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その日は雨だった。

ヴァディンが目を覚ますと、腕の中には小さな子供が眠っていた。
いつもと違う様子に一瞬思考するも、昨日拾った少年だと言う事を思い出した。

「ダナス・・・だったな。ふむ・・・。身体も暖かいし、顔色もマシになったな。」

ヴァディンはダナスを起こさぬよう慎重にベッドから起き上がり、着替えを始めた。
ちょうど着替えが終わった頃合にドアが叩かれ、返事をすると従者が部屋に入って来た。

「おはようございます。昨夜はよく眠れましたでしょうか?」

ちらりとベッドで眠るダナスを見遣りながら、従者はお湯の入った桶をヴァディンの近くの机へと置いた。
ヴァディンはそのお湯で顔を洗いながら従者の視線を辿って微笑んだ。

「ああ、よく眠っていたぞ?余程疲れていたのだろう。まだ暫く起きぬぞ。」

「左様でございましたか。いえ、どうせ今日は出発出来ません。暫くは寝かせてやりましょう。」

「分かった。では私はこの子の傍に居てやる事にする。爺は近隣の村で何か起こったか調べてくれないか?」

「かしこまりました。」

従者が桶を持って出て行き、ヴァディンはベッドの横の椅子に座り込み、書類を広げ始めた。





1時間は経っただろうか?
ダナスが身動ぎをし、目を開けた。
それに気付いたヴァディンがダナスに近寄って額に手を当てた。
寝惚けていたのか、ダナスがヴァディンに気付いたのは額に手を当てられてからだった。

「な・・・!?」

「おはよう。熱は無いようだな。」

「あ・・・」

前日の事を思い出したのであろう。
ダナスの顔色がみるみる悪くなって行く。

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