第一部
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ーー炎の呼吸 壱ノ型 不知火ーー
(浅い!)
深い森の中、煉獄の一撃は鬼の首を浅く傷つけただけだった。倒れている隊士には見向きもせず脱兎で鬼が逃げていく。
「阿呆がっ!誰が正面切って戦うかよ!!」
後ろを振り返り毒付く鬼は、しかし次の瞬間自分の視界が傾いでいくのに目を疑った。柔らかな声が耳元で囁く。
「そうだよね。正面切って戦うなんて正直者だけだよ」
(俺…斬られ、て………)
ドシャッと重い音を立てて崩れ落ちた鬼が塵と消えて行く。その傍に立つ男に煉獄はゆっくり歩み寄った。
「君がいるなら俺は必要なかったな!雅人!!」
「久しぶりだね杏寿郎。3ヶ月ぶりぐらいかな」
雅人と呼ばれた男は振り返ると煉獄にひらりと手を振った。烏の濡れ羽色の髪がサラリと揺れる。煉獄は自分よりも僅かに高い顔を見上げるとニカッと笑った。
「元気そうで何よりだ!」
「それはこっちの台詞でしょ?炎柱は忙しそうだね」
長さの違う二振りの濃紺の刃を持った日輪刀を血振りすると納刀する。雅人は気だる気な顔をした。
「柱を務めるなんて杏寿郎の気が知れないよ。そんな面倒な事よくやってるね」
「君は相変わらずだな!」
隠から怪我人の報告を聞く為に来た道を引き返す。隠に呼び止められる杏寿郎を他所に雅人は足元にあったものを拾った。
「あっ…あ、それ…っ」
隠の手当てを受けていた隊士が声を震わせる。雅人は拾った腕を手ににっこり笑った。
「ん?君の?これまだいる?」
「…っ!………い、り…ません…」
千切れた腕がいくらあっても繋がることはない。隊士は何とか声を振り絞りそう答えた。雅人が機嫌よく頷く。
「あ、そう。じゃあ鬼寄せの餌がわりに貰ってくね」
ズビシッ!!
「いってぇ!!」
脳天にチョップをかまされて雅人はうずくまった。額に青筋を浮かべた煉獄が腕を取り上げる。それを隠に渡すと煉獄は腰に手を当て雅人を冷たく見下ろした。
「人の気持ちに疎いのは君の悪い癖だ!」
「だからって!杏寿郎の全力手刀とか背縮むよ!!」
雅人は涙目で煉獄を見上げた。煉獄が呆れたようにため息をつくと、手を掴んで立たせる。
「そんな事ばかりやっているといつか君の死体を撒き餌にすると言われる事になるぞ!」
「あぁ良いねぇ。その時は二十個ぐらいに切り分けて使って欲しいもんだね」
「気味の悪い想像をさせるな!」
ゴン!と再び煉獄のチョップが雅人の脳天にヒットした。
「…あの方確か相生雅人様、でしたよね?」
歩き去っていく煉獄と雅人の背中を見送りながら隠の一人が呟いた。横にいた先輩隠が頷く。
「あぁ、炎柱様とは新人隊士の頃からの付き合いらしいぞ」
「それであんな親しいんですね」
救助に使っていた備品を片付けながら後輩隠はため息をついた。
「見ました?あの顔面。どんだけ整ってんだって話ですよね」
烏の濡れ羽色の髪に切長の目、スッキリ通った鼻筋。細マッチョな体に長い手足。そして耳には小さなピアス。下手すれば女だけでなく男にもモテそうな顔だ。
「あー、見た目は異常に良いよな。だけどさっき見た通りの性格だ。ありゃヤバいぜ」
「他の隊士と志望動機が違うって話、本当なんですか?」
「俺も噂だけだけどな。後腐れなく生き物を殺したいからって話だぞ」
それも銃では駄目らしい。斬れば手応えがあり命のやり取りのあるゾクゾクするような生き方がしたいらしい。先輩の話に腕の鳥肌を擦る。
「人格破綻者じゃ無いですか!何でそんな人が鬼殺隊士してんすか!?」
「そりゃあ強さだけでいけば柱に勝るとも劣らないからだろ。あの人自分の呼吸に名前つけてないけど、独自の呼吸も持ってるしな」
「あ、それ聞いた事あります。周りからは暗闇の呼吸とか呼ばれてるって」
雅人の呼吸は夜の闇に紛れるような静けさで、斬られるまでは鬼も気付かないそうだ。荷物を背負うと先輩はしーっと人差し指を立てた。
「あんまりデカい声で言うなよ。本人その呼ばれ方嫌みたいだからな」
「マジすか!?やっべ!」
周りをキョロキョロしたが、雅人は既に立ち去った後でホッと胸を撫で下ろす。
「ま、なんかあの人のことで困ったら炎柱様に相談するんだな。それが一番間違い無いから」
「了解です!」
元気に返事をしながら、出来ればもう関わることがないようにと祈る後輩隠だった。
(浅い!)
