第二部
夢小説設定
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「………」
(何でこんな所にいるのかな僕は)
産屋敷家の縁側部分に正座しながら雅人はまだ呆然としていた。煉獄と酒を飲み交わした翌日、雅人は柱合会議の場へと呼び出されていた。流石に柱と同じ座敷に上がるわけにはいかないので縁側にいるが、不死川や伊黒からの威圧感が凄い。
(僕、今回は何もしてない)
雅人が黙って針の筵に耐えていると、アマネが輝利哉とかなたを伴い入ってきた。産屋敷の代理としての挨拶に雅人がひっそりと息を飲む。柱達が頭を下げるのに倣い雅人も深く首を垂れた。
禰󠄀豆子の話から最終決戦、痣の話に流れていく。自爆した甘露寺はともかくその時の状況を正確に伝える時透の話の後、アマネが雅人の方を向いた。
「相生様、甘露寺様が痣を発現した際その場にいらっしゃったと報告を受けております。何かお気付きになられた事はありませんか?」
「はっ!あの時は…」
(あ、僕伊黒さんに殺されるかな)
雅人は一瞬躊躇した後、話を続けることにした。ここで話すのをやめたら今度は不死川に殺されるだけだ。
「戦闘直後に蜜…んんっ、甘露寺さんから聞いた話によると血の流れを速くする事と心拍数を上げる事を意識していたと言っていました。それから異常に体温が高かった事を記憶しています」
「待て。何故甘露寺の体温を知っている。貴様…」
蜜璃と名前を呼びかけただけで睨まれ、挙句凄まれた雅人に甘露寺が慌てて助け舟を出す。
「ち、違うの伊黒さん!最後鬼の塵に飲み込まれそうになったのを雅人君が拾い上げてくれただけなのよ!!」
「…そうか」
甘露寺当人に言われればそれ以上は何も言えない。伊黒が黙ったので雅人が続ける。
「強い怒りと言うのも甘露寺さんに当てはまると思います。以前遊郭での任務後、炭治郎に話を聞いた時も上弦の陸の物言いに我を忘れるような強い怒りを感じたと言っていました」
「そ、そっか。そう言うことを言えば良かったのね」
しのぶが差し出してくれたハンカチで汗を拭く甘露寺が呟く。悲鳴嶼の何とかすると言う返事にアマネが小さく頭を下げた。痣に関する事柄を話し終えると雅人の方を向く。
「今日、何故この場に呼ばれたか不思議に思われていることでしょう」
「…はい」
しかも自分が同席している事に不死川も誰も何も言わなかったのだ。気味が悪いにも程がある。頷く雅人にアマネは体ごと向き直ると深々と頭を下げた。
「本日を持って相生様を柱に昇格し、正式に夜柱の名を…」
「ちょ、ちょっと待って下さい」
両手を突き出すと雅人はアマネの言葉を遮った。失礼千万なのは承知の上だがとんでもない空耳が聞こえた気がする。
「何か?」
「聞き間違いですよね?僕を柱に昇格させるとか…?」
「その通りにございます」
「いやいやいや、杏寿…煉獄が了承する訳ないです」
今の雅人は煉獄家預かりのようなものだ。条件付きで鬼殺隊に復帰している。そんな問題有りの隊士が柱になんて聞いたことが無い。しかしアマネは不思議そうに首を傾げた。
「煉獄様からは推薦状を頂いております」
「う、え…っ!?」
喉の奥から変な声が出て雅人は口を押さえた。あのヤロウ…と呟きたいのを飲み込む。
「それと宇髄様よりも」
「………」
完全に黙ってしまった雅人に甘露寺の耐えきれない忍び笑いが聞こえた。
「相生」
黙ってこのやりとりを聞いていた悲鳴嶼が口を開いた。数珠を持った手を合わせる。
「今は君の柱としての資格や是非を問うている時ではない。総力戦が近づいている今、少しでも隊士達の指揮が上がる事が大切なのだ」
(柱が二人抜けた今、少しでも柱の数を増やしたいってことか…あれ?)
