季節はずれのひまわり(神尾)
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「九月なのに、暑いねえ……」
「そうだな」
始業式の帰り道。
夏休みも終わったというのにまだ蝉は鳴いているし、強い日差しも相変わらずだ。
街路樹が生えていて本当に助かった。
これが無かったら今頃熱中症で倒れてもおかしくない。
俺はりんが日陰側を歩けるよう、日向と日陰の境界線の上を歩いた。
通りにある一軒家の庭先がふと目に入る。
ここは年中ありとあらゆる種類の花を育てていて、いつも賑やかだ。
しかし夏の厳しさに負けたのか、ひまわりだけは元気をなくして俯いているようだった。
「……あのさ、変なこと聞くんだけど」
「どうした?」
「アキラ君は、自分より背の高い女の子ってどう思う?」
りんからの急な質問に、俺は困った。
いつも『悩みなんてありませ〜ん』と能天気に過ごしているこいつがしおらしく見えたから、余計に。
「どうって……」
「じゃあ背の低い子は?」
「難しい質問だな」
いったいどういう意味なんだ?
真面目に考えてみるが、俺のなかで答えは出ない。
「正直、考えたことねーな」
「そう……」
思ったままに答えると、りんは余計にしおらしくなる。
声だって、いつもとは違って弱々しい。
「じゃあ髪の短い子……とか」
「うん?」
「そばかすのある……子とか」
「あのな」
俯いたりんの顔を覗き込む。
曇った表情を覆うように下がる前髪。
その隙間から、そばかすと不安そうな瞳が揺れていた。
そんな表情、させてたまるか。
りんの前髪を指ですくい上げ、しっかりと目を合わせて言った。
「俺は人の見た目、あんま気にしねーよ」
「背の高さも髪の長さも、そばかすだって関係ない。それより、いつも笑顔でいてくれる子が……好きだな」
りんの髪を指でそっと梳く。
「そんなことで悩んでないで、いつものお前らしく過ごせばいいんだよ」
その一言で、瞳にみるみる光が戻ってくる。
りんは安心したような顔をして、「そうだよね」とにっこり笑った。
ああそうだよ、その笑顔だよ。
俺はお前のその笑顔は何よりも愛おしい、それなのに。
そばかすや身長が欠点になるなんて、誰に言われたんだよ。
この気持ちはどれくらい、りんに伝わっているんだろう。
分からないことをもどかしく感じながらも、俺の気持ちはブレることはない。
たとえ、りんが俺以外の心を求めていたとしても。
「こんなことで悩むのが馬鹿らしくなってきちゃった」
「だーから言ったんだよ」
りんはもうすっかり元気を取り戻したようで、俺をスキップで数歩追い越した。
「ね、アイス食べない?半分こしようよ」
ひまわりが咲いていた、そう思った。
青空に、振り返ったりんの笑顔がくっきりと映えていて、心臓が高鳴る。
「……買い食いか?悪いやつだな」
「へへ、アキラ君も共犯者にしちゃうもんね」
ああ、共犯者だって何だっていいよ。
この笑顔を独り占めできるのなら。
季節はずれのひまわり、何度だって咲かせてみせるから。
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