供が相変わらず好きなのだな」
悲鳴嶼のどこか否定的な声に雅人は肩をすくめた。この話で悲鳴嶼と意見が合ったことがない。
「好きですよ。子供は自分に正直だ。打算が無い。勘が鋭くて見たままを受け入れる柔軟な生き物だ。見てて飽きないでしょ」
「…それ故に残酷で自分勝手だ」
「大人の方がよっぽどだと思いますけど」
大人は裏切る。騙す。掠め取るし、相手を蹴落とす。そこまで考えて雅人は苦い笑いを浮かべた。
「結局僕も貴方も自分の見たものしか信じてないんだ」
悲鳴嶼は子供に裏切られた。雅人は大人に搾取されてきた。無論、黙って搾取されるばかりではなかったけれど。だから尚のこと子供の純粋さが眩しい。
「今更考えを改める必要はないでしょ。お互いにはいそうですかと素直に納得する質でもない。ただ、僕はそう思ってるってだけです」
「…そうか、そうだな」
悲鳴嶼は僅かに口元を緩めた。幼子を否定する事は受け入れられることが少なく、批判されたり、口には出さずとも空気が冷える事もしばしばだ。
(あるがままを受け入れるという意味では、君もまだ幼いという事なのだろうか)
「………何してんですか」
わしわしと頭を撫でられて雅人は憮然とした。いい年をした男が自分よりも大男に頭を撫でられて誰が嬉しいと思うのか。
「いや、煉獄は良き友を持った」
「僕、悲鳴嶼さんの思考回路がよく分かんなくなってきた」
何でそこで煉獄が出てくるのか。額を押さえる雅人に悲鳴嶼は微笑むばかりだ。
(良しも悪しも受け入れてくれる友というのは良いものだろうな)
自分にも居てくれたらとは思うが、良いものだからこそ得難いのだろう。
「これで柱稽古は終いだ。煉獄の稽古を手伝ってやるといい」
「お世話になりました」
煉獄家に戻ると鉄乃条からの刀が届いており、その仕上がりに雅人は薄く微笑んだ。