「申し訳ありませんが一つだけお伺いさせて下さい。僕は柱への昇格条件を満たしていたでしょうか」
雅人の最後の記憶では自分の階級は乙。復帰の時に更に降格されているはずなのでそんな短期間で甲まで上がったとは思えない。その上自分は十二鬼月を倒していないのだ。雅人の問いに答えたのは悲鳴嶼だった。
「私がお館様に進言して君の階級を早い段階で甲まで上げた。それと君は十二鬼月こそ倒していないが、討伐した鬼の数で言えば60をとうに超えている」
雅人を大きく息を吸い込むと背筋を伸ばした。両手をつくと深く頭を下げる。
「謹んでお受け致します」
「ありがとうございます。病床の耀哉も喜ぶことでしょう」
アマネは柱に最後の挨拶をすると退室していった。冨岡のお前達とは違う発言や悲鳴嶼の提案の話し合いを済ませると帰宅のために立ち上がる。悲鳴嶼が雅人を呼び止めた。
「煉獄にこの手紙を渡してくれ。相生、君はまだ稽古をつけるより参加する方が良いだろう。その旨も書いてある」
「ありがとうございます。あ、そっちは宇髄さん宛ですか?ついでに持っていきますよ」
雅人が手を出せば隠に手紙を渡そうとしていた悲鳴嶼の手が止まった。
「音屋敷は離れているだろう」
「きっと二人揃ってニヤつきながら待ってると思うんで」
腹立たしい事にきっと外れていない予想だ。雅人の台詞に悲鳴嶼は静かに笑うと手紙を雅人に渡した。それを見ていた不死川が尋ねる。
「悲鳴嶼さんは相生のこと前から知ってたのかぁ?」
やり取りに初対面の固さがない。
「うむ。相生はもう何年も前から時間がある時には私の所に稽古に来ていたりしたからな」
「あ、ちょ…悲鳴嶼さんそれは」
「隠し立てするようなことではあるまい。一度は継子になる事も提案したのだが、もっと生真面目な者を継子にした方が良いと言っていただろう」
「へぇ」
感心した視線を向けられて雅人は片手で顔を覆った。努力とか真面目とか自分に似合わないものは知られたく無い。
「とにかくコレ、預かっていきます」
雅人はヒラリと手紙を振ると懐に仕舞い込み、産屋敷邸を後にした。
(何でこんな所にいるのかな僕は)
産屋敷家の縁側部分に正座しながら雅人はまだ呆然としていた。煉獄と酒を飲み交わした翌日、雅人は柱合会議の場へと呼び出されていた。流石に柱と同じ座敷に上がるわけにはいかないので縁側にいるが、不死川や伊黒からの威圧感が凄い。
(僕、今回は何もしてない)
雅人が黙って針の筵に耐えていると、アマネが輝利哉とかなたを伴い入ってきた。産屋敷の代理としての挨拶に雅人がひっそりと息を飲む。柱達が頭を下げるのに倣い雅人も深く首を垂れた。
禰󠄀豆子の話から最終決戦、痣の話に流れていく。自爆した甘露寺はともかくその時の状況を正確に伝える時透の話の後、アマネが雅人の方を向いた。
「相生様、甘露寺様が痣を発現した際その場にいらっしゃったと報告を受けております。何かお気付きになられた事はありませんか?」
「はっ!あの時は…」
(あ、僕伊黒さんに殺されるかな)
雅人は一瞬躊躇した後、話を続けることにした。ここで話すのをやめたら今度は不死川に殺されるだけだ。
「戦闘直後に蜜…んんっ、甘露寺さんから聞いた話によると血の流れを速くする事と心拍数を上げる事を意識していたと言っていました。それから異常に体温が高かった事を記憶しています」
「待て。何故甘露寺の体温を知っている。貴様…」
蜜璃と名前を呼びかけただけで睨まれ、挙句凄まれた雅人に甘露寺が慌てて助け舟を出す。
「ち、違うの伊黒さん!最後鬼の塵に飲み込まれそうになったのを雅人君が拾い上げてくれただけなのよ!!」
「…そうか」
甘露寺当人に言われればそれ以上は何も言えない。伊黒が黙ったので雅人が続ける。
「強い怒りと言うのも甘露寺さんに当てはまると思います。以前遊郭での任務後、炭治郎に話を聞いた時も上弦の陸の物言いに我を忘れるような強い怒りを感じたと言っていました」
