「あっ！雅人君！！」
「やぁ、蜜璃ちゃん」
　滞在三日目、雅人が食事をとりに行くと甘露寺が先に食事をしていた。まだ食器が三つ四つしか積まれていない所を見ると食べ始めたばかりのようである。雅人は小さく笑うとその隣に腰掛けた。
「珍しいわね！雅人君が刀鍛冶の里に来てるなんて！」
「うん、鯉口が緩んでね」
　言いながら舞茸の天ぷらを口に運ぶ。雅人は少しホッとしていた。
（情けないな、蜜璃ちゃんに会ってホッとするとか。随分参ってたみたいだ）
　しかし甘露寺が居てくれるのは正直助かる。万が一鉄乃条に捕まった時でも甘露寺の剛力があれば心強い。
（いや、だいぶ参ってるな僕）
　雅人は思わず頭を抱えた。女の子の剛力に期待するとか、隊士の前に一人の男として情けない。
「大丈夫？雅人君。何か悩み事があるなら相談に乗るわよ？」
「…ありがとう。鉄乃条に困らされてるだけだよ」
「あぁ…鉄乃条さんね。なんていうか、大変ね雅人君も」
「………どうも」
　いつも底抜けに明るく前向きな甘露寺にまで同情されて流石に雅人は沈没した。日輪刀を大事にしようと心の底から思う。
　雅人は食事をかき込むと立ち上がった。お代わりを受け取っていた甘露寺が目を丸くする。
「えっ！？もうご馳走様！？」
「ゆっくり食べたいのは山々だけど、鉄乃条に見つかりたくないからもう行くよ。またね、蜜璃ちゃん」
「わ、わかったわ！また美味しいお店の情報交換しようね！」
　握り拳で送り出す甘露寺に雅人が柔らかく微笑む。これまでに見たことのない柔らかな対応の雅人に甘露寺はキュン！とときめいた。
（雅人君、変わったわ！どこがとは言えないけれど…でも凄く素敵！！）
「あ！お代わりくださーい！！」
　甘露寺の元気な声が食事処に木霊した。