第二部
夢小説設定
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「到着でございます」
しゅるりと目隠しを取られ雅人は目を開けた。山間に建てられた三階建の建物が並ぶ街並みを見上げる。
「鉄珍さんの住まいは?」
「あちらを左に曲がった先でございます」
「ん、ありがとう」
ふぅ…と重いため息が零れる。隠の戸惑いが伝わってきて雅人はポケットに入れてあった金平糖の箱を投げ渡した。
「大丈夫。鉄乃条に会うのが憂鬱なだけだから」
「あぁ…」
隠にまで同情の眼差しを向けられ雅人はますます気が重くなった。鉄珍の所で待ち構えているのだろうが、全力で行きたくない。
(頑張りなよ僕)
日輪刀に不備があるのは命に関わる。雅人は気合を入れると鉄珍の家へと向かった。通された客間で先ずは鉄珍に挨拶をする。
「どうぞ宜しくお願い致します」
畳に手をつき深く頭を下げると鉄珍が一つ頷く。その場にいないのに強烈な香の匂いをさせる鉄乃条に雅人はうんざりした表情を上手く隠せなかった。
「すまんの。君の刀は鉄乃条でないと打てん代物でな。あの子も悪い子ではないから勘弁したってな」
「いえ、それはもう重々承知しております」
変人でも変態でも鉄乃条の鍛治の腕は確かなのだ。雅人が刀を振るった時に風を切る音がしないのは夜の呼吸に欠かせない要素。それには刀の表面の摩擦を最大限減らすことが必要で、繊細な技術が必要になる。
「ひとつだけお願いがあるのですが」
「うん、何でも言ってちょうだいよ」
「最終調整の時だけで良いので鉄乃条を抑えられる人の配置をお願いします」
最後の確認だけは落ち着いた状態でやらなければここまで来た意味が無い。雅人が頭を下げればそれだけで良いの?と尋ねられた。
「自分の身ぐらいは守れます」
「そかそか。じゃ、最終調整の時ね」
「あぁっ!もう我慢出来ないわ!!!」
バン!!と大きな音を立てて襖が開いた。飛び込んできたのは緩くウェーブのかかった長い黒髪に、通った鼻筋と割れた顎に堀の深い顔立ち、そして溢れる胸筋を振袖の中に無理くり押し込めた雪上鉄乃条だ。顔立ちは男らしく整っていると言えなくないのだが、いかんせん施された厚化粧のせいで台無しである。
「私の雅人に早く会わせて!!」
「鉄乃条や、誰が入って良いと言ったんよ」
「だって鉄珍様ったらいつまでも呼んでくださらないから!!」
鉄乃条が鉄珍を見て、その向かい側に視線を向ければ既にそこに雅人の姿はなかった。長短の日輪刀が一対置かれているだけだ。ふわりと風が舞い込み鉄乃条が窓の方へ顔を向ける。
「では僕はこれで」
窓枠に足をかけ次の瞬間雅人は消えた。鉄乃条が窓枠に縋って声を限りに叫ぶ。
「雅人!この里にいる限り逃さないわよぉ!!」
(なにそれ!こっわ!!)
鉄珍の家の屋根の上で、恐怖に身を震わせる雅人だった。
しゅるりと目隠しを取られ雅人は目を開けた。山間に建てられた三階建の建物が並ぶ街並みを見上げる。
「鉄珍さんの住まいは?」
「あちらを左に曲がった先でございます」
「ん、ありがとう」
ふぅ…と重いため息が零れる。隠の戸惑いが伝わってきて雅人はポケットに入れてあった金平糖の箱を投げ渡した。
「大丈夫。鉄乃条に会うのが憂鬱なだけだから」
「あぁ…」
隠にまで同情の眼差しを向けられ雅人はますます気が重くなった。鉄珍の所で待ち構えているのだろうが、全力で行きたくない。
(頑張りなよ僕)
日輪刀に不備があるのは命に関わる。雅人は気合を入れると鉄珍の家へと向かった。通された客間で先ずは鉄珍に挨拶をする。
「どうぞ宜しくお願い致します」
畳に手をつき深く頭を下げると鉄珍が一つ頷く。その場にいないのに強烈な香の匂いをさせる鉄乃条に雅人はうんざりした表情を上手く隠せなかった。
「すまんの。君の刀は鉄乃条でないと打てん代物でな。あの子も悪い子ではないから勘弁したってな」
「いえ、それはもう重々承知しております」
変人でも変態でも鉄乃条の鍛治の腕は確かなのだ。雅人が刀を振るった時に風を切る音がしないのは夜の呼吸に欠かせない要素。それには刀の表面の摩擦を最大限減らすことが必要で、繊細な技術が必要になる。
「ひとつだけお願いがあるのですが」
「うん、何でも言ってちょうだいよ」
「最終調整の時だけで良いので鉄乃条を抑えられる人の配置をお願いします」
最後の確認だけは落ち着いた状態でやらなければここまで来た意味が無い。雅人が頭を下げればそれだけで良いの?と尋ねられた。
「自分の身ぐらいは守れます」
「そかそか。じゃ、最終調整の時ね」
「あぁっ!もう我慢出来ないわ!!!」
バン!!と大きな音を立てて襖が開いた。飛び込んできたのは緩くウェーブのかかった長い黒髪に、通った鼻筋と割れた顎に堀の深い顔立ち、そして溢れる胸筋を振袖の中に無理くり押し込めた雪上鉄乃条だ。顔立ちは男らしく整っていると言えなくないのだが、いかんせん施された厚化粧のせいで台無しである。
「私の雅人に早く会わせて!!」
「鉄乃条や、誰が入って良いと言ったんよ」
「だって鉄珍様ったらいつまでも呼んでくださらないから!!」
鉄乃条が鉄珍を見て、その向かい側に視線を向ければ既にそこに雅人の姿はなかった。長短の日輪刀が一対置かれているだけだ。ふわりと風が舞い込み鉄乃条が窓の方へ顔を向ける。
「では僕はこれで」
窓枠に足をかけ次の瞬間雅人は消えた。鉄乃条が窓枠に縋って声を限りに叫ぶ。
「雅人!この里にいる限り逃さないわよぉ!!」
(なにそれ!こっわ!!)
鉄珍の家の屋根の上で、恐怖に身を震わせる雅人だった。