~一章~
「精霊様が、私を…」
「ああ。小さな頃からずっと君を見守ってくれてたんだ。勿論これからも」
「……嬉しいです、一人になっちゃったと思ってたから。故郷のことも、信じていて良かった」
ライアスは時間をかけて、今の状況になった理由を説明した。今朝はその為に休みを取ったのだ。
ニーナは瞳を潤ませながら頷いていた。
精霊達が彼女にも見えるといいのに。
俺に出来る事であれば協力を惜しまない…ライアスはそう誓う。
「あの…シーツの時の男性の方、ライアス様だったのですね」
「ん?ああ、あの時は驚かせたな」
「いえ、私も気が付かずにお礼も言わず…実は少し、気になってたんです」
「俺の事?」
「はい。まさか殿下があんな場所にいらっしゃるとは思わないので…服装を見ても騎士様なのかと」
「騎士団と合流するつもりだったからね」
「あの…嬉しかったです。ありがとうございました」
ライアスの頬が、にへ、と緩む。
「ひょっとして、渡り廊下でバケツをひっくり返したのも…」
「あぁ、すまなかった。精霊達に頼んだんだ。ニーナをこっちの屋敷に呼ぶチャンスが欲しかった…辛かったな」
「いいえ、本当に自分でもやってたかもですし」
ニーナはちょっと恥ずかしそうに笑う。
「それと、私の仕事の事…ライアス様にそんな事情があったのも知らずに、失礼なことばかり言ってしまって」
両陛下と兄二人、あと一握りの人間しか知らない、高い魔力の代償。
支障のない生活を送る為、色んな事をやってきたライアスは今、とても幸せだった。
「ニーナ」
ライアスは向かい合って座っていた彼女の隣に移動する。
顔にかかる髪を手でそっと払い、頬を包んだ。
「理由はどうあれ、突然ここに押し込めて、不安を抱いたニーナを無理に汚したんだ、すまなかった」
「……いえ、」
「俺はニーナに癒してもらう変わりに君を護る」
「わ、私、役に立てるのでしょうか。何かと失敗するし…身体の相性とやらは良いのでしょうけど…胸が少し大きめってくらいですけど、身分もこんな差があるし、あ、まあ癒し係ってだけですよね、ライアス様はそのうち、ちゃんとした方を…私、大それた事は考えませんから、」
照れ隠しなのか、不安なのか落ち着きなくペラペラとよく話す。
「雷が落ちたって言ったろう?」
「は、はぁ、大丈夫でしたか?お怪我はなかったのですか?」
「本当に落ちた訳じゃないからね。ニーナに一目惚れしたって事さ、全身で」
包まれた頬が赤く色付いた。
今度はニーナの口も動かず呆けている。
「ニーナの全てが好きなんだ…だから、キスしたい」
ニーナの、一瞬大きく見開かれた瞳が、ゆっくり閉じる。
それが合図の様に、二人の唇が重なった。
唇が、こんなに柔らかいなんて。
ニーナには初めての経験だ。
一度離れた唇がまた重なる。
でも今度は、直ぐに離れようとしない。
ライアスの唇の間から熱い舌が現れて、重なった唇を舐める。
更に割って侵入して来ようとするそれに、ニーナは驚いた。
思わず軽く口を開いたが最後、直ぐに舌がぬるりと入り込んでくる。
「ん……っ」
どうしたらいいのか分からない。ライアスの舌が動き回るのに翻弄される。
終わる様子もなく、身体中が熱くぼぅっとしてきた。
ライアスが誘うように舌に絡ませてくるので、朦朧としながらも対抗するように動かしてみた。
「んっ、んぅ…うぅっ、んむ…ぅ」
苦しいです、と講義しようとライアスの服をぎゅっと握るニーナだが、解放されるどころか、ライアスは片手で胸元の服をずらし、乳房をつかんでくる。
指の間で乳首を挟み揺らされ、ニーナの身体がビクッと反応した。
「んん―っ、ふ、ふぁ…ああっ、んぐっ、」
お互いに、下半身がむずむずしているのが分かる。
キスは続けたまま、ライアスはニーナの身体を持ち上げ、ニーナはライアスの首に腕を回す。
自分でも驚いたが、ニーナは無意識にライアスの膝の上に跨がっていた。
「は、あ、はあっ…ニーナ…っ」
「あ…はあっ、はっ、ああ…あ、あなたを、い…や、しますっ…」
「……っ!」
ニーナの喘ぐような言葉に、ライアスはそのままニーナを抱き抱え、ベッドに急ぎ向かった。