深い森の中、煉獄の一撃は鬼の首を浅く傷つけただけだった。倒れている隊士には見向きもせず脱兎で鬼が逃げていく。
「阿呆がっ!誰が正面切って戦うかよ!!」
後ろを振り返り毒付く鬼は、しかし次の瞬間自分の視界が傾いでいくのに目を疑った。柔らかな声が耳元で囁く。
「そうだよね。正面切って戦うなんて正直者だけだよ」
(俺…斬られ、て………)
ドシャッと重い音を立てて崩れ落ちた鬼が塵と消えて行く。その傍に立つ男に煉獄はゆっくり歩み寄った。
「君がいるなら俺は必要なかったな!雅人!!」
「久しぶりだね杏寿郎。3ヶ月ぶりぐらいかな」
雅人と呼ばれた男は振り返ると煉獄にひらりと手を振った。烏の濡れ羽色の髪がサラリと揺れる。煉獄は自分よりも僅かに高い顔を見上げるとニカッと笑った。
「元気そうで何よりだ!」
「それはこっちの台詞でしょ?炎柱は忙しそうだね」
長さの違う二振りの濃紺の刃を持った日輪刀を血振りすると納刀する。雅人は気だる気な顔をした。
「柱を務めるなんて杏寿郎の気が知れないよ。そんな面倒な事よくやってるね」
「君は相変わらずだな!」
隠から怪我人の報告を聞く為に来た道を引き返す。隠に呼び止められる杏寿郎を他所に雅人は足元にあったものを拾った。
「あっ…あ、それ…っ」
隠の手当てを受けていた隊士が声を震わせる。雅人は拾った腕を手ににっこり笑った。
「ん?君の?これまだいる?」
「…っ!………い、り…ません…」
千切れた腕がいくらあっても繋がることはない。隊士は何とか声を振り絞りそう答えた。雅人が機嫌よく頷く。
「あ、そう。じゃあ鬼寄せの餌がわりに貰ってくね」
ズビシッ!!
「いってぇ!!」
脳天にチョップをかまされて雅人はうずくまった。額に青筋を浮かべた煉獄が腕を取り上げる。それを隠に渡すと煉獄は腰に手を当て雅人を冷たく見下ろした。
「人の気持ちに疎いのは君の悪い癖だ!」
「だからって!杏寿郎の全力手刀とか背縮むよ!!」
雅人は涙目で煉獄を見上げた。煉獄が呆れたようにため息をつくと、手を掴んで立たせる。
「そんな事ばかりやっているといつか君の死体を撒き餌にすると言われる事になるぞ!」
「あぁ良いねぇ。その時は二十個ぐらいに切り分けて使って欲しいもんだね」
「気味の悪い想像をさせるな!」
ゴン!と再び煉獄のチョップが雅人の脳天にヒットした。
「…あの方確か相生雅人様、でしたよね?」
歩き去っていく煉獄と雅人の背中を見送りながら隠の一人が呟いた。横にいた先輩隠が頷く。
「あぁ、炎柱様とは新人隊士の頃からの付き合いらしいぞ」
「それであんな親しいんですね」
救助に使っていた備品を片付けながら後輩隠はため息をついた。
「見ました?あの顔面。どんだけ整ってんだって話ですよね」
烏の濡れ羽色の髪に切長の目、スッキリ通った鼻筋。細マッチョな体に長い手足。そして耳には小さなピアス。下手すれば女だけでなく男にもモテそうな顔だ。
「あー、見た目は異常に良いよな。だけどさっき見た通りの性格だ。ありゃヤバいぜ」
「他の隊士と志望動機が違うって話、本当なんですか?」
「俺も噂だけだけどな。後腐れなく生き物を殺したいからって話だぞ」
それも銃では駄目らしい。斬れば手応えがあり命のやり取りのあるゾクゾクするような生き方がしたいらしい。先輩の話に腕の鳥肌を擦る。
「人格破綻者じゃ無いですか!何でそんな人が鬼殺隊士してんすか!?」
「そりゃあ強さだけでいけば柱に勝るとも劣らないからだろ。あの人自分の呼吸に名前つけてないけど、独自の呼吸も持ってるしな」
「あ、それ聞いた事あります。周りからは暗闇の呼吸とか呼ばれてるって」
雅人の呼吸は夜の闇に紛れるような静けさで、斬られるまでは鬼も気付かないそうだ。荷物を背負うと先輩はしーっと人差し指を立てた。
「あんまりデカい声で言うなよ。本人その呼ばれ方嫌みたいだからな」
「マジすか!?やっべ!」
周りをキョロキョロしたが、雅人は既に立ち去った後でホッと胸を撫で下ろす。
「ま、なんかあの人のことで困ったら炎柱様に相談するんだな。それが一番間違い無いから」
「了解です!」
元気に返事をしながら、出来ればもう関わることがないようにと祈る後輩隠だった。
1/18ページ