第一部
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お兄ちゃん!」
「っ!!」
名を呼ばれ雅人はハッと目を開けた。懐かしい部屋に目の前には不安そうな妹。自分は袴姿で、商売に精を出している父と母の声が店面から聞こえてきた。
「お兄ちゃん具合悪い?また今度でいいよ?」
「あ…いや、大丈夫だよ。ちょっとぼーっとしてただけだから」
(そうだ。妹に文字を教えていたんだった)
雅人の両親は一膳飯屋を営んでいた。小さな構えの店だったが父の腕がよく、店は繁盛していた。料理というものに全く興味が無く子供の頃から既に剣術に夢中だった雅人はそれを手伝う事もなく両親を悩ませていた。
そんな問題児だった雅人とは違い妹はよく学び両親の手伝いをする良い子だった。雅人は自分と真逆の妹が可愛くて仕方がなかった。
「お兄ちゃんやっぱり変。少し休んだ方が良いよ。ね?」
「…そうだね。ちょっと休もうか」
(何だろう?凄く遠くを見てるみたいだ)
雅人はふらりと立ち上がると店につながる廊下へ向かった。曲がり角からそっと覗くと母が忙しそうに走り回っている。
「おい!飯はまだかよ!」
「はーい!ただいま!」
怒鳴りつけた客に明るく返事をしながらも両手が一杯だった母がカウンターに置かれた料理に視線を走らせる。雅人は思わず店内に入ると料理の乗った御膳を手にした。
「これ?」
「あ、え、えぇ」
一度もそんなことをしたことのない雅人の行動に母親は目を丸くして頷いた。雅人が料理を運ぶと客がパッと笑顔になる。
「おおっ!美味そう!!女将の息子か?美人だなぁ」
「どーも」
客の揶揄いをサラリとかわすと空いたテーブルに残っていた食器を下げる。父親がポカンとしたままそれを受け取った。
(子供だったんだなぁ)
今のように周りの視線をかわす術を知らなかった。全部正面から受け取って苛立って…。
「次はどれを運ぶの?」
「おぉ、コイツを頼む。二番の卓だ」
「ん」
料理を運び、皿を下げ、テーブルを拭いて回る。ただこれだけの単純作業に雅人は懐かしさで泣きそうだった。
(ごめん…ごめんっ………本当に僕は馬鹿だ)
斜に構えて世の中を知ったつもりだった。自分のしている事は間違いじゃないと。こうして平穏に日々を過ごす事がどれほど愛おしいか知ろうともしなかった。雅人はテーブルを拭いていた布巾をギュッと握り締めた。
(もうどれも戻ってこないのに…何を今更…っ)
「お兄ちゃん」
ハッと我に帰ると雅人は振り返った。両親と妹が微笑んでこちらを見ている。
「ずっと一緒だよ」
「貴方を見守っているわ」
「だから安心して行っておいで」
姿がぼやけて見えるのは夢が終わろうとしているからか、自分が泣いているからか。
「雅人!」
力強く名を呼ばれて雅人は後ろを見た。炎の羽織を翻した煉獄が自分を待っている。
「行くぞ雅人!」
(夢なのに…出来過ぎでしょ)
まだ自分に出来る事があるなら立ち止まるわけにはいかない。煉獄に向かって足を踏み出した雅人を炎が包んだ。
「行ってらっしゃい!お兄ちゃん!!」
隊服を身につけた雅人に妹が大きく手を振った。
「っ!!」
名を呼ばれ雅人はハッと目を開けた。懐かしい部屋に目の前には不安そうな妹。自分は袴姿で、商売に精を出している父と母の声が店面から聞こえてきた。
「お兄ちゃん具合悪い?また今度でいいよ?」
「あ…いや、大丈夫だよ。ちょっとぼーっとしてただけだから」
(そうだ。妹に文字を教えていたんだった)
雅人の両親は一膳飯屋を営んでいた。小さな構えの店だったが父の腕がよく、店は繁盛していた。料理というものに全く興味が無く子供の頃から既に剣術に夢中だった雅人はそれを手伝う事もなく両親を悩ませていた。
そんな問題児だった雅人とは違い妹はよく学び両親の手伝いをする良い子だった。雅人は自分と真逆の妹が可愛くて仕方がなかった。
「お兄ちゃんやっぱり変。少し休んだ方が良いよ。ね?」
「…そうだね。ちょっと休もうか」
(何だろう?凄く遠くを見てるみたいだ)
雅人はふらりと立ち上がると店につながる廊下へ向かった。曲がり角からそっと覗くと母が忙しそうに走り回っている。
「おい!飯はまだかよ!」
「はーい!ただいま!」
怒鳴りつけた客に明るく返事をしながらも両手が一杯だった母がカウンターに置かれた料理に視線を走らせる。雅人は思わず店内に入ると料理の乗った御膳を手にした。
「これ?」
「あ、え、えぇ」
一度もそんなことをしたことのない雅人の行動に母親は目を丸くして頷いた。雅人が料理を運ぶと客がパッと笑顔になる。
「おおっ!美味そう!!女将の息子か?美人だなぁ」
「どーも」
客の揶揄いをサラリとかわすと空いたテーブルに残っていた食器を下げる。父親がポカンとしたままそれを受け取った。
(子供だったんだなぁ)
今のように周りの視線をかわす術を知らなかった。全部正面から受け取って苛立って…。
「次はどれを運ぶの?」
「おぉ、コイツを頼む。二番の卓だ」
「ん」
料理を運び、皿を下げ、テーブルを拭いて回る。ただこれだけの単純作業に雅人は懐かしさで泣きそうだった。
(ごめん…ごめんっ………本当に僕は馬鹿だ)
斜に構えて世の中を知ったつもりだった。自分のしている事は間違いじゃないと。こうして平穏に日々を過ごす事がどれほど愛おしいか知ろうともしなかった。雅人はテーブルを拭いていた布巾をギュッと握り締めた。
(もうどれも戻ってこないのに…何を今更…っ)
「お兄ちゃん」
ハッと我に帰ると雅人は振り返った。両親と妹が微笑んでこちらを見ている。
「ずっと一緒だよ」
「貴方を見守っているわ」
「だから安心して行っておいで」
姿がぼやけて見えるのは夢が終わろうとしているからか、自分が泣いているからか。
「雅人!」
力強く名を呼ばれて雅人は後ろを見た。炎の羽織を翻した煉獄が自分を待っている。
「行くぞ雅人!」
(夢なのに…出来過ぎでしょ)
まだ自分に出来る事があるなら立ち止まるわけにはいかない。煉獄に向かって足を踏み出した雅人を炎が包んだ。
「行ってらっしゃい!お兄ちゃん!!」
隊服を身につけた雅人に妹が大きく手を振った。