「そ、そっか。そう言うことを言えば良かったのね」
しのぶが差し出してくれたハンカチで汗を拭く甘露寺が呟く。悲鳴嶼の何とかすると言う返事にアマネが小さく頭を下げた。痣に関する事柄を話し終えると雅人の方を向く。
「今日、何故この場に呼ばれたか不思議に思われていることでしょう」
「…はい」
しかも自分が同席している事に不死川も誰も何も言わなかったのだ。気味が悪いにも程がある。頷く雅人にアマネは体ごと向き直ると深々と頭を下げた。
「本日を持って相生様を柱に昇格し、正式に夜柱の名を…」
「ちょ、ちょっと待って下さい」
両手を突き出すと雅人はアマネの言葉を遮った。失礼千万なのは承知の上だがとんでもない空耳が聞こえた気がする。
「何か?」
「聞き間違いですよね?僕を柱に昇格させるとか…?」
「その通りにございます」
「いやいやいや、杏寿…煉獄が了承する訳ないです」
今の雅人は煉獄家預かりのようなものだ。条件付きで鬼殺隊に復帰している。そんな問題有りの隊士が柱になんて聞いたことが無い。しかしアマネは不思議そうに首を傾げた。
「煉獄様からは推薦状を頂いております」
「う、え…っ!?」
喉の奥から変な声が出て雅人は口を押さえた。あのヤロウ…と呟きたいのを飲み込む。
「それと宇髄様よりも」
「………」
完全に黙ってしまった雅人に甘露寺の耐えきれない忍び笑いが聞こえた。
「相生」
黙ってこのやりとりを聞いていた悲鳴嶼が口を開いた。数珠を持った手を合わせる。
「今は君の柱としての資格や是非を問うている時ではない。総力戦が近づいている今、少しでも隊士達の指揮が上がる事が大切なのだ」
(柱が二人抜けた今、少しでも柱の数を増やしたいってことか…あれ?)
「申し訳ありませんが一つだけお伺いさせて下さい。僕は柱への昇格条件を満たしていたでしょうか」
雅人の最後の記憶では自分の階級は乙。復帰の時に更に降格されているはずなのでそんな短期間で甲まで上がったとは思えない。その上自分は十二鬼月を倒していないのだ。雅人の問いに答えたのは悲鳴嶼だった。
「私がお館様に進言して君の階級を早い段階で甲まで上げた。それと君は十二鬼月こそ倒していないが、討伐した鬼の数で言えば60をとうに超えている」
雅人を大きく息を吸い込むと背筋を伸ばした。両手をつくと深く頭を下げる。
「謹んでお受け致します」
「ありがとうございます。病床の耀哉も喜ぶことでしょう」
アマネは柱に最後の挨拶をすると退室していった。冨岡のお前達とは違う発言や悲鳴嶼の提案の話し合いを済ませると帰宅のために立ち上がる。悲鳴嶼が雅人を呼び止めた。
「煉獄にこの手紙を渡してくれ。相生、君はまだ稽古をつけるより参加する方が良いだろう。その旨も書いてある」
「ありがとうございます。あ、そっちは宇髄さん宛ですか?ついでに持っていきますよ」
雅人が手を出せば隠に手紙を渡そうとしていた悲鳴嶼の手が止まった。
「音屋敷は離れているだろう」
「きっと二人揃ってニヤつきながら待ってると思うんで」
腹立たしい事にきっと外れていない予想だ。雅人の台詞に悲鳴嶼は静かに笑うと手紙を雅人に渡した。それを見ていた不死川が尋ねる。
「悲鳴嶼さんは相生のこと前から知ってたのかぁ?」
やり取りに初対面の固さがない。
「うむ。相生はもう何年も前から時間がある時には私の所に稽古に来ていたりしたからな」
「あ、ちょ…悲鳴嶼さんそれは」
「隠し立てするようなことではあるまい。一度は継子になる事も提案したのだが、もっと生真面目な者を継子にした方が良いと言っていただろう」
「へぇ」
感心した視線を向けられて雅人は片手で顔を覆った。努力とか真面目とか自分に似合わないものは知られたく無い。
「とにかくコレ、預かっていきます」
雅人はヒラリと手紙を振ると懐に仕舞い込み、産屋敷邸を後にした。